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9月, 2021の投稿を表示しています

ちいさな大発見No.143(2021.9.20)福岡市植物園初開花!?

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 植物園エントランスの改修後、情報館1階の相談コーナーは西日が入るようになりました。  そこで、西日よけとして、今年の春に蔓性の植物を職員で植えました。緑のカーテンとして植えたのが、ヒョウタンやアサガオ、ルコウソウ、宇宙ポテトなどですが、その中に1株だけ、オカワカメがありました。 今の状態      今号ではツルムラサキ科でアカザカズラ属のオカワカメを紹介します。正式和名はアカザカズラ、別名は雲南百薬と言います。どうも中国から長寿の薬草として入ってきたようですが、南アメリカ原産です。    ちょうど、この時季、長さ20cmを超える房状の花序に、クリーム色の花をたくさん咲かせています。  あまい香りが・・・! 5花弁に雄しべが5本、雌しべ1本    また、株元を見ると、ごつごつしたむかごができています。   ヤマイモのむかごと同じように食べます!    百薬という名前が付いているように、カルシウムやマグネシウム、亜鉛、銅などのミネラルやビタミンAを多く含み、薬効はあまたあり、栄養価もとても高いスーパー野菜と言われています。    食べられるのは球根や葉、むかごです。特に肉厚の葉をゆでると、ぬめりが出て、ワカメのような食感になるところから、オカワカメの名があるそうです。  肉厚でハート形    近くの畑でも見かけましたので、農家の方々には結構知られているのかもしれません。   【解説員K】

バスから見える花~その後(2021.9.18)

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ビフォー アフター  6月中旬に当ブログで「バスから見える花~初夏編」を紹介しました。 「動けない(動かない)」植物たちは次世代の子孫を残すために、周りと競うように花を咲かせて花粉を運んでくれる昆虫などにその存在をアピールします。また受粉後は果実を鳥などに食べてもらうことで、その中の種子が広い範囲に散布されます。  花を咲かせてから約3か月、暑い夏を過ごしたあと実りの秋を迎えて、バスから見えた花たちは子孫を残すためにどのような姿になっているのか、ビフォーアフターを見てみましょう。  トップの写真はアカメガシワ【赤芽柏】(トウダイグサ科)です。前回、この種は雌雄異株ということを紹介しました。雌花が受粉した後子房が肥大して果実になりつつある時の写真ですが、表面には黄色っぽい棘状の突起があり、頭には3つに分かれた雌しべの赤い柱頭がそのまま残っています。  9月になると果皮が割れて、中から黒くて光沢のある種子が顔を出します。種子の表面には油脂分を含んでいるので、鳥たちの好物になっているようです。鳥たちが食べ残したものは落下、土の中に埋もれて長い期間しぶとく生き残り、発芽のチャンスを待つことになります。 ビフォー アフター  次はヨウシュヤマゴボウ【洋種山牛蒡】(ヤマゴボウ科)の果実のビフォーアフターです。最初はやさしい緑色をしていた果実が、熟してくるとなにやら毒々しい黒紫色になって垂れ下がります。注目していただきたいのはつけ根の果柄の色、果実が熟すにつれて赤色が濃くなっていきます。これは植物の「二色効果」と呼ばれるもので、もともと鳥たちは赤色を好む性質がありますが、赤と黒のツートンカラーだと鳥を引き寄せる効果が倍増するとのことです。  ヨウシュヤマゴボウは果柄と同じように幹も赤色が濃くなりますが、あわせて緑色の葉も赤色に染めていきます。「二色効果」をこれだけ徹底すると鳥たちへのアピール度は抜群ですね。 ビフォー アフター  最後はテイカカズラ【定家蔓】(キョウチクトウ科)のビフォーアフターです。アフターの姿がわかりにくいのですが、逆V字形に果実が下がっているのがわかりますか?  細長い袋果で、2個が対になってぶら下がっています。熟すと細長い実が縦に裂けて、中から長い綿毛をもった種子が出てきます。風まかせの種子散布で鳥たちにアピールする必要がないのでこんなに目立たない果実なん

ちいさな大発見No.142(2021.9.14)夏野菜???

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 さぁ、近所の畑で見つけたこの花はわかりますか。  レモンイエローの5弁花  ヒントは夏の定番野菜でネバネバが好まれています。栄養価が高く、スーパーで安く手に入るため、食卓によくあがります。軽く茹でた後、サラダや和え物料理によく使われます。  答えはアフリカ原産でアオイ科のオクラです。    日本には明治になってから観賞用として入ってきたようですが、1日花であり、やがて花後の果実(鞘)を食べるようになりました。  ところで、同じ仲間で、今、野草園で咲いている中国原産のトロロアオイ(別名:花オクラ、黄蜀葵)があります。   オクラに対し、花オクラ  花のつくりや色などはそっくりで、違いは花の大きさです。オクラは6~7cmですが、トロロアオイは15~25cmほどになります。花後はオクラのような大きな鞘はつけず、一般には食べられていません。  食べるのは花です。エディブルフラワーとして、オクラのようにネバネバがあり、酢の物やテンプラなどで食べられるようです。  また、根には粘液があり、和紙作りの糊としても利用されてきたそうです。  ついでですが、トロロアオイの黄蜀葵に対し、紅蜀葵と呼ばれる花があります。 雄しべと雌しべが合着  北アメリカ原産のモミジアオイです。先に紹介した植物がトロロアオイ属なのに対し、こちらはフヨウ属になります。ハイビスカスの仲間ですよ。  長い蕊柱(ずいちゅう)の先には5裂した雌しべが、そのすぐ下にはたくさんの雄しべが付いています。 ハイビスカスそっくりですね。 【解説員K】 

ちいさな大発見No.141(2021.9.4)サクラの仲間!?

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 花木園Cでは、今、白い花が密集して咲いている樹木があります。  白花が緑に映える!  バラ科サクラ属のリンボク(橉木)です。  総状花序にたくさんの小花をつけ、花弁は5枚、1本の雌しべとたくさんの雄しべとはどちらも長く花弁から飛び出すように咲いています。  そこで、同じサクラ属の仲間で似たような花序をつける植物を3つ紹介します。  まず、日本原産のバクチノキ(博打の木)です。開花はリンボクよりも少し遅く、9月下旬からです。樹皮が剥がれ、幹が茶褐色になり、園内でもひときわ異彩を放っています。 花序はリンボクより短め   樹皮が剥がれる!  同じく近縁種にヨーロッパから西アジア原産のセイヨウバクチノキがあります。 こちらはバクチノキのように樹皮が剥がれることはなく、開花も4月頃です。  花序は下から順に開花!  これらの3種類の樹木はサクラ属の仲間の中では数少ない常緑樹です。  最後に紹介するのはウワミズザクラ(上溝桜)です。春に咲くサクラの中で、本種とイヌザクラがいわゆる桜の花と異なった花のつくりをしています。  開花は4月頃! 【解説員K】

ドングリの枝を切り落としたのはだれだ?(2021.9.2)

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  コナラ【小楢】のドングリの今の様子です。春に受粉して秋には熟す一年成のドングリで、夏の暑さの中で順調に大きくなっています。  本数が多いので園内の随所で見られる種類ですが、この時期、木の周辺にはドングリと葉をつけたままの枝先がポトポト落ちているのが目立ちます。落ちている切り口を見てみると、まるで刃物をあてたようにスパッと「切られて」います。  せっかく大きく育っているドングリを、落としてしまうのは一体だれのしわざでしょうか?資料をいろいろと調べてみると、犯人はゾウムシの仲間のハイイロチョッキリという昆虫のようです。  ハイイロチョッキリは長い口吻(こうふん)と呼ばれるもので穴をあけて卵を産みつけて、その後枝先をチョッキリと切って落とします。鱗状になっている殻斗(かくと・お皿のこと)のところに黒っぽく見えるのが産卵の穴です。穴のところをカッターで切断してみました。  卵は見えませんが、殻斗を抜けてドングリの中までしっかりと口吻を差し込んだ様子がうかがえました。  秋にドングリ拾いをしてしばらく置いておくと中から「ドングリムシ」が出てくることがありますが、あの正体はハイイロチョッキリをはじめとするゾウムシの仲間の幼虫なんですね。卵からかえった幼虫は、ドングリの中身を栄養として食べてしまったら、土の中にもぐって越冬します。  ハイイロチョッキリは卵を産みつけたあと、なぜ枝先をチョッキリと切り落とすのでしょうか?  資料を調べてみると、いろいろな理由があげられています。  ・地上に落としておくと、幼虫が土の中にもぐり込みやすいから  ・同じドングリに、仲間や他の虫が重複して産卵しないように  ・卵に適した温度・湿度などの環境を地表で保つため  ・食害された(産卵穴をあけられた)ドングリが、防衛のための物質を出さないように   ...などなど   まさに「諸説あり」ですが、いずれにしても大事な子孫を守るためにハイイロチョッキリが身につけた巧みな「生き残り戦略」のようですね。  その他のドングリの現在の様子です。  芝生広場のカシワ【柏】、一年成でモシャモシャの殻斗が特徴的なドングリです。ここ数年結実が見られなかったので、秋に熟すのが楽しみです。  秋に開花するシリブカガシ【尻深樫】、動物園南園、オランウータンの近くの斜面で咲いています。  二年成のアベマキ【棈】、本格的な