「バンジロウ」ってなに?(2020.10.2)



 先日、中央区にお住いの方が緑の情報館に来られて、「桜坂から歩いてきたら、道の横にこん な実がなっていたけど、なんだろう?」と携帯写真を見せられました。拝見すると、丸い形で先端 に萼の痕跡が特徴的な実です。「もしかして、大温室にもあるグアバかな?」 ということで、早速 現地に見に行きました。
 
  確認すると、歩道上には熟した黄色の実がいっぱい落ちており、対生している大型の葉やすべ すべしている樹皮などの特徴から、熱帯性の果実でグアバの一種であるキミノバンジロウ【黄実 蕃石榴】(フトモモ科)とわかりました。「バンジロウ」というのは、果実の形や肌がザクロに似てい ることから、台湾でバンジロウ【蕃石榴】と呼ばれていたものがそのまま和名になっており、沖縄 地方ではバンシルーとも呼ばれているそうです。  このグアバの仲間バンジロウ属は熱帯及び亜熱帯で栽培されていますが、文献によると、その 中でもテリハバンジロウという種類は耐寒性が強く、我が国のような温帯でも栽培が可能とされて おり、実際当園の苗圃には露地で育っています。
 今回来園者の方から教えていただいて、温帯に属する福岡の地でも、テリハバンジロウだけで はなく、キミノバンジロウも屋外で十分に育つことが確認できました。  テリハバンジロウは、実が熟すと紫紅色になることから、英名ではストロベリーグアバと呼ば れ、黄色に熟すキミノバンジロウはイエローストロベリーグアバと呼ばれています。  苗圃に熟して落ちていたテリハバンジロウの実を味わってみました。

 熱帯育ちではないので残念ながら酸味が強く、また固い種子が多いのが気になりましたが、な かなか良い香りでした。熱帯地方で栽培されたものは、生食のほかジュース、ゼリー、ジャムなど に利用されます。  なお現在、大温室ではキミノバンジロウとテリハバンジロウが隣り合って実をつけているいます ので、同時に観察することができます。また近くにはグアバ(バンジロウ)も実をつけていますの で、併せてご覧ください。

               

               

 ちなみに、グアバの仲間が属する科名のフトモモとは、中国語の「蒲桃」(ほとう;プータオ)が沖 縄に伝わって「フートー」となり、「フトモモ」になったといわれています。身体の「太股」とは関係が ないので、念のため。                                                                                                                                         (解説員)

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