5月のドングリの花(2021.5.22)


  このブログで4月初めから次々に咲くドングリの花を紹介してきましたが、5月に入ってもまだまだ咲く種類があります。

 トップはマテバシイ【馬刀葉椎】の開花の様子です。新枝の先に尾状の花序を上向きに張り出して花を咲かせます。4月から紹介してきたドングリの花の多くは、尾状花序が垂れ下がって風が当たると花序がゆれて花粉が放出されるという風媒花でした。ところが、このマテバシイは昆虫たちに花粉を運んでもらう虫媒花。花序は上を向き、そして全体が薄い黄色で目立つとともにムッとする匂いも放って昆虫たちに強く存在をアピールしています。


 雌雄同株で、雄花の花序は下部で斜め上向きに張り出し(雄しべが見えます)、雌花の花序は新枝の先に直立しています。


 ドングリは2年成で、春に開花受粉後、年を越して翌年の秋に成熟します。今咲いている花の近くに、去年の春受粉して冬を越したドングリの赤ちゃんが育っています。

 ちなみに、このドングリの赤ちゃんは6月終り頃に包まれている殻斗(かくと)から顔を出し、夏場に大きく成長して秋の成熟を迎えます。

 これはクリ【栗】の開花の様子です。マテバシイと同じく虫媒花です。雨模様で湿度が高い時などには「甘く青臭いような香り」と形容される強い匂いを放って昆虫たちをおびき寄せます。

 雄花のアップ写真です。雄しべが長く突き出ているのが確認できます。
 クリは1年成で、この時期受粉した果実は秋には熟します。

 ドングリの花を時期を追って見てくると、4月初め頃のドングリは風媒花が多く、5月頃になると虫媒花が多くなるというのは、気温が高くなるにつれて動きが活発になる昆虫たちに花粉を運んでもらうという工夫の現れなのでしょうか。ちなみに9~10月に開花するブナ科の中では変わり種のシリブカガシ【尻深樫】は、まだまだ気温が高く昆虫の活動が活発な時期ですので、当然虫媒花です。

 風媒花と虫媒花、1年成と2年成などいろいろな生活パターンがあるドングリたち。秋に大きく成熟するのがたのしみです。                (解説員)

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