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ちいさな大発見!? No.39(2019.5.31) 大判,小判がドッサリ?

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 今の時期,道路脇や空き地ではスズナを豪華にしたような,小さな実をビッシリつけた草が繁茂しています。イネ科の「ヒメコバンソウ」です。写真① 写真①「ヒメコバンソウ」 「ヒメコバンソウ」はヨーロッパ原産の帰化植物で、名前にヒメが付いているように「小さなコバンソウ」という意味です。小さなおにぎりのような小穂と言う実をたくさん付け群生しています。穂を振ってみると,カサカサと乾いた音がするところから,「スズガヤ(鈴茅)」と言う別名が付いています。   それでは,「コバンソウ」を紹介します。本園では野草園西で見ることができます。写真②③ 写真②小穂が垂れている! 写真③もう少しで黄金色に!  コバンソウはヨーロッパ原産のイネ科の一年草です。日本には明治初年に観賞用として渡来しました。代表的な帰化植物のひとつで、現在では野生化し、道路脇や空き地で大群落をつくっているのをよく見かけます。1カ月ほどかけて,実が緑色から黄緑色,そして最後に黄金色になり、文字通りコバンソウ(小判草)になります。  そこで,実際のサイズですが,コバンソウで全長約1.5cm,ヒメコバンソウは約5mmです。比較した写真が次の写真④になります。 写真④ 小さいほうがヒメコバンソウ  小判の次はやっぱり大判ですね。  アブラナ科の二年草でヨーロッパ原産の「オオバンソウ(大判草)」を紹介します。(写真⑤)ムラサキハナナによく似ています。  別名は「ルナリア」,ラテン語のルナ(月)から来ており、円形の果実をお月さまに見立てたとのことです。 (写真⑤)オオバンソウ(ルナリア)  また,20世紀の初めにこの植物をフランスから日本に持ち帰った合田清さんの名前にちなんで、ゴウダソウ(合田草)の和名もあります。  ところで,この植物がオオバンソウ(大判草)と呼ばれる所以は花後にあります。花弁が散った後には,ぺったんこな円形状のさやができます。写真⑥ 写真⑥ さやの中の種が透けて見える!  1つのさやは3枚の皮でつつまれており,果実が熟してタネがこぼれたあと、裏表の外側の皮が剥がれ,中にある銀白の薄い膜だけが残ります。これをドライ・フラワーとして使われるそうです。 【解説員K】

原産はニュージーランド(2019.5.25)

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 温室ギャラリーの北側エリアでユニークな姿の花が咲いています。ニュージーランド原産のレワレワです。花はエンジ色で花びらはなく、筒状に花をつけます。レワレワrewarewaという名前は先住民族マオリの呼び名で、英語ではnative honeysuckle(野生スイカズラ)とも呼ばれ、現地では良質な蜂蜜が取れる花として知られています。  レワレワは、ヤマモガシ科という南半球の乾燥地域に多く分化したグループに属していて、この科ではオーストラリア原産でブラシ状に花をつけるバンクシア・インテグリフォリアを当園で見ることができます。(今年は1月に開花)  レワレワの写真を撮影しているとすぐ近くにこんな花も咲いていました。  ニュージーランド全土に広く分布しているニューサイラン【入才蘭】の花です。マオリ名はハラケケharakekeで、細長い葉の間から花茎を長く伸ばして先端に暗赤色の花をつけます。分類は体系によりまちまちで、ユリ科に分類したりフォルミウム科(広義のリュウゼツラン科)としていることもあります。この花は、ネット情報ではめったに咲かない花(40年に一度!?)として紹介されている記事も見かけます。  このエリアでは、現在南アメリカ原産のフェイジョア(フトモモ科)も開花中です。  ちょっと奥まっているので入ることが少ないエリアですが、普段なかなか見ることができない珍しい花が咲いたこの機会に是非ともご覧ください。    (解説員)

ちいさな大発見!? No.38(2019.5.23)  ノアザミの仲間?

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 写真①をご覧ください。今、野草園東で咲いているキク科アザミ属の「ノアザミ」です。今の時期、道路脇や空き地などで普通に見ることができます。よく「アザミ」と言いますが、広義の意味で使っているわけで、実際は、「アザミ」の花は存在しません。   写真①「ノアザミ」  世界中には250種類くらいのアザミの仲間が存在し、そのうち日本には100種類ほどが自生しているそうです。  ところで、属は異なりますが、チョウセンアザミ属の「カルドン」を紹介します。針葉樹花壇や芝生広場の市民花壇にも植えられています。株全体が2M近くになり、シルバーリーフがとてもきれいで、抜群の存在感があります。(写真②) 写真②葉の切れ込みが大きい「カルドン」  葉は切れ込みが深く、触ると痛いです。蕾を覆っているガクが棘状に尖っています。(写真③) 写真③「カルドン」の蕾  もう一つ、同属の「アーティチョーク」を紹介します。ハーブ園や野草園東でみることができます。葉の形状や蕾の形が「カルドン」によく似ていますが、こちらには刺がありません。カルドンと同じ地中海沿岸が原産の大型植物です。(写真④⑤) 写真④「アーティチョーク」の蕾 写真⑤「アーティチョーク」の色違い  写真③④⑤共に、まだ紫の花は咲いていませんが、開花すると「ノアザミ」の仲間だと納得いただけると思います。  これらの栽培の歴史は古く、野生のアザミから古代ギリシャ・ローマ時代以降に、品種改良が進んで今日の姿となったそうです。中には野生のアザミから「カルドン」に、さらに改良して「アーティチョーク」になったという説もあるようです。  両者は同属の近縁種にあたり、どちらも食用になりますが、特にアーティチョークはヨーロッパやアメリカではお馴染みの野菜で、食用にされています。  アーティチョークの和名は「チョウセンアザミ」と言いますが、外国から渡来したアザミに似た植物という意味合いで、隣国の朝鮮とは何の関係もありません。  植物園にお出での際は、是非、見てください。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.37(2019.5.15) 陸上植物の「生きている化石」!

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 数億年前の古生代に死滅したと思われていた魚類のシーラカンスが20世紀初めに生きて発見されたことから、「生きている化石」と言われているのはよく知られているところです。  一方、陸上の植物で生きている化石と言えそうな植物が福岡市植物園でも見ることができます。シダ類の中でも特殊な原始的構造を持ち、日本に一目一科だけの特別な植物、それが「マツバラン」です。 ケヤキに着生している様子(現在)  もともと、植物は海や河川の水の中で生息していましたが、やがて陸へと上がっていったと言われています。そして地上に最初に上がった植物が、いちばん原始的な姿のまま何億年も生き続けてきたような格好をしているのがマツバランなのです。  マツバランは地下茎はありますが、基本、茎だけで、根も葉もない着生植物です。樹上や岩の上に生えることが多いそうですが、本園ではケヤキの株元に自生しています。茎の途中で丸く膨らんでいるのが胞子嚢です。胞子嚢は熟すと黄色くなり、その一部が裂けて、胞子が飛び出して増えていきます。 丸くなっている粒が胞子嚢  一見すると、葉のように見える茎が二つに分かれているのも大きな特徴の1つです。 二股分岐している様子(数年前の写真)  江戸時代には園芸栽培種として大流行し、いろいろな品種が作られたそうです。  こんなに地味なのに、江戸時代から園芸植物として珍重されていたとは意外な気がします。  今では山野の自生は少なく、環境省では準絶滅危惧種(NT)に指定しています。植物園においでの際には,是非見てください。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.36(2019.5.4) 120年ぶり(?)に開花!

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 「令和」という新しい時代に呼応するかのように,今,全国でマダケ(真竹)の園芸品種であるキンメイチク(金明竹)が咲いたという情報が飛び交っています。  先日も,本園の相談室に八女の方から  「竹の花らしいものが咲いたが・・・・」という問い合わせがあったそうです。  実は本園でも「キンメイチク」の花が,今,竹園で咲いています。(写真①②③) 写真① キンメイチク(金明竹) 写真② キンメイチク(金明竹)の花 写真③ 雄花が垂れている  キンメイチクは,黄色の茎に緑色の縦じまが入るマダケの園芸品種です。竹はイネ科の植物ですから,稲に似た白く細長い花を咲かせます。  竹の花の開花は大変珍しく,学術的にもはっきりしない部分が多いのですが,マダケは120年に一度の周期で咲くと言われています。花を咲かせた後は、竹林ごと一斉に枯れてしまい、再生には10数年かかるそうです。これは地下茎でつながっているため,年老いた竹だけでなく,若い竹も一斉に枯れてしまうからだそうです。ただし,種ができ,また地下茎の一部が生き残ることで、やがて時間をかけて復活していきます。  また,今回,このように全国で一斉に開花情報が寄せられたのも,日本のマダケのほとんどが遺伝的に均一らしいのです。  令和元年の年に,キンメイチクの開花現象が起きたということは,「新しく生まれ変わる」という意味があるのかもしれませんね。(?)  私たちが生きている間に,見ることができるかどうかわからない竹の花を,是非,見ていただきたいと思います。 【解説員K】