2019年12月11日水曜日

宿存萼(しゅくぞんがく)の話(2019.12.11)




 前回「ハーブ園の果実」ブログでゲットウの実を取り上げて、その特徴として「頭にチョ
コンと宿存萼がついている」と説明したところ、「宿存萼」がわかりにくいとの質問をいた
だきました。そこで【しゅくぞんがく:花が枯れ落ちたあとも残っている萼】という説明を
追加しましたが、あらためて「宿存萼」のことを取り上げてみたいと思います。
 そもそも「萼(がく)」とはなにか?シンプルな説明では「花の最も外側にあって、つぼ
みのときは花の内側を保護するもの」と書かれています。
 最初の写真はゲットウの花が終わった直後の状態です。花は茶色になって枯れ落ちます
が、あとに筒状の萼がしっかりと残っているのがわかります。実が成長しても萼がそのまま
残っている状態が次の写真です。



 同じように実の頭に残った萼が目立つものとして、ハマナス(バラ科)とクチナシ(アカ
ネ科)の例をご覧ください。



 なお、果実が実ったあと果柄(果実を支える柄)側に残った萼は蔕(へた)と呼ばれます。
ロウヤガキのへた
タマゴナスのへた

 また、果実が熟す頃に果柄側に残った萼が色づいて、鳥などに果実の存在をアピールする
役割を果たすものもあります。

クサギ(クマツヅラ科)
オクナ・セルラタ(オクナ科)

 オクナ・セルラタは「ミッキーマウスの木」とも呼ばれて親しまれています。

 最後に、残った萼が花期後に成長して果実を包み込むタイプのものを紹介します。

 夏の風物詩として親しまれているホオズキ(ナス科)です。次の写真は以前観察会用に袋
をはずして撮影したものですが、萼が果実を包み込んでいる状態がわかります。

 萼が果実を包み込むものとしては、実は前回ブログで紹介したローゼルも同様です。

 あらためて調べてみると「宿存萼」にはいろいろな形や役割があることがわかりました
が、他にもいろいろなタイプがあるようです。
 植物にはまだまだ不思議がいっぱいです。                    (解説員)

2019年12月4日水曜日

秋のなごり~ハーブ園の果実(2019.12.4)

暦のうえではまもなく「大雪」。本格的な冬の訪れが間近ですが、ハーブ園では秋のなごりの果実たちをまだ見ることができます。
オレンジ色の丸い実を鈴なりにつけているのはゲットウ【月桃】(ショウガ科)です。頭にチョコンとついているのは宿存萼(しゅくぞんがく:花が枯れ落ちたあとも残っている萼)です。黄色い唇弁に赤い縞模様が入った筒状の花を6月ごろ咲かせます。
葉には芳香性の精油成分がありアロマオイルなどに利用されますが、種子も乾燥させて主に健胃、整腸の薬として利用されます。
黒紫色の艶々とした液果をつけているのはマートル(フトモモ科)です。和名はギンバイカ【銀梅花】、6月ごろ梅の花に似た白い花を咲かせます。糸のように細い雄しべが特徴的な花です。
葉は揉むとユーカリに似た芳香があることから、原産の地中海地方では料理や酒などにハーブとして使われていますが、この黒い液果も果実酒に漬け込む材料として古くから利用されていました。
先がやや尖った艶のある暗赤色の実をつけているのはローゼル(アオイ科)です。実と紹介しましたが、目立っているのは花のあと萼片が果実を包み込んで厚く肥大したもの。熟した萼は多汁質でクエン酸などを多く含み、乾燥させたものがハイビスカスティーの原料になります。短日植物で、10月ごろ径10cmほどの淡いピンク色の花を咲かせます。

皿に萼が山盛りになった写真は、実はタイを訪れた時に街角の屋台で見かけたものです。
タイでは、この萼を煮て作ったジュースは体を冷やす効果があるとしてポピュラーな飲み物の一つで、ジュースを取ったあとも砂糖をまぶして子供のおやつにするそうです。


寒くなってきましたが、ハーブ園のちょっとユニークな果実たちをどうぞご覧ください。 (解説員)

2019年11月27日水曜日

ちいさな大発見!? No.57(2019.11.27)見つけると幸せになる?

 情報館前から水生植物園を左手に見ながら進んでいくと,通路脇で落葉した葉の陰に隠れながら小さな赤紫の花を見ることができます。
どれが花か、わかりますか?

 キジカクシ科のキチジョウソウです。漢字では「吉祥草」と書きます。漢字に「吉」の字がついているように,この花を見つけると幸せが訪れるとか,花が咲くと縁起が良いなどと言われています。
 開花したのは10月30日。およそ1か月ほど前ですが,今が見頃となっています。

 この花の特徴ですが,およそ10cmくらいの花序を伸ばし,下の方から順々に花を咲かせます。
やっと半分が開花!

 ちなみに,根元の方には6本の雄しべと1本の雌しべを持った両性の花をつけます。そして,花序の上の方には雌しべをもたない雄花をつけます。
紫がかった雌しべがある両性花!
 
雄しべだけの雄花!

 どうやら雌しべは退化してなくなったようです。全部両性の花でもよいと思うのですが,どうしてわざわざ雌しべを退化させた雄花を咲かせるのか,不思議です。
 私なりの見解ですが,
 ①キチジョウソウは地下茎を伸ばしながら株を増やしていくので,そこまで実(種)ができなくてもよい。
 ②雄しべの先端の葯が開くころには雌しべ全体が大きく伸びることから,自家受粉を嫌い,虫や風による他家受粉を望んでいる。
 みなさんはどう思われますか。

 今後,受粉した実は12月末から1月にかけて真っ赤なガラス玉のような実を付けます。しかし,こちらも葉に埋もれ,なかなか見つけることが難しいようです。

 正に今が旬ですよ。植物園にお出での際は是非,キチジョウソウの花を見つけてください。
反り返った花弁と立派な雄しべ

【解説員K】

2019年11月25日月曜日

花と実が同居?この木も!(2019.11.25)


 「花と実が同居?」まだ続きます。この写真、右側に赤い実、左側に黄褐色の小さな花が固まってついています。クスノキ科のシロダモ【白だも】です。
 葉はクスノキ科によく見られる三行脈(主脈が3方向に出ている)が目立ち、裏側は灰白色で名前の由来になっています。
葉 表
葉 裏
雌雄異株で、当園では展望台レストラン上の通路から樹林地を見下ろすと雄木とちょっと小ぶりで赤い実をつけている雌木が並んでいるのを見ることができます。花は、黄褐色の小花が散形花序に固まってつきます。花を近くで観察すると雄しべ6本が突き出る雄花と白い柱頭の雌しべが目立つ雌花の違いがわかります。
雄花
雌花
ブログに連続して秋に花と実を同時に見ることができる植物を紹介してきました。開花後およそ1年後に実をつけるという、いわば親子2世代が同居する形ですが、このシロダモの花の上側には来年春に葉を出す先の尖った冬芽もついているので、なんと3世代が同居する形を見ることができます。
 

  シロダモは園内樹林地だけではなく、「小笹団地正門前」バス停から植物園に向かう階段を登り切った左側にも花をびっしり咲かせている姿を見ることができます。
                                                      (解説員)

2019年11月17日日曜日

花と実が同居?ドングリも!(2019.11.17)




















前回ブログ「花と実が同居?」の続編です。この写真、右側にドングリ、左側に花(厳密にいうと花が終わった後の花序)が同居しているのがわかりますか?
 ドングリ(ブナ科の樹木がつくる果実)の仲間で唯一、秋に花を咲かせるシリブカガシ【尻深樫】です。雌雄同株で開花は例年9月ごろですが、花序が集まった中心に長めの雌花序、その周囲にちょっと低めの雄花序が残っているのが確認できます。逆光で見えにくいのですが、ドングリのつき方は次の写真のとおりで、シリブカガシは花を咲かせた翌年秋にに大きく成長します。


 この、変わった時期に花を咲かせるシリブカガシは動物園のマレーグマ舎近くの園路沿いで見ることができます。目印は、名前のとおり尻のところが深くへこんでいるのですぐわかります。探してみてください。
秋も深まってきましたが、お客様から「まだドングリは拾えますか?」とのご質問がよくあります。
 現在おすすめしているのは、「香りの道」温室に向かって左側のマテバシイ【馬刀葉椎】です。
マテバシイは比較的虫がつきにくいので、足元をたんねんに探すと虫の穴がない大きな実をいっぱい拾えます。
ちょっと小粒ですが、シラカシ【白樫】やアラカシ【粗樫】も園内あちこちで見つけることができます。
シラカシ
アラカシ
植物園では秋の楽しみの一つ、ドングリ拾いがまだまだ楽しめます。どうぞお越しください。
                                                    (解説員)



2019年11月15日金曜日

ちいさな大発見!? No.56(2019.11.15)花と実が同居?

 野草園を廻っていると,葉の陰から真っ赤なヤマモモのような実(写真①)が目に留まりました。すぐ隣にはまだ熟していない黄色い実も一緒です。
写真① まさにヤマモモでしょう?

 この時季にヤマモモの実があるわけもなく,よく見るとイチゴノキの実でした。イチゴノキは,イチゴ(バラ科)の名前がついていますが草本ではなく,ヨーロッパ原産の常緑樹でツツジ科の植物です。
 ちなみに,野草園東で見ることができるのは,イチゴノキの矮性種でやや小ぶりなヒメイチゴノキです。

 ところが,実の側にはアセビのような壺型の小さな白い花(写真②③)が,およそ1つの花茎から15~20輪ほどの花を咲かせています。ですから1本の木に花と実が一緒(写真④)についているのです。
写真② アセビかスズランのよう・・・
写真③ 中には雄しべと雌しべが!
写真④ 花と実が同居しています!

 花後に実を付けるのですが、どうやら1年かけて生長するようです。どんぐりで言うところの2年成ということです。
 つまり,写真①や④にあるような赤や黄色の実は昨年の秋に実を結び,少しずつ大きくなりながらそのまま年を越し、緑色から黄、オレンジ色、赤へと変化し成熟してきたものです。
 ちなみに,おいしそうに見えますが,味はまったくしないそうです。
 近づくとかすかな芳香が漂っていましたよ。是非,植物園にお出で下さい。

【解説員K】

2019年10月24日木曜日

ちいさな大発見!? No.55(2019.10.23)アルテルナンテラ?

 植物園ではニシキギやカエデなど,木々の紅葉(黄葉)が少しずつ始まっていますが,エントランスや園内通路を中心に寄せ植えされた大型の鉢やプランターがお客様を迎えてくれます。
写真① 色とりどりの葉がきれいです!

 それらの植物をじっくりと見ていて気付いたことがあります。それは,この時季の寄せ植えに欠かせない斑入りや銀葉、銅葉、黄葉などのカラフルな色彩を放つカラーリーフが多いことです。
 例えば,写真②をご覧ください。赤い葉が色鮮やかなヒユ科のアカバセンニチコウ(赤葉千日紅)です。千日紅(写真③)の名前が付いていますが、同じヒユ科でも別のグループに属します。アカバセンニチコウは別名をレッドフラッシュ,学名はアルテルナンテラ・デンタータと言います。
写真② アカバセンニチコウ(赤葉千日紅)
 
写真③ センニチコウ 花に見えるのは苞です。

 また,別の鉢ではセンニチコウによく似た植物(写真④)が目に留まりました。
 
写真④ センニチコボウ(千日小坊)

 写真の撮り方でしょうか,感じがイマイチですが,センニチコボウ(千日小坊)です。学名をアルテルナンテラ・ポリゲンスと言います。

 一方,花壇に目をやると,みなさんご存知のアキランサス(写真⑤)が色とりどりの競演をしています。
写真⑤ 秋の花壇の主役 アキランサス?

 ちなみに赤い葉のアキランサスはアルテルナンテラ・フィコイデア・アモエナ、黄緑色の方はアルテルナンテラ・フィコイデア・ベットジッキアナと言います。
 つまり,このページで紹介したセンニチコウ以外は,熱帯アメリカ原産の同じ仲間なのです。

 ついでに,アキランサスは花が咲かないと思っている人はいませんか。じっくりと観察してみると,小さな小さな花(写真⑥)を見つけることができますよ。
 
写真⑥ 小さな金平糖を忍ばせたよう・・・

 26,27日は無料開園日となっています。是非,植物園に足を運んでください。

【解説員K】