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11月, 2020の投稿を表示しています

ピンク色のバナナ結実!(2020.11.28)

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  大温室で鶏卵より少し小ぶりな大きさのピンク色の果物が実っています。今年初めて温室に導 入したインド原産のアケビバナナ(バショウ科)の実です。10月下旬ごろから花が咲き始めてこの ように結実しました。和名は、実が熟して皮が剥ける様子がアケビの実に似ていることから名付 けられており、別名ピンクバナナ、また種小名からベルチナバナナとも呼ばれているようです。                      11月初めの開花時の写真です。筆先のように尖っているのは苞葉で、花はその基部について おり苞葉がめくれて次々に花が現れていきます。下の部分は、めくれた苞葉が脱落して上向きに ついた子房(実になるところ)が随分ふくらんでいる様子がわかります。  ところで、大温室で見られる園芸種のバナナの花の咲き方をご覧になったことはありますか?                   これは5年前に開花した時の写真ですが、尖った苞葉はアケビバナナのように上向きではなく、 下向きに伸びていきながら花を咲かせます。当然、実は下向きにつきます。    なぜ、花の咲き方(=実のつき方)が上向きと下向きに違っているのでしょう? 園芸種バナナは大きい実を多数つけるので、その重さを支えるためには下向きのほうが合理 的ということでしょうか。  ちなみに温室前の露地に育っている同じバショウ科の仲間のチユウキンレン【地湧金蓮】の花 の写真です(昨年5月撮影)。アケビバナナと同じく苞葉は上向きに尖っています。    初めて温室で大きくなったアケビバナナ、成熟していくのが楽しみです。皆さんもどうぞご注目く ださい。                                                      (解説員) 

ちいさな大発見No.108(2020.11.23)きれいな実には〇〇がある?

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 野草園では,パステル調の様々な色合いをした小さな実がついた,つる性の植物がみられます。 11月17日撮影  ブドウ科ノブドウ属のノブドウです。ちょっとややこしいのですが,ブドウ属のヤマブドウはとても美味で食べられますが,ノブドウの方は食べられません。もちろん,毒性はありませんが,それ以上に食べられない理由があるのです。  さて,ノブドウの実ですが,花後はすべて緑色の果実ができます。 6月に撮影したキレハノブドウの果実  問題はその後の色の変化です。定点カメラでも設置して観察できれば確実なのでしょうが,先ずはいろいろな図鑑で調べてみました。 ①白,紫,青に変わる。(APG牧野植物図鑑、原色牧野植物大図鑑) ②緑白色から帯紫色,碧色に変わる。(小学館 園芸植物大辞典) ③はじめ桃紫色で,やがて鮮青色になる。(A-Z園芸植物百科事典) ④碧色または紫色で後には白色に変わる。(誠文堂新光社 最新園芸大辞典)  結論から言うと,青っぽい果実が白く変化していることを確認しましたので,①や②よりも④の情報がいちばん合致する結論に至りました。 11月22日撮影  それから,花序の中で,少しだけ大きくなった果実が確認できるかと思いますが,これは虫が果実の中で卵を産んでいる可能性があります。いわゆる虫えい果なのです。本当はカッターで切って中を確認したいところですが,・・・やめておきます。結局,いろいろな色に変化するのは虫が寄生することに起因するようで,白くなった果実には寄生していないとの記述が多かったようです。 寄生している可能性のある紫の果実  名だたる大辞典でもこれだけ記述にずれがあるということに驚かされます。葉は正にブドウの葉にそっくりで,見た感じもカラフルでとてもきれいなのですが,こんなおどろおどろしい理由があったのです。  ちなみに,葉や根は漢方の生薬として有名で、日本でも民間伝承の薬草として、多くの効能が知られているそうです。  ついでに,マンサク科のイスノキは虫こぶ(虫えい)ができやすい樹木として有名です。寄生するのはアブラムシ類で,植物体の一部が異常に発育をし、写真のようなこぶ状になるそうです。不思議ですね。 別名をヒョンノキ 【解説員K】

“ハリウッド女優を名にし秋のばら”俳句小屋の展示作品を入れ替えました(2020.11.12)

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先日、俳句小屋の展示作品を入れ替えました。10月に投稿していただいた作品を回収したところ、結構な厚みがあり、数えてみるとその数100作品以上!たくさんのご投句ありがとうございました。全てを展示することはできず申し訳ないのですが、展示作品の中から数点ご紹介します。 まずはこちら。   “ハリウッド女優を名にし秋のばら” 登志 有名人の名前を冠したバラは、馴染みがあり、親近感をもちやすいですね。福岡市植物園にはどんな女優さんのバラがあったかなと思い、改めてリストを見てみると、展望デッキ側のバラ園の真ん中付近に、オードリーヘップバーンやマリリンモンローなど、私が知っているだけでも4品種はありました。ほかにもあるかもしれません。形状や香りと、名前を照らし合わせて、作出者がどのような想いでバラを命名したのか、思いを巡らせてみるのも楽しいですね。 バラ“オードリー ヘップバーン” バラ“エリザベス テイラー” 子どもさんのものと思われる作品もたくさん。 “コスモスのきれいな色がはきはきと” 七海 “コスモスが赤白黄色さきほこる” あかり “いつになる夢のお祭り行ける日は” 恭平 コスモスがそれぞれの色を主張し合っている感じが、伝わってきますね!入り口広場で、多くの来園者の方を楽しませてくれた13種類のコスモスは、11月下旬にカンザキハナナ【寒咲花菜】と入れ替わる予定になっています。 お祭りといえば…金魚すくい、わたがし、かき氷…子どもの頃に体験した賑やかな情景は、大人になっても割と鮮明に記憶に残っている気がします。コロナ渦が収束し、早くいろいろなイベント等が再開されるような状況になることを願うばかりです。 (令和2年10月14日撮影) 続いて… “ライオンにかばにうさぎにひよこちゃん” 動物満載です!動物園も楽しんでこられたんですね。ちなみにこの中で季語なのはウサギだけだそうです。 俳句は季語を1つ入れるのが基本的なルールですが、2つや3つ入れるのは季語重なりと呼ばれ、避けたほうが良いと言われています。今回投句された作品には、季語のない作品が多くみられました。季語を入れると正式に俳句となりますので、初心者の方もぜひ季語を1つだけ入れるようにしてみてくださいね。 最後は、いつも写真付きの俳句をご投稿いただいている方の作品です。 “無造作に落葉踏みゆく園児かな” 英世 写真と俳句の

風に舞うタネたち(2020.11.11)

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 立冬を過ぎて暦の上では冬ですが、これから秋がグッと深まっていきます。春から夏にかけて、 花を咲かせ実をつけてきた植物たちですが、秋が深まってくると子孫を残すために種子を拡げる という大事な仕事が残っています。自分では動けない(動かない)植物たちは、動物に付着するな どいろいろな周りのものを利用して種子を拡げます。そのひとつが「風」の利用。 カエデ科の仲間は、種子を包む子房が翼のようになって風を受けます。この翼は、子房が変化 した果実なので翼果(よくか)と呼ばれ、プロペラ状になって風に舞って落下していきます。 最初に紹介したのはイタヤカエデ【板屋楓】。現在園内では、紅葉前のいろいろなカエデ科樹木 に付いている翼果をいろいろ観察することができます。                         イロハモミジ                      トウカエデ                                   植物たちは、翼果以外にもいろいろな部位で風を受けて、種子を拡げます。  アオギリ【青桐】(アオギリ科)は、果実の皮が5つに分かれて開き、舟形の裂片に種子を付けて 風に舞います。                 セイヨウシナノキ【西洋科木】(シナノキ科)は長い果柄の先に果実を付けますが、成熟すると基 部にある苞葉とともに枝から離れて風に舞います。                  クマシデ【熊四手】(カバノキ科)は、種子を抱いた果苞が房状(果穂)になって下がりますが、果 穂が熟すと種子は果苞に包まれたままバラバラになって風に舞います。                       ユリノキ【百合木】(モクレン科)の果実は翼果がたくさん集まった集合果ですが、これも熟すとバ ラバラになって風に舞います。     その他、熟して茶色くなってもいつまでも枝に残るネムノキ【合歓木】(マメ科)の鞘や、果皮が風 船状になるモクゲンジ【木患子】(ムクロジ科)なども、風を受けて種子の散布範囲を拡げるための 形のひとつといえるのではないでしょうか。  園内で風に舞う種子を見つけて、深まる秋を感じてください。           (解説員)                                                       

ちいさな大発見No.107(2020.11.7)小さな菊の仲間たちPart.2

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  今号ではキク科シオン属(アスター属),ヨメナ属の小さな菊たちを紹介します。  空き地などで普通に見られるシオン属のノコンギクです。野生種でヨメナによく似ていると言われています。 水生植物園で咲くノコンギク  一方,園芸店でよく見かけるのはコンギクです。コンギクはノコンギクの園芸品種で花色もより紫が濃くきれいです。野草園東で満開です。  ひときわ目立つコンギク  次は海岸の岩の上に自生するダルマギク(達磨菊)を紹介します。海岸植物らしく葉や茎は肉厚で柔らかい毛で覆われ,青紫のきれいな花を咲かせます。  展望台花壇のダルマギク  次は畦道や野原で普通に見られるヨメナ属のコヨメナです。別名をインドヨメナと言い,中国を経由して日本に入ってきたそうです。 数多く見られるコヨメナ  そして,主に関西以北に自生するオオユウガギクとコヨメナが自然交配してできたのがヨメナです。柔らかい若芽は、春菊の香りがあって昔から山菜として利用され、おいしくて花も美しいところから嫁菜の名が生まれたそうです。  花径3cmを超えるヨメナ  両者の違いですが,ヨメナの方が葉のギザギザ(鋸歯)がはっきりしており,スリムな葉形です。何より花が一回り大きいです。  最後に番外編です。情報館1階に入っている花香房さんで,ラベルにミヤマヨメナ七変化とあるきれいな花を見つけたので2鉢購入しました。春は一重,夏には八重の白い花,晩秋には青みががり薄紫へと花色が変化するそうです。  しかし,どうやらミヤマヨメナ属ではなく,ヨメナ属のユウガギクの園芸品種のようです。 カーリメリス七変化が正解!? 【解説員K】

ちいさな大発見No.106(2020.11.5)小菊の仲間たち!

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 朝夕はずいぶんと冷え込むようになり,秋の深まりを感じます。  秋と言うと,やっぱり菊のイメージが強いようですが,今,野草園や針葉樹園花壇を中心に小さな菊の仲間たちがたくさん咲いています。  先ず,キク属の仲間たちです。菊の仲間はほとんどの花が筒状花と舌状花でつくられています。最初に紹介するのは,シャスターデージーの交配親として知られているハマギクです。これは日本固有種で真っ白な舌状花は雌花、黄色い筒状花は両性花となっています。草のように見えますが,木本ですよ。  そして,ハマギクよりも一回り小さいコハマギクも咲いています。ハマギクはヘラ形の葉ですが,こちらは小さな切れ込みが入る5浅裂の広卵形をしています。  次は名前の通り,海岸線に自生するイソギク(磯菊)です。イソギクは舌状花がなく、筒状花だけでできているのが特徴です。また,葉裏は白っぽいのですが、この色が表の縁まで回りこんでいます。これが白い縁取りがあるように見え、とってもおしゃれです。  そして,ハナイソギクです。これはイソギクとキク(イエギク)が交雑してできたもので,白い小さな舌状花がちらほら見えています。  次は牧野富太郎博士が高知県の河川敷で発見したノジギクです。漢字で野路菊と書き、山野の小路に生える野菊の意味ですが、実際は海岸沿いが主な自生地です。  最後にガーデンマムを紹介します。ガーデンマムは名称ではなく,日本の小菊がヨーロッパで品種改良されたものでガーデン(garden)とキク属の学名であるクリサンセマム(Chrysanthemum)の造語です。色や花形が豊富で鉢植えに向いています。写真は市民花壇で撮影しています。  次号では一般に野菊と呼ぶにふさわしいキク科シオン属,ヨメナ属の仲間を紹介します。 【解説員K】