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2月, 2022の投稿を表示しています

ちいさな大発見!? No.156(2022.3.1)雄しべがうごく?

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  玄関やマンションのエントランス脇によく植栽されるメギ科のヒイラギナンテンを紹介します。  学名はMahonia japonica ですが、日本原産ではなく、台湾原産の常緑性低木です。  ギザギザの鋸歯がある葉がヒイラギに、果実がナンテンに似ているところから名前が付いたとか。葉には硬いトゲがあり触れると痛いので、魔除けや縁起木として、今でも玄関脇に植えられているのを見ます。  硬くて厚みがある葉にトゲ  ところで、ヒイラギナンテンにはおもしろい秘密があります。 次の写真を見てください。 雄しべは花弁側に開いている!  花径1cmほどの花弁は6枚ですが、黄色いガクが9枚あり、それも花弁に見えるため豪華な八重咲きに見えます。真ん中にあるのは雌しべの柱頭です。その周りに6本の雄しべが外側に開いています。  ところが、次の写真ではその雄しべが雌しべを取り囲むように中心に移動しています。 雌しべを取り囲む雄しべ  これは、雌しべや雄しべをピンセットで刺激した結果です。いきなりきます。つまり、昆虫が蜜を求めて花筒に入ると、受粉しやすくするための行動なのです。このような動きは振動傾性運動と言い、他にもアザミやマツバボタン、ヤグルマギクなどでも見ることができます。  一般に動く植物と言うと、食虫植物やオジギソウなどが有名ですが、ヒイラギナンテンもおもしろいですよ。機会があれば是非やってみてください。  植物って、すごいですね。 【解説員K】

サボテンのようでサボテンでない・・(2022.2.25)

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 2月初め温室のサボテン・多肉植物室に育つ柱状の植物に黄色い花が咲きました。2月観察会は温室植物中心なので、早速観察対象に取り上げることになり、予習のために図鑑類を調べていくと、あれあれ・・・サボテン科のところには載っていません。  このように柱状に立ち上がるのは、てっきりサボテン科の仲間かと思って調べたのですが、サボテンのようでサボテンでない・・それはなにかと尋ねたら、なんとこの植物はランガク【巒岳】という和名のトウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物でした。  ユーフォルビア属といえば、代表的なトウダイグサ【燈台草】をはじめ、花弁がなく杯状(カップ形)の変わった花序(杯状花序といいます)をつけるのが特徴ですよね。  それでは、このランガクはどのような花をつけているのか、アップ写真を撮ってみました。  間違いなく、花弁(花びら)はなくカップ形(総苞[そうほう]が合着したもの)の中に雄花と雌花があるというユーフォルビア属の特徴を備えています。  ちなみに和名に使われている「巒」という難しい字は「山並み」という意味だそうですが、波状に湾曲している稜線を山の連なりに例えたのではないでしょうか。  あらためてサボテン・多肉植物室内をチェックしてみると、他にもサボテンに似たユーフォルビア属の多肉植物があります。この大きなトゲをつけているのはキリンカン【麒麟冠】です。 花のアップ 杯状花序です  ところで、このキリンカンはトゲまであって、一見サボテン科と同じようにみえますが、違い(特徴)はどうなっているのでしょうか。  サボテン科の葉が変化したとされるトゲの根元には、刺座と呼ばれる、ふつう毛が密生した座布団のようなものがあり、ユーフォルビア属にはないのがわかりやすい違いです。 サボテン科キンシャチ【金鯱】 キンシャチの刺座のアップ写真  逆にユーフォルビア属の特徴としては、前述のとおり杯状花序をつけることと、葉や幹を傷つけるとネバネバした乳液を出すことがあげられます。ちなみにこの乳液は有毒物質を含んでおり、皮膚につくとかぶれることがあります。  なお、サボテン・多肉植物室にはこのようなユーフォルビア属の仲間も育っています。 テッカキリンカク【綴化麒麟閣】 ユーフォルビア・ホリダ  そういえばラン室で見られるポインセチアもユーフォルビア属ですね。  ユーフォルビア属は、世界の熱

体験講座「かずら工芸」午前・午後の部を実施しました。

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開催日 令和4年2月19日 土曜日     午前10時から12時 午後13時30分から15時30分 講  師 どんたくかずら工芸会の皆様 内 容 クズなどのつるを編んでオリジナルの籠をつくる講座です。去年はコロナの影響で中止だったため今回たくさんのご応募をいただきました。ほとんどの方が初めてでしたが、どんたくかずら工芸会の皆様がマンツーマンでご指導いただき手際よくつるを編んでおられました。どの籠も個性が出ててたくさんの素敵な作品ができました。 参加者の感想 初めてかごを編みましたが丁寧にご指導くださり可愛い作品が出来ました。 自然素材ならではの曲線や節の美しいあじのあるかごが出来てみんな素敵でした。 山の中に入ったりしてかずらを手に入れる機会が少ないので貴重な材料も含めてありがたい機会でした。大変面白く楽しかったです。  (運営係 A)  

ちいさな大発見!? No.155(2022.2.22)春はもうすぐそこまで Part3

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 前号に引き続き、厳しい冬の寒さの中、着々と春に向けて開花の準備をしている植物たちを紹介します。   まず、大きな葉の株元でひっそりと開花の準備をしているユリ科のハランです。地面の上で咲くので、ふだんは落ち葉に埋もれてなかなか気づきません。  世にも奇妙な花と…?   これが花ですよ!(昨年撮影)  レンブクソウ科のゴモジュです。葉をもむと、ゴマのような匂いがします。花筒が長いのが特徴で、花もとてもきれいでよい香りがします。  沖縄周辺や台湾が原産  クスノキ科のアオモジです。雌雄異株で、雄花序のほうが雌花序より大きい特徴があります。芳香があることから高級爪楊枝の材料とされます。  開花すると、とても華やか!  アオモジとは属が違いますが、クロモジと同属のシロモジです。シロモジは名前の通り、樹皮や枝がやや白っぽい感じで、クロモジは黒っぽく黒い斑点が入ります。  こちらも雌雄異株!  ミカン科のミヤマシキミです。葉をちぎると、ミカンの香りがします。しかし、茎や葉、果実は有毒です。また、こちらも雌雄異株で、花は雄木の方が圧倒的に大きいです。  ちなみに、写真上は昨年、秋に結実した赤い実とこれから咲く蕾を一緒に見ることができます。  蕾と果実が同居する雌木   ピラミッド状の蕾が目立つ雄木  最後はジンチョウゲ科のミツマタです。花は球状に集まる集合花で、黄色い花を下向きに咲かせて甘い芳香を放ちます。  3つの枝に分かれるからミツマタ  どんな花が咲くか、是非、植物園でかわいい花たちを見つけてください。 【解説員K】 

「植物観察会【温室植物】」を実施しました。

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 開催日 令和4年2月12日 土曜日 13時30分から15時30分  講  師 緑の解説員 渡 茂樹 ・ 加来 孝 内 容 今回の植物観察会のテーマが温室植物ということで、座学にて福岡市植物園の温室の歴史や造り、世界の代表的な温室を学んだ後、園内に出て見てまわりました。 カエンカズラ、ホウサイラン、タッカ・シャントリエリ、コーヒーノキ、ランガク等、温室で育つ植物は日常では見られないものが多いので受講者の方々に大好評でした。 次回の旬の植物ガイド(3月)は3月12日です。 参加者の感想 日頃気づかないことに気づけて可愛い花も見れて幸せです。ありがとうございました。 初めて知る花ばかりで面白かった。15種類の植物紹介がちょうどいい量で最後まで楽しめた。温室の中に興味があったのでよかったです。ランがきれいでした。 (運営係 A)     

第26回福岡市植物園 植物画コンクールの入賞作品決定!

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 厳正な審査の結果、第26回福岡市植物園植物画コンクールの入賞作品が決定しました。  当コンクールは、今年で26回目となり4半世紀以上に及ぶ歴史の重みがあるコンクールに成長しており、今回は一般(23点)・中高(57点)併せて80点の作品をお寄せいただきました。ご応募いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。  福岡市の重要プロジェクトである一人一花運動の輪は確実に拡がっており、植物園はその拠点として様々な取組みにチャレンジしております。また、来年度はFukuoka Art NEXTの展開など、市全体で植物×アートの機運も高めていくことから、当コンクールも注目されることが予想されます。  講評に入る前に、植物画とは、植物の形や色が正確に描かれていて、美しく生き生きとした芸術性のある絵であり、特に、花や葉の大きさや形、つき方などを注意深く観察し、特徴を正確に表現したものであることが大切です。  植物の姿を正確に表現し残すという点で写真は優れていますが、写真と植物画の違うところは、写真では目の前にある瞬間を切り取ることに対して、植物画では「花」や「蕾」、「果実」、「根」など、同時に見ることが出来ない季節ごとの変容を一枚の絵の中で表現したり、植物の内部や角度を変えて一部だけを切り取って表現できたりしますので、この植物画ならではの良さが出ている作品であるかが評価のポイントとなりました。また、植物画の基本として、植物に対して左側より光が当たっており、植物の色や輪郭、陰影などが美しく描写されているかも評価のポイントとなりました。  では、入賞作品を講評を添えてご紹介します。 【一般の部】  上位4点と優秀賞・佳作の6点との評価の差は小さく、難しい審査でした。  福岡市長賞   前田 収一 様 「マリアアザミ」   複雑に錯綜した葉の形状を行き届いた配置で描いた、大変見応えのある作品です。蕾から果実までの変化も過不足なく盛り込まれています。    西日本新聞社賞   野口 亜希子 様「ルピナス」  花序と葉の見せ方が優れており、部分図・解剖図の選び方も「つぼ」を心得ていると感じました。   (公財)福岡市緑のまちづくり協会賞   矢口 里子 様「ハマダイコン」  左下の「大根」(肥大した胚軸と根)が眼を惹きますが、花・葉・果実も極めて正確に描かれています。  福岡市教育委員会賞   松

ちいさな大発見!? No.154(2022.2.19)春はもうすぐそこまで Part2

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  厳しい冬の寒さの中、着々と春に向けて開花の準備をしている植物を紹介します。前号は開花したばかりの植物でしたが、今号ではもう間もなく開花する植物です。  先ず、中国、台湾原産でメギ科のヒイラギナンテン(柊南天)です。可憐な黄色い花を咲かせますが、葉に棘があることから邪鬼の侵入を防ぐ樹木と言われています。  黄色い9枚のガクも花弁に見える!  次は常緑低木でマンサク科のロドレイアです。シャクナゲの花に似ていることから、シャクナゲモドキの別名があります。濃いピンクの花序を下向きに咲かせます。  中国原産です!  お馴染みのミモザですが、ミモザはオジギソウのことです。正式名は、オーストラリア原産でマメ科のギンヨウアカシアです。園内にはミモサアカシアもあります。  黄色いボンボンが可愛い!  スイカズラ科のニワトコです。日本を中心に東アジアに自生しています。和名の接骨木は枝や幹を煎じたものを、骨折の治療に湿布として使ったところからきています。  秋には赤い実が!  ジャカランダを植えている花木園Cの斜面には、たくさんのツクシが顔を出していました。子どものころ、母と一緒にはかまとりをしたことを思い出します。  昔は早春の山菜!  中国原産のジンチョウゲ(沈丁花)です。雌雄異株で、日本ではほとんどが雄木のため、秋に果実を見ることは稀です。ちなみに、花弁は退化してなく、花弁に見える部分はガクです。  三大香木の一つ  次号に続きます。 【解説員K】

“梅探る枝にまち針打つごとし” 俳句小屋の展示作品を入れ替えました(2022.2.18 )

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2月7日に俳句小屋の展示を入れ替えました。今回はウメを詠まれた作品が多くありましたので、ご紹介します。 "梅探る枝にまち針打つごとし" みよこ 春を告げるべく体を丸めて開花の準備をしているウメのつぼみは、まさに枝一杯に打たれたまち針のようですね!梅園では、紅色や緑色がかったつぼみが枝を彩っています。また、サクラのつぼみと比べても、ウメのつぼみはまんまるですね。 つづいて     "探梅のたった一輪日の淡し" 成子 "梅の香をとどける風の清らかさ" 風昇 "探梅行気楽についてきたものの" 典子 ウメを詠もうと気楽に出かけたものの、、、俳句の難しさ!ですね。俳句小屋のすぐ横の梅園には13本のウメが植栽されており、少しずつ開花がすすんでいます。小屋の裏手にはフクジュソウ、小屋からツバキ園の方に上がるとカワヅザクラなど、春を待っていた花々が、順々に開花しています。 (2月17日の梅園の様子) 最後にお子さまの俳句と思われる作品を4点ご紹介します。     "お正月おもちにおせちおいしいな" 内田りあ "動物園冬の動物かわいいな" 米倉弘人 "とらもようそうがんきょうではっきりと" めい "おとしだまたくさんもらいうれしいな" しおり お子さんの素直な句もいいですね。楽しいお正月だったのでしょうね。 暖かくなったら、花いっぱいの季節にまた来てくださいね! 俳句の展示は、当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており、約1か月おきに入れ替えています。俳句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と、緑の情報館1階のポストで受け付けています。初心者の方も大歓迎です。みなさんのご投句を、お待ちしています! ※今回展示している俳句の一覧です。  <俳句係 M>