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ちいさな大発見No.163(2022.10.27)異形花柱性(いけいかちゅうせい)?

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 園内に入ると、すぐ脇の針葉樹園花壇で目を惹く紅白の花を見ることができます。タデ科イヌタデ属のサクラタデとシロバナサクラタデです。  可憐なサクラタデ  この植物にはおもしろい特徴があります。  以前は多くの植物図鑑で「雌雄異株」と言われてきましたが、近年の研究で「異形花柱性」であることが分かってきました。つまり、雌しべが雄しべより長く、花被(花びらに見える萼片)から飛び出ている長花柱花(ちょうかちゅうか)と、逆に雄しべが飛び出ている短花柱花(たんかちゅうか)の2形があるのです。どちらも、受粉し結実します。ただし、同一株には1つの形の花のみを付けます。  さっそく、針葉樹園花壇の花を調べてみました。次の写真をご覧ください。  サクラタデの長花柱花   シロバナサクラタデの長花柱花  残念ながら、どちらも雄しべが飛び出ている短花柱花を見つけることができませんでした。本園に植栽されているサクラタデ、シロバナサクラタデはすべて長花柱花をつける種ということです。ちなみに雌しべの柱頭は3裂しており、元は1本です。  ところで、イヌタデ属の仲間は本種以外にも多く存在しますので紹介します。  ペルシカリア・アンプレキシカウリス   ペルシカリア・アンプレキシカウリス・アルバ   金平糖のようなヒメツルソバ   紅白の水引に見立てたミズヒキ   白一色のギンミズヒキ   藍染に使用されるアイ   可憐な花をつけるミゾソバ   アカノマンマの別名があるイヌタデ   少数派のシロバナイヌタデ  他にも、オオケタデやママコノシリヌグイなどがあります。こうしてみると、イヌタデ属(ペルシカリア属:旧ポリゴナム属)の仲間はたくさんありますね。  ※ギンミズヒキとシロバナイヌタデは園外で撮影しています。 【解説員K】

"やはらかき空を受けとめ秋桜" 俳句小屋の展示を入れ替えました(2022.10.20)

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9月末に俳句小屋の展示を入れ替えましした。 展示させていただいた作品の中から数点ご紹介します。   "やはらかき空を受けとめ秋桜" 哲行 (やはらかきそらをうけとめあきざくら) 秋の花の代表コスモス、和名はアキザクラ【秋桜】です。ふんわりとした草姿ですが、一面に咲いていると広い空をやわらかく包みこんでいるかのようですね^^ 入口広場のコスモスは秋のバラ園とともに人気の写真スポットになっており、今は黄色い花色のコスモスも少しずつ開花を始めています。 "赤蜻蛉伸ばす児の手をすいと避け" みこ (あかとんぼのばすこのてをすいとさけ) スイスイと素早く空を飛び、方向転換も自由自在のトンボ、かっこいいですよね。枝先にじっと止まっているトンボに、指先をそっと近づけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。わたしは赤とんぼと聞くと子どもの頃を思い出すのか、どこかしみじみとした懐かしい気持ちになります。 (2022年6月24日 園内にて) セミを詠まれた作品も、とてもたくさんありました。   セミは長い地中での暮らしの後、パートナーを見つけるために、少しの間だけ姿を変えて地上へ飛び出します。身体は小さいですが、声はとても大きく、思わずどこにいるか見つけたくなりますね! 最後はこちら 作者不詳ですが、素敵なイラストも展示しています。俳句小屋へお越しの際は、ぜひご覧ください! 俳句の展示は、当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており、約1か月おきに入れ替えています。俳句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と、緑の情報館1階のポストで受け付けています。 初心者の方も大歓迎です。みなさんのご投句を、お待ちしています! ※今回展示している俳句の一覧です。   <俳句係M>

「ブンブン観察会 日本ミツバチと友達になろう」を実施しました。

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開催日 令和4年10月9日 日曜日 13時30分から15時30分 講  師 緑の相談員 小代 文明 「日本ミツバチと友達になろう」をテーマに小学生を対象としたブンブン観察会をおこないました。蜂と聞くと“刺される”や“危ない”といったイメージが先行しますが、日本ミツバチは他の蜂と比べて攻撃性が低く、西洋ミツバチと比べ体が一回り小さく黒っぽい見た目が特徴です。植物園では日本ミツバチの養蜂を数年前からおこなっていますので、なかなか見ることができない巣箱なども実際に見ることができます。 対象は小学生ですが、特性や巣の構造、蜂社会でのそれぞれの役割など、ミツバチについてしっかり学べる内容になっています。一緒に聞かれていた保護者の方も興味深々で質問をされていました。 養蜂は情報館の2階にておこなっています。巣箱の中の構造や実際にミツバチ達が生活している巣の観察をおこないました。観察している最中も周りを日本ミツバチが飛んでいましたが、私たちを器用に避けて巣に戻っていくのが印象的でした。 観察した巣箱で採れたハチミツの味見もしました。日本ミツバチのハチミツは百花蜜とも呼ばれたくさんの種類の花から集められた蜜からできています。一種類の花から集める西洋ミツバチの蜜と違った濃厚な味わいで美味しかったです! 市場に出てる国産ハチミツは5%。日本ミツバチのハチミツは0.1%といわれています。年間で集める蜜の量も少なく、養蜂にも大変気を使う必要があるそうです。このことから、かなり貴重なハチミツだということがわかりますね。お店で見かけたら値段が高いってだけでスルーせず、日本ミツバチが頑張って集めたハチミツだと思い、味を比べてみてくださいね! 参加者の感想 前から興味をもっていた日本ミツバチを詳しく知ることができてよかった。また巣箱を見ることができてよかったです。 日本ミツバチについてとてもよく知れました。初めてハチを近くで見たので少しこわかったけれど楽しかったです。  (運営係 A)

「旬の植物ガイド(10月)」を実施しました。

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開催日 令和4年10月8日 日曜日 13時30分から15時30分 講  師 植物園緑の解説員 加来 孝  二又 徳子 季節が秋に移り変わり、植物を見て歩くのに心地よい季節になりました。 この講座では、見ごろを迎えている植物の解説を聞きながら園内を観察してまわります。先月の観察会では歩くだけでも汗ばむ気温でしたが、当日は風が涼しくゆっくり園内を観察することができました。 10月の見ごろの植物15種類は次のとおりになります。 バンクシア・インテグリフォリア、トキワマンサク、ギョリュウバイ、ローゼル、バタフライピー、タイワンツバキ、ハゴロモルコウ、オオイタビ、ダンギク、ディコリサンドラ・ティルシフロラ、クジャクアスター、シュウメイギク、ミズヒキ、タイワンホトトギス、オオオナモミ 園内に出る前に座学にてブログや観察する植物のお話を聞きました。ヤノネボンテンカやマルバツユクサの受粉法やオニフスベの話、シュウメイギク等、植物の知識が深まる内容になっています! 観察した植物の中にはバタフライピーやローゼルがありました。両方ともお茶にして飲むことができる植物で、煮出すと鮮やかな色が出て見ても楽しむことができますね。イチジク属であるオオイタビの花嚢の構造のお話も興味深かったです。 実やお茶の話を聞いていると食欲の秋を彷彿させますね! 少しずつ季節を感じさせる植物が増え、バラも見ごろを迎えています。 秋を感じにぜひ植物園にお越しください。10月30日まで秋のバラまつりも開催中です! 参加者の感想 めずらしい植物をたくさん解説していただきありがとうございました。 可愛い秋の花や蕾や実のことを詳しく聞くことができ、また身の回りの草花に興味がわきました。 気候も良く植物の観察を楽しめました。ありがとうございました。  (運営係 A)

「植物ってこんなにおもしろい2022 植物を科学する~トチノキの秘密~」を実施しました。

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開催日 令和4年10月2日 日曜日 13時30分から15時30分 講  師 まほろば自然学校 岩熊 志保 先生 6月から10月にかけて開催していた講座も今年度最後になりました。小学生を対象に、各回テーマに沿った植物について楽しく学びます。 最後のテーマはトチノキについてでした。あの有名な絵本にも登場している木ですね。 トチノキは5~6月頃に開花し、9月になると栗に似た実を落とし始めます。そんなトチの実の活用方法をみんなで考えながら、リースやキーホルダーを作っていきます。 まずスライドを使ってトチノキや実について学びました。 トチノミの活用法で一番有名なのはお餅にすることではないでしょうか。絵本でもその実をお餅にして食べていましたね。岩熊先生もここ数年お餅づくりに挑戦されているそうで、下の写真が去年作られたお餅の写真になります。ぜんざいにアレンジされていてとても美味しそうですね! 他にも活用法として洗剤の実験もおこないました。トチの実、ムクロジの実、市販の洗剤で醤油のシミが落とせるのか比較します。それぞれ砕いた実と洗剤を水に入れて容器を振って泡を作ります。その泡をシミに乗せてしばらく置き様子を観察します。実に含まれるサポニンという成分が汚れを落とす作用があるそうですよ。 どれが一番シミが落ちたか気になった方はぜひ試してみてください! ワークショップではトチの実や殻、まつぼっくりを使ってリースやキーホルダーを作りました!思い思いにグルーガンでくっつけて可愛らしい作品に仕上げていました。 最後に、トチの実は食べたり汚れを落としたり、工作の材料に使うなど、アイディア次第で様々な活用の可能性があることがわかった講座でした!ちなみにトチの実は大変アクが強いので食用として加工する際はアク抜きはしっかりするようにしてくださいね。 (運営係 A)

園芸講座「寄せ植え講座3」を実施しました。

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開催日 令和4年9月28日 水曜日 13時30分から15時30分 講  師 英国王立園芸協会会員 石井 康子 先生 今年度3回目の寄せ植え講座です。 先生からのアドバイスやお手本を参考に苗を寄せ植えしていきます。キレイに見せるには、高さや広がりなどのバランスがポイントみたいですよ。 今回はベゴニア ラブミー、ラベンダー シルバーサンド、セロシア スマートルック、リシマキアの4種類の花苗で寄せ植えをおこないました。セロシアの深い上品な赤とベゴニアやリシマキア等のピンクや黄緑が色合い鮮やかな寄せ植えになっています。 講座で使われるお花は珍しいのが多く、今回も受講者の方から大好評でした! 次回の11月30日が今年度最後の寄せ植え講座になります。申し込み受付は10月中旬ごろから開始予定です。人気がある講座ですので、当選確率があがる植物園友の会への入会をおススメしております! 参加者の感想 いつも楽しい講座をありがとうございます!石井先生の寄せ植えは珍しい植物に出会えるので嬉しいです。11月にも応募します!! 大変楽しく丁寧に一人ずつチェックして頂いてありがとうございました。素敵なセットで嬉しいです。 石井先生のレッスンはいつもお話が楽しく興味がわくようなポイントをしっかり話してくださり、あっという間に時間がすぎます。  (運営係 A)

ちょっと気になる路傍の花たちNo.35(2022.10.4)地中にも閉鎖花?

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 前号の後半で、花冠を開くことなく自家受粉する閉鎖花について書きました。今号では、さらに驚くべき方法で種子を作り出すツユクサ科のマルバツユクサを紹介します。 大群落をつくる!  マルバツユクサは午前中の早い時間から開花し、お昼には閉じてしまう1日花(実際は半日花?)です。ツユクサそっくりな花ですが、花冠は一回り小さく、葉はやや丸く、縁は波打っています。  受粉方法は前号で述べた①~③に加え、さらに土の中でも閉鎖花をつけるという性質を持っています。  ちなみに、こちらは地上部で見ることができる閉鎖花です。  そこで、一株掘り上げてみました。 写真をご覧ください。   掘り上げた様子  この時期になると、マルバツユクサは土の中で白い茎をのばし、その途中で苞に包まれた閉鎖花を見ることができます。手に触れてみると、硬い塊があり、子房が膨らんで結実していることがわかります。これは除草作業などで地上部を刈られても地下で子孫を残すことができるという生き残り戦略の一つです。  また、土中に伸びる白い茎を地上に出すと、光を浴びて少しづつ緑色に変化し、10日ほどで青い花を咲かせるそうです。  マルバツユクサのたくましい生命力を感じずにはいられません。       【解説員K】

ちょっと気になる路傍の花たちNo.34(2022.10.2) ヤノネボンテンカの秘密?

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 前号の「ちょっと気になる路傍の花たちNo.33」をアップしたのは、2020年5月29日ですから本当に久しぶりです。  今号ではアオイ科のヤノネボンテンカ(矢の根梵天花)をとりあげます。別名の「タカサゴフヨウ」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。  自宅前の河川敷にあるコンクリートの隙間から高さ1.5m程の株が2株咲き誇っています。   南アメリカ原産で常緑の半低木です。花弁は白く、中心部が濃い赤紫をしており、雌しべ の柱頭は飛び出ています。また、花の裏側を見ると、濃い赤い筋が目立っています。    朝咲いて夕方には閉じる1日花ですが、開花期間が長く7月から10月末くらいまで咲き続けます。  さて、本種にはすごい秘密があります。それは受粉方法にあります。  ①日中は昆虫などの力を利用して他家受粉をする。最もポピュラーな受粉方法です。  ②夕方には雌しべが反り返って雄しべの葯まで動き、花粉を取り込んで自家受粉する。    まず、朝7時50分には開花しているのに驚きです。雌しべの柱頭は閉じたままです。   そして、10時55分の時点では柱頭の先が少し開き始めています。   15時頃、柱頭の先端が10個に分かれています。16時20分では分岐した先っぽが雄しべの葯を取り込み、受粉をしています。  完全に閉じたのは18時頃でしたよ。このように、雌しべがおよそ8時間近くかけて受粉するために動いていくというのが何とも不思議です。  ③開花せずに、閉じたまま萼片の中で受粉する閉鎖花をつける。   閉鎖花というのは花冠が開かないで自家受粉してしまう現象のことです。スミレやホトケノザ、タツナミソウ、ミゾソバなどで見ることができます。自家受粉できるので確実に次世代の種子を作ることができますが、弱体遺伝子が引き継がれる危険性もありそうです。  まぁ、最も望ましいのは①の他家受粉ですが、仮に昆虫などが訪れなくても、その保険として②、③の方法で種子を作るというヤノネボンテンカの驚くべき仕組みに感動しました。       【解説員K】