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ちいさな大発見No.148(2021.10.30)やっと咲きました?

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 10月に入った頃から「キンモクセイの花が咲かない!」との声を、市民の皆様から多く聞きました。園内のキンモクセイも固い蕾のままでしたが、やっと今週初めから微かに香りがするようになり、27日(水)にやっと開花しました。  開化とともに色が濃く…  福岡市植物園の過去14年間の開花データをみると、すべて9月25日から10月6日の間に集中しています。昨年は9月26日の開花でしたから1カ月以上遅い開花となりました。  それでは、なぜ開花が遅れたのか、それは気温が影響しているようです。つまり、9~10月上旬の高温により茎や葉を育てる栄養成長が促進され、花をつける生殖成長を抑制したことが主な原因のようです。  ただし、その副産物として、ここ数年はキンモクセイの2度咲きや開花期間の長期化などが言われています。   それではモクセイの仲間を紹介します。  まず、中国原産のキンモクセイ(金木犀)はモクセイ科の常緑樹で雌雄異株ですが、日本には雄木しかありません。ですから実はつきません。  一方、同属のウスギモクセイ(薄黄木犀)は雄株、雌株共に中国から入ってきたため、結実します。園内に4本植栽されていますが、そのうち3本がもう満開ですよ。 雌しべの両脇に雄しべ(両性花)  ところで、キンモクセイもウスギモクセイも、実は原種であるギンモクセイ(銀木犀)の変種です。   日本庭園横に2本ありますが、高木に日光を遮られ、わずかに開花しています。    キンモクセイは花色と香りですぐにわかりますが、ギンモクセイとウスギモクセイは共に微香、花色も白とクリーム色なので一見すると区別しにくいようです。  また、同属でヒイラギモクセイ(柊木犀)も今、蕾をつけていましたので紹介します。こちらはギンモクセイとヒイラギの交雑種です。花は白ですが、葉に大きな鋸歯があるのですぐわかります。  葉のギザギザ(鋸歯)がめだつ!  モクセイの仲間を探して園内をゆっくり歩いてみませんか。 【解説員K】

園芸講座「ボタニカルアート入門講座」を実施しました。

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開催日 令和3年10月26日 火曜日 13時30分から15時30分 講 師 日本植物画倶楽部会員・ふくおか植物画会会長 細川 武子 先生 内 容  4回目の講座では前回のコスモスの仕上げをし、見頃を迎えているバラを描きました。初めにバラについて座学を行った後、下絵~彩色を行います。花びらの形状や質感が複雑なバラを皆さん集中して描かれていました。 (運営係  A)

甘い香りの正体は?(2021.10.28)

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  この時期、水生植物園の芝生広場寄り園路や花木園のアジサイの横を下っていく園路を歩いていると、どこからか甘い香りが漂ってきます。「焦げた醤油?」「砂糖醤油?」といった香りです。特に早朝、それも雨上がりの時などが強く香ります。  実は、この甘い香りの正体は、カツラ【桂】(カツラ科)の落ち葉から出ているものなんです。カツラは北海道から九州まで広く分布する落葉樹で、この香りについては古くから全国的に知られていたので、「こーのき(香の木)」、「しょーゆのき(醤油の木)、「まっこのき(抹香の木)」などと各地で呼ばれていたそうです。(日本植物方言集成:八坂書房2001)私はこの香りを嗅ぐと「放生会(ほうじょうや)の綿菓子の香り」を思い出してしまいます。  さて、この香りの正体はというと、葉の中に含まれる「マルトール(maltol)」という天然有機化合物なんです。おもしろいのは、木についている緑色の葉や黄葉して落ちたばかりの落葉を揉んでも香りはなく、トップの写真のように黄葉の時期に落葉のマットができた状態になって香りが出てきます。ちなみに、マルトールという成分名は、焦がした麦芽(maltモルト)に由来するとのことです。  また、この時期はカツラの葉の美しい黄葉が楽しめますが、落ちた葉を観察してみるといろいろな黄葉があることがわかります。  すっかり黄色になったものから緑色が残っているものまでありますが、これは、実は秋になったら葉が黄色くなるしくみを表しています。  モミジなど赤くなるほうの紅葉は、秋になると葉の中に「アントシアニン」という赤色色素が蓄積されて変化しますが、黄色くなるほうの黄葉は、秋になると葉の中の緑色色素の「クロロフィル」が分解されて、もともと葉の中にあった黄色色素の「カロテノイド」が現れて変化します。紅葉は「アントシアニン」の足し算、黄葉は「クロロフィル」の引き算と覚えてください。  春はハート形の葉の新緑が鮮やかです。 花(これは雌花です)は地味ですが、ミニバナナのようなおもしろい実をつけます。 四季折々にいろいろな表情を見せるカツラをどうぞお楽しみください。                                   (解説員)

ちいさな大発見No.147(2021.10.27)ベゴニアのヒミツ?!

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  一年を通して室温20度を維持しているベゴニア室では、年間を通して色とりどりのベゴニアが咲いています。   ベゴニア室の様子  南米アンデス山系の熱帯高地に自生するベゴニアはシュウカイドウ科に属し、大きくは木立性、根茎性、球根性の3つに分けられます。  ここでは、ベゴニアの秘密について解説します。  1つめは花についてです。写真を見てください。   雌花(左)と雄花(右)  ベゴニアは雌雄異花と言って、一つの株に八重咲きの雄花と一重咲きの雌花を咲かせます。通常、豪華な雄花が咲き、その隣に一回り小さな雌花が咲きます。雄花の両隣に雌花を付ける場合もあります。  ちなみに、雄花の八重咲きは雄しべが花弁化したものです。一方、雌花には雄しべがないので、一重咲きにしかなりません。  秘密の2つめは、雌花の裏を見ると、種子になる子房の膨らみ(写真上 左)がありますが、雄花にはありません。   両脇が雌花の子房   雄花(右)には子房がない  3つめの秘密は次の写真にあります。  これはもちろん蕾ですが、2枚貝のようなガクに包まれています。 2枚のガクも色づいて  開花と共に中から花弁が出てきますが、このガクも花弁と同じ色になり花弁の役目をするのです。  4つめは葉についてです。   葉にはいろいろなタイプがありますが、総じて左右非対称、大小2枚の葉が出ます。そして、その中心から花茎が伸びてきます。これは日光をたっぷりと浴びるための工夫です。  5つめは本園温室の秘密です。秋になって日が短くなると、休眠体制に入って花を咲かせなくなります。そこで、秋以降もライトを照射するなどして、日長時間を12時間以上保つことで、年中、花を見ることができるのです。  最後に花壇などで見られる一般的なベゴニアを紹介します。  ブラジル原産で四季咲きベゴニアのセンパフローレンスです。木立性ベゴニアの仲間の1つです。  植物園で秋の一日をゆっくりと過ごしてみませんか。 【解説員K】

ネコ好きな人に・・オススメ!(2021.10.22)

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 ただ今温室入口階段前におもしろい鉢植えを展示しています。白色で筒状になった唇形花から雄しべと雌しべが突き出て、上向きに反った形がまるで猫のひげを思わせる、その名もずばりネコノヒゲ【猫の髭】(シソ科)です。インド、マレーシア原産の多年草ですが、耐寒性が低いので我が国では一年草として扱われています。マレー語ではクミス・クチン(Kumis髭+ Kuching猫)という名前で呼ばれています。ちなみに東マレーシアにはクチンという都市がありますが「猫の町」として有名ですね。  ということで、ネコ好きな人におすすめの園内で見られるネコにちなんだ植物をご紹介しましょう。  この3裂している葉はネコアシ【猫足】と呼ばれています。どうです、似ていますか?  これは、実は薬草として知られているゲンノショウコ【現の証拠】(フウロソウ科)の葉で、ネコアシはその別名です。 「日本植物方言集成」(2001八坂書房)によると、結構全国的にこの別名で呼ばれているそうです。ちなみにゲンノショウコの別名では、イシャイラズとかミコシグサなどもよく呼ばれています。  次は茎の3つに分かれた先端に注目してください。当園では展望台や温室中庭の外壁で見ることができるネコノツメ【猫の爪】(ノウゼンカズラ科)です。先端の爪は小葉が変化したもので、和名はまさにそのままですね。この爪を外壁に引っ掛けてつるを這わせていきます。中南米原産のつる植物で、耐寒性があるので我が国の中部以西の暖地なら良く戸外で生育します。漏斗形の黄色い花を5月頃咲かせます。  髭や足、爪などネコの体の特徴になぞらえた和名の植物を見てきましたが、形が似ているということでは、ずばり、ネコヤナギ【猫柳】(ヤナギ科)が一番ではないでしょうか。  3月頃春の訪れを真っ先に知らせてくれますが、ふかふかの花穂がネコの尻尾にそっくりです。(写真は園芸種のピンクネコヤナギ)  いろいろな植物にネコにちなんだ和名がつけられているのは、ネコが古くから人間と暮らしてきて、それだけ身近な存在だということなのでしょう。                                   (解説員)  

ちいさな大発見No.146(2021.10.20)コスモスの仲間part3?

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  市民花壇や芝生広場で撮った次の写真をご覧ください。  花径3~4cmの???  黄色いコスモス似の植物が風に揺れています。  名前はキク科のウインターコスモス、本種はその園芸種でイエローキューピットと言います。5枚の舌状花の先に白い縁取りが入り、鮮やかな黄色へのグラデーションがとても美しい園芸種です。  イエローキューピット  今回、本種について調べていて驚いたことがあります。名前こそコスモスが付いていますが、NO.144号、145号で紹介したコスモス属の植物ではなく、何とセンダングサ属なのです。  別名もキクザキセンダングサです。  センダングサ属というと、アメリカセンダングサやコセンダングサが外来種として河原や空き地に自生している野草です。所謂、くっつき虫の仲間です。  それらの近縁種というわけですから、本当にびっくりしました。  アメリカセンダングサ   コセンダングサ   コセンダングサの舌状花?  コセンダングサやアメリカセンダングサには花弁状の舌状花はないのですが、たまに、舌状花らしきものが見られる個体もあるようです。(上の写真参照)  そして、やっと見つけたのが、シロノセンダングサです。  センダングサやシロノセンダングサには5枚の舌状花があり、ウインターコスモスにとてもよく似ています。冒頭の写真と比べてみてください。  センダングサの仲間の写真は南区で撮影しています。 【解説員K】

ちいさな大発見No.145(2021.10.16)コスモスの仲間part2!

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 日本で栽培されているコスモスの仲間は前号で紹介したオオハルシャギクと、キバナコスモス、チョコレートコスモスの3種類です。これらは同じコスモス属の近縁種ということになります。  そこで、今号ではキバナコスモスとチョコレートコスモスについて紹介します。  まず、キバナコスモスですが、メキシコ原産でオオハルシャギクよりも葉幅が広く、夏の暑さにも強く、何より短日性があまりありません。   また、こぼれ種で勝手に増え、空き地や河原などでもよく見かけます。  キバナコスモスと言っても、オレンジ色が圧倒的に多く、たまに名の通り、黄花種も見ることができます。  最近では品種改良が進み、赤花系や八重咲種もつくられています。それは次で紹介するチョコレートコスモスとの交配により作出されたそうです。こちらは市民花壇に植栽されています。   園芸種のキバナコスモス  なお、前号で紹介した黄色いコスモスの作出には何十年も時間を要したとのことですが、もしキバナコスモスとオオハルシャギクが交配できたならもっと早い時期につくられはずです。しかしながら両者は同属別種のため交配できないのです。  次は、同じくメキシコ原産のチョコレートコスモスです。チョコレートのような香りがするところから名前が付けられたのですが、一般種はほとんど香りがなく、チョコモカなどの園芸種がほのかに香るようです。  また、オオハルシャギクやキバナコスモスは1年草ですが、本種は多年草で球根(根茎)植物です。花は不稔性のため、種を付けません。  いよいよ来週から気温が下がり、本格的な秋の到来のようです。都心のオアシス(?)である福岡市植物園にぜひお出で下さい。 【解説員K】

ちいさな大発見No.144(2021.10.15)風に揺れて・・・?

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  植物園のゲートをくぐると、最初に目に入ってくるのが色とりどりのコスモスです。今号から3回にわたり、コスモス関連について紹介します。   コスモスは秋の風物詩、みなさん、コスモスは大好きなのではないでしょうか。  さて、コスモスは日が短くなると花芽をつける短日植物ですから、夏に種まきをし、秋に咲く性質を持っています。ですから、秋桜という漢字を充てています。  ところが、最近は品種改良が進み、日長に影響されない春蒔きの早世品種が主流になりつつあります。  それでは、植物園に植えている7種類のコスモスを紹介します。  まず、草丈の低い矮性種のソナタです。花径約7cmの巨大輪。ガッチリした草姿で、開花期も長く、濃い赤紫やピンク、白があります。本園では最前列に植栽されています。   次はアメリカで作出されたセンセーションです。花径約8~10cmの超巨大輪。春に種まきをすれば初夏から開花が楽しめる早咲き種で、白やピンク、赤などがあります。2枚目はセンセーション・ラディアンスです。   そして、赤からピンク地に白の絞りや覆輪がさまざまに入るあかつきです。    4つ目はあかつきによく似ていますが、淡いピンクに濃いピンクで縁取りをしたような花びらをしているピコティーです。  最後は玉川大学で作出されたキャンパスシリーズの3種です。まず、世界初の黄色いコスモス、イエローガーデンの改良種であるイエローキャンパスです。   そして、イエローキャンパスの改良途中に偶然できたものが、ピンクに黄色が重なったオレンジキャンパスです。オレンジと言っても、ちょっとくすんだピンク色をしています。   最後はクリムソンキャンパスです。当初はイエロークリムゾンキャンパスと言っており、明るい赤色で、若干青みを含んで紫がかっていると言われています。  キャンパスシリーズは、いちばん最後に開花が始まりました。これら7種類のコスモスが風に揺れ、見事な花畑をつくりだしています。フォトスポットも用意されていますので、是非、お出で下さい。 【解説員K】