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木の実たちに秋の気配を感じます(2020.8.29)

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連日猛暑が続いていますが、さすがに8月も下旬になると園内ではあちらこちらで秋の気配が・・・。いち早く秋の気配を感じさせてくれるのは、「実りの秋」を迎える木の実たちです。  野草園東側の園路には、早くも熟したトチノキ【栃ノ木】(トチノキ科)が落ちています。小学校の国語の教科書に取り上げられている「モチモチの木」は、このトチノキのこと。例年9月の中旬頃落下するのですが、今年は猛暑のせいか少し早いようです。 枝先には、まだまだおおきな実がいっぱいついています。   芝生広場の展望台前で、もしゃもしゃの殻斗(かくと)と一緒に落ちているのはアベマキ【棈】です。いわゆる「ドングリ」(ブナ科の樹木の果実)の一種です。ドングリには、1年内に熟すもの(1年成)と2年にまたがって育つもの(2年成)があり、このアベマキは2年成。つまり、今落ちているアベマキは、去年の5月頃受粉して結実したものがやっと大きくなったものです。 この写真は、アベマキやクヌギが多い動物園西門付近(カバ舎の近く)の今の様子、こちらは熟して落ちるのはもうちょっと先のようです。   その他、これから「実りの秋」を迎える木の実たちの今です。 モクゲンジ ムクロジ キリ 他のドングリ類も着々と成長しています。 マテバシイ(2年成) コナラ(1年成) アラカシ(1年成) 暑い日が続いていますが、園内でいろいろな秋の気配を感じてください。                                                                                                                                                              (解説員)

ちいさな大発見No.99(2020.8.27)継子の尻拭い!?

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 モデル庭園で咲いているシコンノボタンの足元周辺で,タデ科の植物があちらこちらから顔を出しています。つる性の一年草,ママコノシリヌグイです。  一見すると,ミゾソバに似て,金平糖(?)のような可憐な花です。 川や池の端で見られるミゾソバ  しかし,よく見ると葉や茎にはびっしりと逆さトゲがついています。このトゲを他の植物に絡ませながらつるを伸ばしています。 茎には逆さトゲ 葉柄にも鋭いトゲ!  ところで,ママコノシリヌグイ「継子の尻拭い」とは何とも強烈な名前を付けたものです。継母が実の子どもでないことを理由にいじめ心で,このとげとげの葉や茎でお尻を拭いたということでしょうか。  気づかずに素手で触れようものなら,本当に痛いです。    開花期間は大変長く、5月末から10月いっぱい見ることができます。花は淡いピンク色で5弁花に見えますが,花びらはなく,萼が5つに裂けて星形に開いています。おしべは8本,めしべは1本ですが,先っぽが3つに割れています。  花後には萼が閉じて、つぼみと同じ状態に戻るようで,その区別がつきません。実が膨らんできて,やっとわかるようです。  特徴として,タデ科の植物に見られる「托葉」が鞘状になった「托葉鞘」という葉の付け根の付属物があります。 托葉鞘  まだまだ残暑は厳しそうですが,植物園にお出かけの際はモデル庭園まで足を運んで,ママコノシリヌグイを観察してみませんか。 【解説員K】

「サンジカ」ってなに?(2020.8.23)

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「サンジカ」・・・漢字で書くと「三時花」。スベリヒユ科のハゼラン【爆蘭】の別名です。別名は、この花が午後3時頃から開くので名付けられており、サンジソウ【三時草】とも呼ばれます。  西インド諸島の原産で、我が国には明治年間の初期に花卉として導入されましたが、逸出して野生化したものが現在では各地で見られます。標準和名のハゼランは、濃紫色のつぼみから5弁の花が、まるで爆(は)ぜるように咲くことから付けられており、パチパチと咲くイメージから、またの名をハナビグサ【花火草】とも呼ばれています。(なんと別名が多いこと!)  当園では野草園の一画に毎年咲いていますが、別名のとおり午後3時頃に開花するかどうか、あらためて確認してみました。場所は小笹団地バス停の近くです。 午前中の写真です。丸いつぼみだけが目立ちます。  その日の夕方の写真です。名前のとおり爆ぜるように、紫色の花を午後3時過ぎに咲かせていました。  また、ハゼランと同じように夏の夕方になると開花するオシロイバナ【白粉花】(オシロイバナ科)の英名は、午後4時という意味のフォー・オクロック(4 o'clock)。これも開花の時間から名付けられています。バス停の近くにいっぱい咲いていたので、あわせて写真を撮ってきました。 午前中 夕方 オシロイバナの花は午後4時過ぎる頃から開花を始めて、翌日明け方には閉じてしまう一日花ですが、夜行性のスズメガの仲間に花粉を運んでもらうために、このような咲き方をしていることが知られています。  一方、ハゼランの花は3時頃に咲いては2~3時間後の夕暮れには閉じて、また翌日の3時頃に咲くことを繰り返しています。短い開花時間で、見たところ花も小さいので、花粉を運んでもらうべき昆虫たちにはあまりアピール度がないようにも感じられます。植物にとって花を咲かせることは、大きなエネルギーが必要と考えられますが、ハゼランはそれを夕方の短い時間に何日も繰り返していることになります。あまり効率の良い花の咲かせ方ではないように思うのですが、それでも近年、市街地でしっかりと増えているのは、それがハゼランが長い年月で身に付けた生き残り手段だからなのでしょうか。                                             

ちいさな大発見No.98(2020.8.20)トウワタの名がつく植物!?

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 トウワタ(唐綿)の名をもつ3種類の植物を紹介します。すべてガガイモ科(APG体系ではキョウチクトウ科)ですが,属はみんな異なります。  共通点は3つ。1つは実ができた後,二つに裂けて中から綿毛のついた種が風に飛ばされること。2つめは雄しべと雌しべが合体したずい柱を持っていて,その周りには副花冠があること。3つめは,茎を傷つけると白い乳液が出ることです。これは有毒で,肌が弱いとかぶれることがありますよ。  先ず,トウワタ属で熱帯アメリカ原産のアスクレピアス・クラサヴィカです。別名はトウワタ。反り返った赤い花弁に黄色い副花冠のツートンカラーがとてもかわいい花です。  鞘の中には種がびっしり!  2つめは,フウセントウワタ属で南アフリカ原産のフウセントウワタです。写真には星形の蕾と反り返った白い花弁にうすい紫の副花冠,そして,ハリセンボンのようなトゲの生えた円い実が同居しています。  実が熟すと割れて、中から白い綿毛のような毛をつけた種子が出てきます。そして、風に乗ってどっこまでも飛んでいくのです。寒さに弱く,1年草扱いですが,野草園東に咲いているフウセントウワタは2年目になります。  綿毛の種がそろそろ…  最後はルリトウワタ属でブラジルやウルグアイ原産のオキシペタラム,別名はブルースター,和名はルリトウワタです。きれいな青い5弁花が花壇に映えます。そして,花の姿からは想像もできないトウガラシ(?)のような実を付けます。  この鞘の中には? 綿毛付きの種  トウワタとフウセントウワタは野草園で,ルリトウワタは市民花壇で見ることができます。 【解説員K】

ちいさな大発見No.97(2020.8.15)サルスベリの秘密!?

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 通勤中の車窓から白やピンク,赤,紫など色鮮やかな花木が目に留まります。  夏の花の1つ,ミソハギ科のサルスベリです。植物園でもモデル庭園や花木園Aで8月に入って開花が始まりました。  ところで,花のつくりはどうなっているか知っていますか。円錐状の花序にばかり目がいき,ひとつひとつの花をじっくりと見たことがなかったので,今回調べてみました。  先ず,この写真を見てください。  花弁は6枚。銀梅花(マートル)の花に似て,花弁がちりめんのように縮れていることから英名 Crape myrtleの名が付いたそうです。花弁を支える柄が長く,正にフリンジ状で,このような花形はとても珍しいと思います。  中心には雄しべが30本以上集まっています。先っぽの黄色い葯から花粉がたくさん出ていますが,この花粉には生殖能力がなく、そのかわり高い栄養価があるそうです。つまり虫をおびき寄せる効果があるわけです。 短い雄しべと雌しべ  本当の受粉可能な雄しべは,その周りにある長い6本の雄しべです。虫たちが中心にある短い雄しべの花粉を食しているとき,クルッと巻き込んでいる長い雄しべの花粉が背中に付き,同じくクルッと巻き込んでいる雌しべに受粉する仕組みです。  もう一つ,秘密があります。それは次の写真をみるとわかります。 コクサギ型の葉序  葉の付き方ですが,場所により対生したり互生したりします。それだけでも珍しいのに,ときに左右に2枚ずつ交互に並ぶコクサギ型と呼ばれる葉の並び方をしています。かなり珍しいですよ。  また,花木園Cでは中国や台湾,沖縄に自生するシマサルスベリが咲いています。こちらは花が小ぶりで白のみのようです。 一つの花は小さいが・・・  最近,ちょくちょく目にするようになったムラサキサルスベリは,シマサルスベリとサルスベリとの交雑種です。  長短の雄しべや雌しべを是非、確認してみてください。 【解説員K】

“しょくぶつ園みわたすかぎりみどりあり” 俳句小屋の展示作品を入れ替えました(2020.08.13)

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先日,俳句小屋の展示作品を入れ替えました。7月もご投句ありがとうございました。長梅雨の影響もあり,7月の投句数は少なめでしたが,力作ぞろい。投句していただいたほとんどの作品を展示しています。それらの中から数点ご紹介します。 “しょくぶつ園みわたすかぎりみどりあり” まつもとこうた 情景をまっすぐに表現した作品ですね!春に比べ,だいぶ花の少ない時期になりましたが,長雨や酷暑の中でも緑は深くなり,植物の生命力の強さを感じさせられます。 続いて… “現れてついと消えたる梅雨の蝶” 政弘 ”緑濃き梅雨の晴れ間にアオスジアゲハ” 旅人 梅雨の時期に園内を歩いていると,少し黒味がかった蝶(アオスジアゲハ?)がヒラリと目の前に現れては,スッと姿を消すことがあります。この時期の蝶は,ずっとヒラヒラ羽ばたいているわけではなく,普段は葉の裏などにいて,ちょっとした間を見て姿を現すようですね。 最後にネジバナを題材にした作品を3点。 “文摺やかなの稽古を怠けをり” 絹子 (もじずりやかなのけいこをなまけをり) “捩花に風の尖端ありにけり” 美知子 (ねじばなにかぜのきっさきありにけり) “捩花の芯まっすぐになびかずに” 美代子 (ねじばなのしんまっすぐになびかずに) 文摺(もじずり)とは,ネジバナの別称で,もともとは福島県信夫(しのぶ)地方で作られていた,乱れ模様の摺り衣(すりごろも)のことだとか。ピンと一本伸びた茎に,上手にクルクル巻き付いたように,ピンク色の花をつけるネジバナ。福岡市植物園では,今年も俳句小屋の前の梅園や水生植物園で,可憐な花を咲かせていました。 俳句の展示は,当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており,約1か月おきに入れ替えています。投句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と緑の情報館1階のポストで受け付けています。みなさんのご投句を,お待ちしています! ※今回展示している俳句の一覧です。 <俳句係 M>

独特な形の雄花と雌花~ソテツ(2020.8.8)

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 暦の上では立秋を過ぎましたが、連日うだるような暑さが続いています。園内の植物は全体的にバテ気味の様子ですが、暑さにもめげず濃い緑色の羽状葉をびっしりと繁らせて、たくましい存在感を示しているのが温室前のソテツ【蘇鉄】です。九州から南西諸島にかけて自生が見られ、幹の先端部分に葉を広げる特徴的な姿は、暑い南国の雰囲気を感じさせます。 雄花  ソテツは、イチョウやマツなどと同じ「裸子植物」です。裸子植物とは、胚珠(はいしゅ;成長して種子になる)がむき出しになっているもので、現在生きている植物の中では、イチョウと並んで最も原始的なものの一つとされています。雌雄異株で、幹の頂部に独特な雄花・雌花をつけます。 温室前では通路を挟んで左右に植栽されており、温室に向かって左側が雄株、右側が雌株です。 雌花  雄花は、円柱状で表面は鱗(うろこ)で覆われたようになります。その形は「松ぼっくりを長く引き伸ばしたようなもの」とよく説明されますが、雄花が出てきて間もない姿を見てみると、その意味がよくわかります。 7月初めの雄花  雌花は、幹の頂部に折り重なってドーム状に膨らんだ形になりますが、秋には種子が成熟してオレンジに色づきます。 オレンジ色の種子  この種子は有毒ですが、澱粉質も多く十分な処理をすれば食用になるので、かつて南西諸島などでは飢饉の際の救荒食物とされたとの伝承があります。  学名は「Cycas revolute」で、属名シカスは「ヤシに似た植物」、種小名リヴォルタは「反巻した」という意味から付けられており、種小名は出たばかりの若い葉を見ると、その意味がよくわかります。  ちなみに和名の「蘇鉄」の由来とは、枯れかかった時に幹に鉄クギを打ち込むと元気によみがえるとの伝承によるといわれています。  ソテツを観察する時には、葉先が鋭く尖っていて刺さると痛いのでご注意ください。 (解説員)