ちいさな大発見!? No.58(2019.12.13)本当にサザンカ?

 花が少なくなったこの時季,色とりどりのサザンカが周囲を華やかにしてくれています。
 一口に,サザンカと言っても300種類以上の園芸品種があり,開花時期や花の形から大きく3つのグループに分けられます。
 1つは,サザンカの自生種がベースになっているサザンカ群,もう1つは獅子頭がベースになっているカンツバキ群,そしてサザンカと主にヤブツバキとの交雑によって生まれたハルサザンカ群です。
 本園ではサザンカ群は4種(金花山,根岸紅,花自慢,有希),カンツバキ群は7種(勘次郎,獅子頭,朝倉,富士の峰,皇玉,乙女サザンカ,新乙女),ハルサザンカ群は5種(笑顔,梅ヶ香,旭,宝塚,飛竜)を見ることができます。

 さて,郷土樹木園を右手に見ながら歩いていると,ちょうど頭の上に八重咲の「サザンカ笑顔」が大輪の花を咲かせています。(写真①)
(写真①)ピンクの花弁が愛らしい「サザンカ笑顔」

 ふと足元に目をやると,すでにいくつかの花弁が落ちていました。(写真②)
 みなさん,この写真を見て何か変だと思いませんか。
写真② ツバキのように花首からポトリと・・・?

 普通,サザンカの花は写真③のように,花弁を1枚ずつ散らして落ちていきます。花首から落ちるのは,正にツバキそのままです。
 
写真③ 普通のサザンカの散り方

 ではなぜ写真②のような散り方をするのでしょうか。
 サザンカ笑顔はハルサザンカ群に属し,ヤブツバキに近い性質をもっているようです。ですから,本種も花弁とおしべが基部でゆるく繋がっており,写真②のような散り方をしていたのです。
 それではハルサザンカ群のサザンカたちがみんなそのような散り方をするのでしょうか。
写真④ 1枚ずつ散っている「サザンカ梅ヶ香」

 すると,写真④のようにハルサザンカ群を含めた15種のサザンカは,ほとんどが1枚ずつ花弁を散らせ,花首から散るのは「笑顔」だけでしたよ。
 ハルサザンカ群の園芸種たちは,交雑を繰り返してきた歴史があるので,よりサザンカに近い種とツバキに近い種があり,同じ仲間とは言え,かなり幅があるようです。ですから「笑顔」は,よりツバキ系に近い性質を持っているのでしょう。

 そして,花弁とおしべが散った跡には,ツバキと同様に複数枚のガクと子房から伸びた1本のめしべだけが残り,その先っぽは写真⑤のように3つに分かれていました。
写真⑤ 雌しべの先が3つに!

 1つの植物をじっくり観察するのも面白いですね。
【解説員K】

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