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幹に果実がつく不思議植物(2021.5.28)

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   大温室に、幹に直接果実がつく不思議植物が生長しています。南アメリカ原産で常緑性高木のジャボチカバ(フトモモ科)です。  白い花が幹から直接咲き、果実がつくという不思議な形態をしており幹生果(かんせいか)と呼ばれます。(花は幹生花とも呼ばれる)  直径2~3cmほどの大きさの濃紫色の実はブドウの実に似ていますが、乳白色の果肉の味も似ており、ブラジルなどでは好んで生食されているそうです。  ところでジャボチカバは、なぜ幹生果という独特な形態の果実をつけるのでしょうか?  自分で動くことができない植物は、子孫を増やすための種子を広げる方法の一つとして、動物に果実(種子)を食べられることにより分布を広げます。(被食散布といいます。)  この方法を多く担っているのは鳥類ですが、木々が繁茂して枝葉が密生する熱帯雨林では鳥類が自由に飛び回ることができないので、種子運搬(=被食)を地上で行動する哺乳類に依存するようになりました。そのため、枝先ではなく哺乳類が食べやすい幹に直接果実をつけるようになったということです。  ちなみに世界最大の果物といわれるパラミツ(ジャックフルーツ)も幹生果です。  この写真は平成27(2015)年に大温室で結実したものですが、これだけの大きさは丈夫な幹でないと支えられないことがよくわかります。  さらに園内には、屋外でびっしりと鈴なりになっている幹生果もあります。展望台の階段脇のアコウ(クワ科)です。この時期、まだ若い淡緑色の果実が幹や枝にびっしりついています。  アコウはもっぱら鳥類に食べられて種子が散布されるので、鳥類が飛び回る木の上部までびっしりです。イチジクと同属で大きさ的には鳥類が食べるのに適しているようで、園内のあちこちに種子が広がり、中にはこんな場所で生長しているものもあります。  ところで現在大温室で実をつけているジャボチカバは、大きく生長して果実を多くつけていた先代が数年前に枯損したために植え替えた後継樹で、やっと昨年ぐらいから結実するようになってきたところです。 枯損前の着果状況  現在の幼木が、あと数年もしたら先代のように生長して、再びびっしりと鈴なりの果実をつける姿を見せてくれるのではないかと期待しています。                                                          

ちいさな大発見No.130(2021.5.27)名前知っていますか?Part.3

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  前号(NO.129)からの続きです。名前はわかりますか? NO.1 ピンクダブルデライト   NO.1-1 ココナッツライム  キク科の植物で花の中央に見える頭状花は盛り上がり、花弁に見える舌状花はやや下向きに咲く傾向があります。北米原産のハーブとして、古くから北米の先住民族に用いられていたことから「インディアンのハーブ」と呼ばれています。 NO.2  ヨーロッパ原産のシナノキ科の落葉高木で、花は蜂蜜の蜜源として重宝されています。シューベルトの歌曲集「冬の旅」の5曲目におさめられている「菩提樹」は、本種のことです。ちなみに、お釈迦様ゆかりのインドボダイジュはクワ科で本種とは異なります。 NO.3 NO.3-1(5月27日撮影)  アヤメ科の植物でブラジル原産です。朝咲いて夕方萎む一日花ですが、開花日数は、年間で数日しか咲きません。と言うのも、他の植物のようにポツポツとリレー的な開花の仕方をしません。1回目は5月25日に一斉に開花しましたが、翌日は花は皆無でした。NO.3-1は2番花として咲く蕾です。あと1~2回、月末頃に咲くと思います。 NO.4  フトモモ科の常緑低木で、パラグアイやブラジルなどの中南米が原産です。花はフトモモ科らしく、たくさんの雄蕊に象徴されるように南国特有のエキゾチックな姿をしています。果物として食用に栽培される他、剪定にも強いため庭木や生垣用としてもつかわれています。 NO.5 木全体が白い  スイカズラ科ガマズミ属の常緑広葉樹です。夏の終わり頃、実が赤く熟した様子から名前がついています。葉や枝に水分が多く油分が少ないことから防火樹として使われたそうです。   NO.6  シソ科の多年草でイランやトルコなどの西アジア原産です。白い毛に覆われた肉厚の葉は香りもよく、シルバーリーフとしても人気があります。何より名前の由来となった‘子羊の耳’のようにやさしい肌触りです。花は唇形花でピンク色をしています。   NO.7  ナデシコ科の植物ですが、原産地がはっきりしていません。長野県の松本地方説、阿蘇説、中国説と諸説あるようです。花は5弁ですが、花弁の先が割れているので、10弁のように見えます。 ―回答― 1 エキナセア  2 セイヨウシナノキ(西洋菩提樹)  3 アメリカシャガ  4 フェイジョア  5 サンゴジュ  6 ラムズイヤー  7 マツ

ちいさな大発見No.129(2021.5.23)名前知ってますか?Part.2

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 前号(No.128)からの続きです。  モクレン科で白いハスの花を思わせます。朝鮮半島や中国原産の植物で、日本に自生する種より一回り大きいようです。また、雄しべの色がピンク色の日本原産種に比べ、本種は濃い紅色です。  No.1  日本に自生する種は国の天然記念物に指定され、うつむきに咲くその姿は清楚で気品あふれることから‘森の貴婦人’と称されます。  次はユリ科チゴユリ属の多年草で、別名を茶花宝鐸草(チャバナホウチャクソウ)と言います。原産地は中国、インド、マレーシアなどです。葉も茎も竹によく似ています。  No.2 No.2-1 茎は竹そっくり 同じ仲間のホウチャクソウ(宝鐸草)  紫陽花の仲間で、茎が中空になっているところから名前が付いています。  No.3  旧暦の4月(卯月)に咲くことからウノハナ(卯の花)とも呼ばれています。  水生植物園ではご覧のように満開の時期を迎えようとしています。江戸時代を中心に品種改良が進んだ古典園芸植物で、現在は数千種類もの品種があると言われています。  No.4   No.4-1 黄花系  本種には黄色系の花がなかったため、外来種のキショウブと交配させて作り出されました。    茎には硬い棘がびっしりと生えるつる性のタデ科植物で、三角の葉が特徴です。日本を含む東アジアに自生しています。  No.5  花はミゾソバに似ていますが、名前はすごく陰湿な名前(?)が付いています。  最後はギリシャの国花で古代ギリシャの建築物にはこの植物の葉をイメージしたものが多く存在します。  No.6 No.6-1  葉に深い切れ込みが入ったキツネノマゴ科ハアザミ属の、大型の多年草です。花は上部に赤紫色の萼、下部に刺の生えた苞があり、その間から白っぽい花びらが出ています。 ―回答― 1 オオバオオヤマレンゲ  2 トウチクラン  3 ウツギ(空木) 4 ハナショウブ  キハナショウブ(愛知の輝) 5 ママコノシリヌグイ 6 アカンサス 【解説員K】

5月のドングリの花(2021.5.22)

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  このブログで4月初めから次々に咲くドングリの花を紹介してきましたが、5月に入ってもまだまだ咲く種類があります。  トップはマテバシイ【馬刀葉椎】の開花の様子です。新枝の先に尾状の花序を上向きに張り出して花を咲かせます。4月から紹介してきたドングリの花の多くは、尾状花序が垂れ下がって風が当たると花序がゆれて花粉が放出されるという風媒花でした。ところが、このマテバシイは昆虫たちに花粉を運んでもらう虫媒花。花序は上を向き、そして全体が薄い黄色で目立つとともにムッとする匂いも放って昆虫たちに強く存在をアピールしています。  雌雄同株で、雄花の花序は下部で斜め上向きに張り出し(雄しべが見えます)、雌花の花序は新枝の先に直立しています。  ドングリは2年成で、春に開花受粉後、年を越して翌年の秋に成熟します。今咲いている花の近くに、去年の春受粉して冬を越したドングリの赤ちゃんが育っています。  ちなみに、このドングリの赤ちゃんは6月終り頃に包まれている殻斗(かくと)から顔を出し、夏場に大きく成長して秋の成熟を迎えます。  これはクリ【栗】の開花の様子です。マテバシイと同じく虫媒花です。雨模様で湿度が高い時などには「甘く青臭いような香り」と形容される強い匂いを放って昆虫たちをおびき寄せます。  雄花のアップ写真です。雄しべが長く突き出ているのが確認できます。  クリは1年成で、この時期受粉した果実は秋には熟します。  ドングリの花を時期を追って見てくると、4月初め頃のドングリは風媒花が多く、5月頃になると虫媒花が多くなるというのは、気温が高くなるにつれて動きが活発になる昆虫たちに花粉を運んでもらうという工夫の現れなのでしょうか。ちなみに9~10月に開花するブナ科の中では変わり種のシリブカガシ【尻深樫】は、まだまだ気温が高く昆虫の活動が活発な時期ですので、当然虫媒花です。  風媒花と虫媒花、1年成と2年成などいろいろな生活パターンがあるドングリたち。秋に大きく成熟するのがたのしみです。                (解説員)

ちいさな大発見No.128(2021.5.21)さぁ、名前知ってますか?

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 クイズ形式で植物の写真とその説明を書きますので、植物名を考えて下さい。回答は最後にまとめて紹介します。  アルゼンチンなどの中南米原産でノウゼンカズラ科の植物です。南半球では青い桜と言われています。 No.1  写真は、温室で養生していた鉢植えです。  昨年は6月上旬頃、温室前では高木になるミモシフォリア種が、花木園Cの斜面では矮性種が青紫のきれいな花を咲かせていました。  ですから、当然、今の時季は花芽が見えてないといけないのですが、葉ばかり繁って花芽が見えません。どうやら1、2月の寒さで花芽が枯れてしまったようです。ミモシフォリア種の方は高木のため確認できていませんが、残念です。  一昨年、台風で先端は折れてしまいましたが、それでも高さ10m弱、株周りは、2.5m近くあります。別名は「ゾウノアシ」「オンブー」と言います。 No.2 今年は目の前で花が・・・  アルゼンチン原産でヤマゴボウ科の草本植物です。「エッー、草ですか?」と聞こえてきそうですが・・・、詳細はブログ内検索で植物名を打ち込むと、「ちいさな大発見No.89木と草のちがい」に書いていますのご参照ください。  暗くなりがちな日陰の庭(シェードガーデン)を明るくしてくれる代表的存在で、日本を含む東アジア原産でユリ科の植物です。  No.3 純白の花が美しい  葉の大きさや草丈だけでも30cmから150cmと様々あり、斑入りや園芸種など、多くの種類があります。  18世紀の英国の航海家、クック船長がオーストラリアに着いたとき、現地のアボリジニの人々がこの木の葉をお茶として飲んでいるのを見て命名したそうです。  No.4 羽毛状の花  フトモモ科で葉をもむと、とっても良い香りがします。葉からはエッセンシャルオイルが採れ、メディカルハーブとして大変重宝されているそうです。  アルゼンチンなど南アメリカ原産のナス科の植物で、青と白の花が目をひき、近くを通るととても良い香りがします。   No.5 散った花  開花時は紫ですが、咲き進むにつれ徐々に白くなり、そのまま散っていきます。  中国原産で、13世紀に日宋貿易の起点となった博多に持ち込まれたことから名がついたそうです。 No.6 開花間もない様子   開花したときは写真のように全体が黄色がかっていますが、数時間後には白くなります。昨年は園内3ヶ所で地植えし

雨にはやっぱり・・アジサイの仲間(2021.5.16)

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  昨日15日、気象庁から九州北部地方の梅雨入りが発表されました。報道によると平年より20日早く、統計開始以降2番目の早さということです。昨日の夕刊にカラー写真が掲載されていましたが、雨の季節に映える花といえばやっぱりアジサイですね。  ということで、当園内のアジサイの仲間の状況をご紹介します。トップの写真は園南側の花木園で手まりの形で咲き始めたアジサイ【紫陽花】(いわゆるホンアジサイと呼ばれる種類)です。まだ数が少ないですが、あと1週間ぐらいで全体が見ごろになるでしょう。  いち早く見ごろを迎えたのは、ガクアジサイをやや小ぶりにしたようなヤマアジサイ【山紫陽花】です。別名サワアジサイとも呼ばれ、低山の湿った林内に見られる種類です。  金属製の棚につるを伸ばして咲いているのはイワガラミ【岩絡み】です。茎から気根を出して、その名のとおり岩場などをはい登るタイプです。  ハーブ園に咲いているのは、4月の花祭りで親しまれているアマチャ【甘茶】です。ヤマアジサイのうち、葉に甘み成分を含む変種です。  これから本格的な梅雨を迎えてガクアジサイや西洋アジサイ(いわゆるハイドランジア)などの様々な園芸種も続々と咲いていきます。  緊急事態宣言による臨時休園の状況下ですが、植物たちはキチンと季節の変化を感じて花を咲かせています。直接見ていただけないのは残念ですが、せめてブログで紹介していきたいと思います。                                   (解説員)

“遠足は仲を深める小さな旅”俳句小屋の展示作品を入れ替えました(2021.5.15)

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先月末に俳句小屋の展示作品を入れ替えましたが、5月12日から31日までの期間、臨時休園となってしまいました。せっかくの作品をあまりご覧いただけないのは残念ですので、今回の展示は6月下旬まで継続させていただくことになりました。また、5月に投句していただいた作品は、次回の作品と一緒に選句いたします。 今回も展示させていただいた作品の中から、数点ご紹介します。 まずは遠足で詠まれた、こちらの作品。    “遠足は仲を深める小さな旅” たつや 希 “遠足ではぐれて探す青の花” 天草 4月には動植物園にも、何校かの生徒さんが遠足にこられました。遠足で1句残すというのも、粋ですよね!動物や植物に囲まれた中での活動で、いろいろな感想を持たれたと思いますが、思い出や馴染みのある場所として、またいつの日か来園してくださると幸いです。 こちらは動物園のカバを詠んだ作品。 “鼻先に花びらのせて眠るカバ” とし 実際にご覧になった情景でしょうか。大きなカバの鼻にペタリとついた、小さな花びら。大きさの対比がおもしろく、またのんびりした様子が伝わってきて、癒されますね^^。 最後にこちらの作品。 “歯の抜けし五歳児の如チューリップ” てつお 「咲いた~咲いた~」、思わず口ずさんでしまうチューリップの花。子どもスケッチ大会の題材としても、多くのお子さんが絵具やクレヨンで描いてくださいました。そんなポピュラーなチューリップですが、そういえば特に花弁やガクがめくれている時の様子は、生え変わる最中の子どもの歯のようでもありますね。かわいらしく、どこかほっこりする作品ですね^^。 俳句の展示は、当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており、約1か月おきに入れ替えています。開園中、投句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と、緑の情報館1階のポストで受けつけています。  ※今回展示している俳句の一覧です。 <俳句係 M>