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ちいさな大発見No.135(2021.6.29)意外と見つかるものです?

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 毎朝の散歩で気になっていた植物がありましたので、ちょっと足を止めて調べてみました。  場所は道路脇のガードレール下。土はほとんどなく、枯草と埃が堆積した場所におよそ15mに渡って白い花が密集して咲いています。もう3年ぐらい前から6月のこの時季に見かけます。 葉は十字対生   名前はサボンソウ(属名:サポナリア)と言い、ヨーロッパや西アジア原産で、ナデシコ科サボンソウ属の多年草です。葉先は尖り、十字対生をしています。     別名をシャボンソウと言い、根や茎、葉に含まれるサポニンは、古くから天然の石鹸として利用されてきました。     英名はソープワートと言います。名前の通り、石鹸草です。ちょうど今、ハーブ園で咲いていますので紹介します。  雄しべの根元から小さな副花冠が!    実際 に葉や茎を切って、水に濡らして揉むと、とても泡立ちます。真に石鹸そのものです。     同じようにサポニン成分を含む植物にムクロジ科のムクロジがあります。  花は6月上旬頃  11月頃の様子   ムクロジは中の黒い種子を取り出すと、手が ベタベタします。その後、水で洗うと、泡立ちがすごいのです。     試しに、ムクロジの実3個分を割って、水の入ったペットボトルに入れ、振ってみると、アット言う間に泡だらけになってしまいました。  すごい泡立ち!     今回、見つけたサボンソウですが、周りに民家などはなく、鳥などが種子を運んできたのかもしれませんが、サボンソウは地下茎で増えると共に、こぼれ種でも増える逞しさをもっています。     みなさんも野草図鑑などを手に、虫の目になって散策をしてみませんか。いろいろと珍しい植物が見つかるかもしれませんよ。  【解説員K】

万葉集で詠われたワスレグサとは?(2021.6.27)

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  ヤブカンゾウ 万葉名わすれぐさ  野草園にヤブカンゾウ【薮萱草】(ユリ科)の八重咲きオレンジ色の花が咲いています。  中国原産ですが我が国には古く渡来したと考えられおり、「史前帰化植物」と呼ばれます。中国ではこの花を身につけると憂いを忘れるといわれていたことから、古くはワスレグサ【忘れ草】と呼ばれ、万葉集に詠まれています。 「忘れ草 我が紐につく香久山(かぐやま)の 古(ふ)りにし里を 忘れむがため」                           (大伴旅人 巻3-334)  なおワスレグサとは、このヤブカンゾウをはじめノカンゾウやキスゲ類などユリ科ワスレグサ属Hemerocallisの総称と考えられています。  ということで、あらためて「万葉集」とは約千三百年前に作られた我が国最古の歌集ですが、集められた約四千五百首のうち植物を詠んだ歌、あるいは植物と関係のある歌(枕詞など)は約二千首、取り上げられている植物は約百七十種類といわれており、万葉人にとって植物が身近な存在だったことがうかがえます。  初夏に園内で見られる植物で、万葉集で詠われたものを紹介します。 アジサイ 万葉名あぢさゐ 「あぢさゐの 八重咲くごとく 八つ代にを いませ我が背古(せこ) 見つつ偲(しの)はゆ」                             (橘諸兄 巻20-4448)   和名は「集まった藍色の花」を意味する「あづさい(集真藍)」がなまったものといわれています。 ネムノキ 万葉名ねぶ 「昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓木(ねぶ)の花 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ」                              (紀郎女 巻8-1461)  古名のネブは、日が暮れると葉が合わさって閉じてしまう様子を「眠る」に例えたものといわれています。  万葉集には野草も多く詠われています。 ツユクサ 万葉名つきくさ 「朝(あした)咲き 夕(ゆうへ)には消(け)ぬる月草(つきくさ)の     消(け)ぬべき恋も 我(あれ)はするかも」(読み人知らず 巻10-2291)  古くは染色に用いられたことからツキクサと呼ばれていましたが、万葉集では染めた色が変わりやすいことから、多くは「移ろふ(心変わり)」の意味に用いられています。 ヒルガオ 万葉名かほばな 「高円(たかまど

ちいさな大発見No.134(2021.6.24)ついに見つけました!

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 毎朝、愛犬と散歩していると、草丈20~30cmほどの螺旋状のピンクの花をよく見かけるようになってきました。 ラン科のネジバナ(別名:モジズリ)です。 拡大すると、真にラン!    園内でも水生植物園に植えられた10株ほどがピンク色の花を咲かせています。また、自然状態では、下草刈りで芽吹きが遅れた梅園でもあちらこちらでかわいい花を見ることができます。    そして、今年は温室手前の芝地で大群生しているネジバナに出合いました。通路からはやや見えにくいのですが、それは見事です。 写真は一部    先ず特徴ですが、3つあります。    〇ラン科の多年草で、夏葉と冬葉を交互に出し、冬でもロゼット状に冬葉を残します。  〇名前の通りネジバナには左巻き、右巻きがあり、ほぼ1対1の割合で存在します。   中には螺旋状にならないものもあります。 左は右巻き,右は左巻き!     〇種子は小さく、栄養を蓄える胚乳を持たないため、単独では発芽できません。    そこで、土中の菌類の力を借りて発芽し、その菌類を根の中に取り込んで菌根をつくり、菌類がつくる栄養分を吸収して生長します。      ところで、白花のネジバナがあることを知人から聞き、園内はもちろん、この2週間は朝夕の散歩で歩き回って、ついに1株を発見しました。  シロバナネジバナ   早速、水生植物園に展示しましたのでご来園の際は見てください。  余談ですが、その菌根づくりに関わる特定の菌類は芝生に多く存在するため、ネジバナが芝生などの草地に多いのです。ですから、鉢植えにするとうまく育たなかったりするのは、ネジバナと共生関係にある特定の菌類が、鉢の中でうまく生育していないことが考えられます。    ちいさな大発見No.44でも ネジバナについて 紹介していますので、そちらも読んで下さい。  【解説員K】

バスから見えるチョット気になる花~初夏編(2021.6.17)

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 勤務地の植物園には毎日バスで通勤しています。城南線から浄水通りに入って「動物園西門前」T字交差点の手前が南公園樹林地の林縁にあたるので、季節ごとに気になる花が車窓から見えます。この時期、大きく広げた枝葉の頂部にクリーム色の花が穂状についているのが目に入りました。  我が国では本州の岩手・秋田県以南の山野に普通に自生しているアカメガシワ【赤芽柏】(トウダイグサ科)の花です。繁殖力が旺盛な落葉高木で、市街地のちょっとした空き地などにもよく生えています。  この木は雌雄異株でトップで紹介したクリーム色の花は雄花です。雄しべが多数ついて球状に開きます。  円錐形の花序につく雌花はよく見ると柱頭が3つに分かれています。  なお、和名の「赤芽」は濃い紅色の新葉にちなんでいますが、実はこの紅色は葉の表面に密生している星状毛の色で幼い葉の組織を守る役目があるとされており、葉が成長するにつれて目立たなくなります。  次に道路脇の草地の中で、大きく広げた枝葉に突き出ている穂状の白っぽい花序が目につきました。  多年生草本のヨウシュヤマゴボウ【洋種山牛蒡】(ヤマゴボウ科)です。北アメリカ原産ですが明治年間の初めに我が国に渡来して、現在では全国で普通に見られる帰化植物です。  花序をよく見てみると、白っぽい花弁状の萼(がく)が5個ついています。花弁はありません。  花序には早くも緑色の果実がついていました。  この果実は、秋に黒紫色に熟して垂れ下がります。  また樹林地の常緑樹にびっしりと白い小さな花がついています。  近くに寄って見てみると直径2cmほどの白い花びらが5枚スクリュー状に咲いています。つる性木本のテイカカズラ【定家蔓】(キョウチクトウ科)がびっしりと絡んで花を咲かせているのです。  花には芳香があるので、植物園内「香りの路」にも棚に仕立てて展示しています。和名は鎌倉時代の歌人藤原定家にちなんだ謡曲の中のエピソードから名づけられたといわれています。  現在植物園は残念ながら休園中ですが、今回取り上げた植物は市街地の道路際や空き地に普通に見られますので、皆様のお宅の周囲でもご覧になってください。                                  (解説員)

ちいさな大発見No.133(2021.6.11)近くて遠い?

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 今回取り上げる植物はドクダミとハンゲショウです。この2つの植物は同じドクダミ科なのですが、似ているようであまり似ていません。  庭や畑の嫌われ者で、地下茎は深く、抜いても抜いても根絶が困難、しかも臭いが強烈なドクダミ。名前からして毒草と思われがちですが、本来の意味はと言うと、毒を抑えるという意味から毒を矯(た)める、毒矯め、毒矯みとなまってドクダミになったと言われています。  現にドクダミ茶はよく飲まれていますし、薬草として多くの効能があることが知られ、別名を十薬(重薬)と呼ばれています。  開花と共に中央の花穂が伸びる  ところで、ドクダミには花弁がありません。4枚の白い花弁のように見えるのは、葉が変化した総苞片です。そして、中心部にある花穂は多くの小花の集合体です。  3裂している白い雌しべ  1つの小花には先っぽが3裂した雌しべ1本と3本の雄しべがあります。しかし、雄しべの葯には花粉はなく、受粉せずに種子ができる単為生殖をします。ですから、虫を誘引する必要はまったくありません。  こちらはヤエドクダミです。一般に八重咲きと言うと、蕊が花弁化することが多いようですが、こちらは花穂の途中から白い苞が伸び、苞と苞の間には蕊が確認できます。  ヤエドクダミ  次は同じドクダミ科のハンゲショウ(半夏生、半化粧)です。こちらもドクダミと同じで花弁はなく、1本の花穂に小花がたくさん集まっています。  開花が進むと、花穂が立ち上がる   5裂した雌しべと8つの雄しべ  ハンゲショウの特徴は、花穂のすぐ腋にある葉の一部を白く変化させ、受粉をしてくれる虫たちにアピールすることです。  葉が白くなるのは花穂の根元にある1枚の葉と決まっているようです。 徐々に白化が進む  さて、葉を白くすると、その分、植物にとっては光合成ができなくなるというリスクがあります。それでも、白化するのは、目立たない花をアピールし、虫たちに受粉してほしいからです。ちなみに、葉が白くなるのは葉緑素が出ていないことが原因です。  ところで、白化した葉の裏はどうなっているのでしょう。  葉裏の様子  葉裏に変化はなく、緑色のままでした。このことから、カタシロソウ(片白草)と別名があります。  受粉が終わり、花穂が老いてくると、白化した葉は徐々に緑色に戻っていくのです。  すごい戦略ですね。 【解説員K】

ちいさな大発見No.132(2021.6.8)もう一つのヒペリカム!

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 前号のちいさな大発見No.131号からの続きです。  こちらも芝生広場に置かれたうさぎのオブジェです。   さて、前号ではヒペリカムの代表的な品種を6種類紹介しました。  今号では、今、ハーブ園で咲いているヒペリカムの仲間を1つ紹介します。花はキンシバイよりもさらに小さく、花径1.5~2cm程で、名前はセントジョーンズワート、学名はヒペリクム・ペルフォラトゥムです。  和名は「セイヨウオトギリソウ」  セントジョーンズワートとは何とも植物名らしからぬ名前ですが、聖ヨハネの麦芽汁と訳され、一般的には聖ヨハネの薬草と言われています。聖ヨハネの誕生日とされる6月24日に収穫される風習があったことにより、その名がついたメディカルハーブです。何と、古代ギリシャのヒポテラクスの文献にも掲載されているとのこと。  そこで、セントジョーンズワートをネットで検索してみると、多くのサプリメントが紹介されており、医学的にも抗うつの治療薬としての研究が進んでいるようです。  何と、レンガの周りにはこぼれ種で育った苗がすくすくと生長していました。  実生苗 【解説員K】

上品な和名~ムラサキシキブ(2021.6.4)

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 郷土樹木園の中に、葉腋から集散花序を出して淡い紫色の花が咲いています。クマツヅラ科のムラサキシキブ【紫式部】です。花冠の長さ5mmほどの小さい花は、筒状花で先は4裂、黄色い葯(やく)をつけた雄しべが4本と雌しべの花柱が長く突き出ています。  この上品な和名は、もちろん平安時代に「源氏物語」を著した女流作家「紫式部」にちなんだもので、淡紫色の花もさることながら、光沢があって秋に濃い紫色に熟す球形の実から連想されて名付けられたといわれています。    ちなみに、庭木として広く普及して皆様に親しまれているのは、同科同属でやや小ぶりながら実をびっしりとつけるコムラサキ【小紫】ではないかと思います。 コムラサキの実  コムラサキとムラサキシキブはよく似ていますが、コムラサキは果実が葉腋からやや離れた場所につくのに対し、ムラサキシキブは葉腋近くにつきます。 ムラサキシキブの実  実のつく位置の違いとともに、ムラサキシキブのほうがまばらなつき方をしているのがわかりますか?また写真では葉縁がわかりにくいのですが、コムラサキは鋸歯が上半部だけなのに対し、ムラサキシキブの鋸歯はほぼ全周にあることも見分けのポイントです。  なお秋にはコムラサキの白花種であるシラタマコシキブ【白玉小式部】も園内で見ることもできます。(別名シロミノコムラサキ)  余談ですが、和名語源を調べていると「紫敷実(むらさきしきみ)の転とか。」と記された資料がありました。(図説草木名彙辞典 1991 柏書房)この元々の和名であるムラサキシキミを、江戸時代の植木屋さんが洒落たのか、あるいはイメージアップして販売促進を企んだのか、ムラサキシキブと改名して売り出したというおもしろい説があります。  秋に熟す紫色の実を楽しみにしてください。             (解説員)

ちいさな大発見No.131(2021.6.1)ヒペリカムの仲間たち

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 緊急事態宣言が20日まで延長され、芝生広場に置かれたウサギのオブジェも寂し気です。   今の時季、オトギリソウ科オトギリソウ属の黄色い花たちが風に揺れて元気に咲いていますので紹介します。    1つめはキンシバイ(ヒペリカム・パツラム)です。中国原産で葉は対生、やや枝垂れます。花径は3~4cmで、やや小ぶりで雄しべも短めです。   2つめはキンシバイの園芸品種で地中海原産のヒペリカム・ヒドコートです。大輪キンシバイと言われているように、花径は5~6cmあります。本種は葉がほぼ十字対生になっています。   3つ目は雄しべが長い中国原産のビヨウヤナギ(ヒペリカム・モノギナム)です。葉は十字対生で花柱が突き出ています。雄しべが少しカールしています。   このビヨウヤナギにそっくりなのが西洋キンシバイの別名があるヒペリカム・カルキナムです。雄しべはまっすぐで先っぽの葯がやや赤みを帯びます。   次は花よりも葉を楽しむヒペリカム・ゴールドフォームです。ヒペリカム・カリキナムの枝替わりから作出されたそうです。秋には紅葉します。花数は少ないのですが、花は葯の色までカリキナムにそっくりです。   最後はコボウズオトギリの別名があるヒペリカム:アンドロサエマムです。花後に赤やピンク、白などに色づいた果実が切り花として売られています。  蕾と果実の区別がつきにくいのですが、次の写真で分かるかと思いますが、3つに分かれた雌しべの先っぽが飛び出ているのが果実です。  中央が果実、他は蕾 【解説員K】