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ちいさな大発見No.91(2020.6.26)ハンゲショウの秘密?

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 今,水生植物園でドクダミ科のハンゲショウが見頃を迎えています。 地下茎で増え,群生しています!  漢字では,「半夏生」「半化粧」と書きます。  「半夏生」は季節を表す二十四節気を補うものとして,日本で自然発生的に生まれた雑節の中の1つです。もともと二十四節気は中国で作られた暦であり,日本の農業に合わせて日本独自の暦が生まれたのが雑節で,節分や彼岸,土用,八十八夜などであり,半夏生もその1つです。それは夏至から数えて11日目辺り(今年は7月1日頃)に花が咲くところから来ています。  また,「半化粧」は花が咲く頃に,葉の半分が白く色づく様子が化粧をしているように見えることに由来しています。  さて,ハンゲショウの秘密ですが,私は3つ考えました。  ①葉が白くなるのは,決まって花のすぐ近くです。  ②カタシロソウの別名があるように,白くなるのは葉の表だけで,葉の裏は緑色のままです。  ③花が散ってしばらくすると,白くなった葉は緑色に戻ります。 葉緑素の供給が止まる白化現象 花には花弁がない 葉裏は緑色のまま  ①ですが,花の近くの葉が白くなっています。これはドクダミの4枚の苞と同じで,目立たない花を助けるために花弁と同じ役割を果たし,虫を誘っているのです。花のないところで白化しても何の意味もないですからね。 4枚の白い苞で虫を誘引  ②③は葉緑素の供給にあります。白い葉のままでは光合成ができず,生長が阻害されます。ですから,リスクを少しでも減らすための生きる知恵だと思います。  このように,植物は自身の短所を補うためにいろいろな工夫をしているのです。   【解説員K】

ちいさな大発見No.90(2020.6.23)パーフェクトプランツ?

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 針葉樹園花壇では1ヶ月近くにわたって黄色いヘメロカリスが咲き続けていましたが、今は八重咲きの赤い花が咲いています。  ヘメロカリスはユリ科ワスレグサ属の多年草で、日本や中国などに自生するニッコウキスゲやノカンゾウ、ヤブカンゾウ、ナンバンカンゾウ、ユウスゲなどをもとに欧米で品種改良された園芸種を言います。  これらの植物は種間交配が容易で、実に何万種ものヘメロカリスが創り出されているそうです。  ヘメロカリスは,別名をデイ・リリーと言い1日花ですが、次々に咲き続けます。寒さ、暑さに強く、手間いらずでパーフェクトプランツと言われています。  そこで、ヘメロカリスの原種と言われている植物を3種類紹介します。  まず、「ナンバンカンゾウ」です。別名を「トウカンゾウ」と言います。中国原産と思われていましたが、実際には中国に生息しておらず、長崎県の男女群島に自生していることが分かっています。 野草園東で咲いています!  次は「ヤブカンゾウ」です。中国からの帰化植物と言われていますが、実際は中国に自生していないとの説もあります。雄しべや雌しべが花弁状になっており、結実しません。   同じく野草園西で  最後は「ユウスゲ」です。夕方に開花し、朝には閉じてしまいます。レモンイエローの爽やかな花弁が魅力です。  野草園東に一株、大株に育っています。また、バックヤードでもプランターで毎年、育てていると思いますので、まもなく、園内で紹介されるはずです。 野草園東で!  そこで、1つ提案です。秋に球根が出回りますので、開花時期がほぼ同じで、色や姿が異なる2種類のヘメロカリスを植え、来年開花したら、一方の花粉をもう一方の雌しべに人工授粉してみませんか。自分だけのオリジナル(?)ヘメロカリスが誕生するかもしれませんよ。   【解説員K】

俳句小屋の展示を入れ替えました(2020年6月18日)

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先日,俳句小屋の展示作品を入れ替えました。緊急事態宣言の解除後,最初の入れ替えとなりましたが,たくさんの方に作品を投稿していただきました。ありがとうございます。それらの中から,数点ご紹介したいと思います。 まずはこちら。 “らいおんがさくらのしたにねむってる” さのひうみ 臨時休園になる直前の,こどもさんの作品と思われますが,春ののどかな情景が思い浮かぶ俳句ですね。ライオンもサクラも見られてラッキーでしたね!(^o^) (お名前,間違っていたらごめんなさい。) “誰がためのひすいかずらの房々よ” はなこ (たがためのひすいかずらのふさぶさよ) ファンも多い翡翠色の勾玉のようなヒスイカズラの花。閉館中の温室で,お客様からみられることなく咲き続けました。ただ,今年は房が多く,ことのほかキレイに長く咲いてくれたおかげで,臨時休園終了後に,たくさんのお客様にご覧いただくことができました。 ユリズイセンの素敵なイラストもいただきました。 現在,俳句小屋のそばでは,ユリズイセンがいっせいに咲き誇っています。 花弁の内側に,筋状の斑点が入るのが特徴ですが,イラストではその辺りまで細かく描かれていますね! 今回は季語のない作品が多く見受けられました。季語が入ると,よりいっそう俳句らしくなりますよ。ちなみに「ヒスイカズラ」も季語ではないそうですが,当植物園では春に花のピークを迎えているため,季語として掲載しています。 俳句の展示は,当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており,約1か月おきに入れ替えをしています。投句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と,緑の情報館1階のポストで受け付けています。 みなさんのご投句を,おまちしています! ※今回展示している俳句の一覧です。 <俳句係M>

ちいさな大発見No.89(2020.6.6)草と木のちがい?

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 温室の北側におよそ幹回り4m,高さ10mの大木(?)がそびえています。 別名:「ゾウノアシ」  20cm弱の薄緑の花序!  アルゼンチン原産で、ヤマゴボウ科の「メキシコヤマゴボウ」,現地では「オンブー」と呼ばれています。南米の乾燥した草原(パンパ)に生息し,木陰を作り,風よけなどに使われています。  雌雄異株で本園にあるのは雄木です。実は「メキシコヤマゴボウ」は草本,つまり草です。嘘みたいな本当の話です。年輪がほとんどないこと,そして多肉質で水分が多く柔らかいため木材としての価値がないことなどが理由に挙げられます。  そもそも木と草の違いは何でしょう。一般的に木は樹皮の内側に形成層があり,温かい時期に生長し,寒い冬の時期は生長が止まります。その際に年輪ができ,年々大きくなっていきます。一方,草には形成層がないため,ある程度成長すると茎は太くなりません。  余談ですが,東南アジアなどに生息する熱帯地域の樹木は年中,一定のスピードで生長するため,年輪はできないそうです。  同じような植物にバショウ科の「バナナ」がありますが,常緑の多年草で草本です。幹のように見える部分は茎(偽茎)で,それは、柔らかい葉っぱが重なり合ってできています。 バナナの木はまちがい!  逆に草本と思われがちな木本の例を挙げてみたいと思います。  先ず,ハーブ園には欠かせないシソ科のラベンダーです。植えて数年たつと,株元が木質化してくるので,目で確認できます。 ハーブ園で撮影!  それから,ツゲ科のフッキソウ(富貴草)です。名前に草がついていますが,立派な常緑の小低木です。 2月末に撮影したフッキソウ  植物って,不思議です。        【解説員K】

「ツクシ(筑紫)」が付く植物(2020.6.5)

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ピークは過ぎましたが園内のバラ園ではまだまだ多くの種類が楽しめます。バラ園の温室側、つるバラが集まった一画でも、花弁の縁がほんのりピンクに色づいたツクシイバラ【筑紫茨】がまだ咲き続けています。 日本全土に野生しているノイバラの変種ですが、この種は九州南部に野生しているので、和名の頭に九州を意味する「ツクシ」が付いています。熊本県球磨郡錦町では球磨川河川敷に自生地が保護されています。  「筑紫」・・・読み方は「つくし」、「ちくし」の二通り(ふたとおり)あります。この地域を表す言葉は、資料によると九州の古来の総称を指していた場合と福岡の西部と南部(筑前と筑後)を指していた場合があるようですが、植物和名には「九州に生育する〇〇」という前者の意味で付けられることが多いようです。  ということで、今回は園内で見られる「ツクシ〇〇」という和名の植物たちをご紹介します。 4月中~下旬に温室前で開花するツクシカイドウ【筑紫海棠】です。中国原産で、かつて熊本や大分に分布していた野生種は環境省のレッドデータでは絶滅とされていましたが、近年大分県の山間部で野生集団が発見されたとの報告があるようです。 4月下旬に「香りの道」で開花するのがツクシシャクナゲ【筑紫石楠花】です。日本固有種で本州の近畿南部地方~九州に分布しています。福岡県では豊前市犬ヶ岳の自生地が国の天然記念物に指定されています。 芝生広場の池で見ることができるのがツクシオオガヤツリ【筑紫大蚊帳吊】です。本州の一部(茨木、千葉)~九州(福岡、大分)からマレーシア、インドなどの熱帯にも分布していますが、明治39年に福岡城のお堀で初めてその存在が確認されたのでこの和名がつけられています。中央区城内の生育地のものは福岡県の天然記念物に指定されていますが、年々生息地が減少して環境省レッドデータでは絶滅危惧ⅠB類(近い将来に絶滅の危険性が高い)となっています。  「ツクシ(筑紫)」が和名の頭に付く植物たち、園内で見られるものを列挙するといずれも貴重な植物たちですが、「園芸植物大事典」(1994小学館)の目次で調べてみるとツクシアオイからツクシヤマザクラまで全部で22種類が掲載されています。  ちなみに、同様に生育する地方名が付くものとしては、「エゾ(蝦夷;北海道)」が一番多いようです。同事典で調べると84種

ちいさな大発見No.88(2020.6.2)見頃です,花菖蒲!

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 アヤメ科の植物の代表種(?)と言えば,「アヤメ」「カキツバタ」「ハナショブ」です。  アヤメやその近縁種のカンザキアヤメ,イチハツなどは畑で咲きます。一方,カキツバタやキショウブは湿地から浅い水辺で生息します。そして,ハナショウブは湿地から畑で生息する植物です。  さて,上述した3種のアヤメ科の最後を飾る「ハナショウブ」が一気に咲き始めました。特徴として,いちばん大きな花弁(外花被)に「目」と呼ばれる黄色い斑紋が入ります。  また,花形では,3枚の外花被が目だつ三英咲きと内花被が生長し6枚の花弁に見える六英咲き,蕊が花弁化した八重咲きなどがあります。  本園では,現状では半分以上が3英咲きのようです。 見事な3英咲き  次は6英咲きを紹介します。 内花被も垂れています!  ところで,芝生広場の池に1株だけですが,ハナショウブらしきものを見つけました。調べてみると,白系のハナショウブとキショウブを交配して作った「キハナショウブ‘愛知の輝’」と言う品種です。もともと黄色系のハナショウブがなかったことから,およそ70年前に愛知県出身の方が作出されたそうです。 淡い黄色が映えます! 白っぽく見える方は開花後2日目!  そして,「キショウブ」です。しかし,環境省より 生態系被害防止外来種 に指定されています。むやみに移植することは避けねばなりません。 花はきれいですけどね・・・       【解説員K】