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ちいさな大発見!? No.16(2018.12.28)ソバ

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 出勤中,植物園近くの道路脇で風に揺れる白い花が目に留まりました。(写真①) (写真①)  「今頃,何が咲いているのだろう?」と思い,まじまじと観察すると,高さは20~30cm,直径1cmにも満たない小さな5弁花が密集し,ざっと10株ほどが咲いていました。  早速調べてみると,それは何と「ソバ」の花(写真②)でした。 写真②  場所が場所だけに自然に咲くはずもなく,誰かが種を蒔いたのか,もしくは種を捨てたのかもしれません。  ところで,白い5枚の花弁は,実は萼が変化したものです。花弁は退化してありません。雄しべは8本,先っぽが3つに裂ける雌しべが1本です。(写真③) 写真③  おもしろいのは,雄しべよりも雌しべのほうが長い長柱花と,逆に雌しべのほうが短い短柱花があるということです。そして,一本一本のソバの花はそのどちらかの花を有し,同じ形の花同士では受精できないのです。当然,ミツバチや蝶による受粉が必要になります。  ちなみに写真③は雌しべの方が短い短柱花のようです。  ソバは種を蒔いてから割と短い時間で開花し結実するそうです。実は黒っぽい三角形をしていますが,中は白く,これがそば粉の原料になります。  31日は,年越しそばを食べる方も多いと思います。ソバの花を是非思い出しながらゆく年くる年をお過ごしください。 【解説員K】

ちいさな大発見!?No.15(2018.12.26)トウワタ

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 この時期,野草園では花木の剪定が行われ,とってもスッキリと整理された中,6月上旬から開花し,見頃の時期が4ヵ月以上も続いた「トウワタ(写真①)」が実をつけ,風で綿毛を飛ばしていました。 写真① 7月31日撮影  その中に1本だけ,大きな岩の中から咲いているトウワタ(写真②)を見つけました。 写真②  岩の隙間も目視ではほとんど確認できない状態で,根もまったく見えず,岩の中から茎(写真③)が伸びています。よくこんなところからでてきたものだと感心しました。 写真③  その生命力のたくましさ、ド根性に感激しています。綿毛が風で飛ばされ着床した場所がこの岩の上だったのでしょうが,発芽から開花,結実と,現在に至るまで,本当にわずかな土や水、養分などで生きてきたのだと思います。  そういえば,水生植物園でも,クロガネモチが,岩の割れ目から直径2cm,高さ1.5mほどの木(写真④)になって芽吹いているのを見つけました。近くにはクロガネモチの木は見当たりませんので,鳥が食べた実から芽吹いたのだと思います。 写真④ 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.14(2018.12.24)ポインセチア

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 今日はクリスマスイブ。  クリスマスを象徴する植物として,トウダイグサ科常緑性低木の「ポインセチア」が有名です。メキシコ等の中南米が原産で,原地では「ノーチェ・ブエナ(聖夜)」と呼ばれています。  ここ情報館1階にも,ポインセチアの鉢(写真①)がいくつも置かれています。 写真①    ポインセチアの赤く色付いた花に見える部分は苞とよばれ,葉が変化したものです。その中央に小さく黄色に集まった部分が花(写真②)になります。花が小さく地味なため,苞が赤くなって虫を呼び寄せているものと思われます。 写真②    ところで,写真③をご覧ください。  これは温室で撮影したものです。これもポンセチアです。高さは2~3m程あり,種本来の生育環境ではこんなに立派な木になるのです。この時期に出回る植物なので,寒さに強いのではと思っていましたが,実は熱帯の植物なのですね。 写真③  本来の姿に近いポインセチアを見に植物園においで下さい。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.13(2018.12.21)ユズリハ

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 先日,植物園主催講座の準備のために「ユズリハ」の葉が必要になり,庭木園にあるユズリハの枝を数本切りました。(写真①) 写真①  話は変わります。卒業直前の6年国語教材に河合酔茗の「ゆずり葉」という詩が以前,教科書に載っていました。冒頭の一部を紹介します。  子供たちよ。  これはゆずり葉の木です。  このゆずり葉は  新しい葉が出来ると  入り代わってふるい葉が落ちてしまうのです。  こんなに厚い葉  こんなに大きい葉でも  新しい葉が出来ると無造作に落ちる  新しい葉にいのちをゆずって  この詩にあるように,春に若葉が生えそろったら古い葉が一斉に落ちてしまうことから「ユズリハ(譲葉)」の名前がつけられました。その様子を、親が子を育て家が絶えることなく代々続いていくことから縁起の良いものされ,お正月などの飾りものに添えられてきました。  ところで,私が知っている「ユズリハ」は写真②です。これはモデル庭園で撮ったものですが,写真①との違いがお分かりでしょうか。 写真②  そうです,葉柄(葉のつけ根)の部分が写真①は赤くないのです。(写真③) 写真③  それで分かったのですが,写真①は「アオジクユズリハ」と言って,葉柄の部分が赤くならない種類だったのです。  他にも庭木園のユズリハの横に「ヒメユズリハ」が植えられていますが,こちらは,葉柄の部分がほんのりと赤くなっていましたが,サイズはかなり小さめです。(写真④) 写真④ いちばん下が「ヒメユズリハ」 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.12(2018.12.18)サネカズラ

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 温室南側にあるランの庭の片隅に,たくさんの小さな果実(写真①)がひとかたまりの真っ赤な球状になって枝からぶら下がっています。中には赤い実に混ざって緑っぽい実(写真②)もあります。実は光沢があって,とてもおいしそうです。 写真① 写真②  これらは,常緑のつる性植物でマツブサ科の「サネカズラ」の実です。実(サネ)が美しい葛(カズラ)という意味です。別名の「ビナンカズラ(美男葛)」は、かつて武士がツルに含まれる粘液を整髪料として使っていたことに由来しているとか。  基本的には雌雄異株ですが,たまに同株のものもあるそうです。9月の花の時期には,雄花と雌花を別々の場所に咲かせます。ちなみに,花弁はどちらも淡い黄色ですが,中心部のしべが,雄花は赤い色(写真③)をしており,一方の雌花のしべは淡い緑色です。(残念ですが,雌花の写真はありません) 写真③「雄花の様子」9月4日撮影  花の時期はアッという間ですが,実の時期が長いので,生長するにつれて色の変化を楽しむことが出来ます。 ちなみに大変おいしそうに見えますが,酸味が強く甘みはまったくないそうです。時間をつくって,植物園に見に来ませんか。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.11(2018.12.14)シキミア,ミヤマシキミ

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 少し前に針葉樹園花壇の植え替えが行われました。  その中にたった1株だけ「シキミア」(写真①)を見つけました。ヨーロッパでは「スキミー」と呼ばれ,とても人気がある植物です。 写真①「シキミア」 シキミアはミカン科ミヤマシキミ属で学名を「Skimmia japonica」と言います。japonica がついているということは・・・?  シキミアは,日本原産で常緑低木の「ミヤマシキミ」がオランダで品種改良された園芸品種です。温室前花壇にあるミヤマシキミは,この時季,大きな赤い実(写真②)をたくさんつけています。 写真②「ミヤマシキミ」 ミヤマシキミの実は、正月の飾り花としても使われ,センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)より実が大きいためオクリョウ(億両)という呼び名をされることもあります。しかも,よく見ると,赤い実の側で小さな蕾が同居(写真③)しています。                                               写真③「蕾と実が同居するミヤマシキミ」  ちなみに,3月上旬頃の開花期の写真が④です。ミカン科と言うくらいですから,葉っぱをちぎると,ミカンのにおいがしますよ。 写真④「開花期のミヤマシキミ」  さて,針葉樹園花壇で見つけたシキミアの話に戻りますが,シキミアは雌雄異株ですから,1株では実をつけません。しかし,蕾の期間(3~5ヶ月)がとても長く,春と秋の2回咲く2季咲です。ちなみに市場に出ているシキミアは,ほとんどが雄株だそうです。 【解説員K】

早くも新春の雰囲気(2018.12.13)

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  センリョウ 「献歳植物」(けんさいしょくぶつ)という言葉をご存知でしょうか?  新春を祝う縁起の良い植物のことで「瑞祥植物」(ずいしょうしょくぶつ)とも呼ばれます。なかでも親しまれているのは常緑樹で美しい赤色の実をつけるセンリョウなどの低木類ですが、当園内では歳末を前に野草園の一角に揃って実をつけています。  葉の上側に実をつけているのはセンリョウ【千両】(センリョウ科)です。葉には光沢があり対生です。 マンリョウ 葉の下側に実をつけているのはマンリョウ【万両】(ヤブコウジ科)です。葉の縁は波状の鋸歯で互生です。 ヤブコウジ マンリョウと同じく葉の下側に実をつけているのはヤブコウジ【薮柑子】(ヤブコウジ科)です。センリョウ、マンリョウより小柄なので十両と呼ばれます。  我が国では古くから、これらにカラタチバナ(百両)とアリドオシ(一両)を加えて縁起物として商売繁盛などの願いを託してきました。  また、すぐ横には「難を転じる」として厄除けの縁起物であるナンテン【南天】(メギ科)もびっしりと赤い実をつけています。 ナンテン 野草園でこれらの献歳植物を見ると、早くも新春の雰囲気が感じられるようです。暖冬傾向から一気に本格的な冬が訪れてきましたが、暖かくして植物園にお越しください。  なお新年1月2日からは、緑の情報館1階で献歳植物や干支にちなんだ植物を紹介する「新春植物展」を開催します。どうぞお楽しみに!                                                             (解説員) 

ちいさな大発見!? No.10(2018.12.11)ムクロジの実

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 バラ園の南側の斜面を歩いていると,何やら球体の実(写真①)らしきものが落ちていました。目を凝らして見ると,その周辺で10数個見つけることができました。大きさは直径約2cmほどで,半透明のあめ色です。うっすらと,中に黒いものが見え,ゆすってみるとコロコロと動きます。 写真①  すぐ脇に「ムクロジ」の名標がありました。落葉高木で、雌雄同株にして雌雄異花。時期をずらして雄花と雌花が咲くムクロジ(無患子)の木です。  この時季は実が熟し,写真①のように実を落とします。そこで,地面に落ちたムクロジの実の皮を割り、黒い種子を取り出してみました。種子(写真②)は1つだけ入っていました。 写真②  この種子は大変硬く,これまでに羽根つきの羽根の球(写真③)に使われたり,数珠(写真④)に使われたりしてきました。 写真③ 写真④  ところで,皮を向いていて面白いことに気が付きました。  手やハサミが妙にベタネタとするので,洗うと泡立ちがすごいのです。ムクロジの実には洗剤の効果をもつサポニンという泡立ち物質が含まれています。   また,ムクロジの学名「Sapindus mukorossi」のSapindusは、“インドの石鹸”を意味し,インドでは古くから洗濯用に用いられていたそうです。    英名では「Chinese soapberry」 もしくは 「Soap nut tree」 とも言い,やはり石鹸がついていますよ。 【解説員K】

「丸太とにらめっこしたよ!」(2018.12.10)

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12月8日(土) 「フラワークリスマス」のイベントの一つとして『丸太のサンタ ペインティング体験』を行いました。 当日参加のイベントで,13:30~15:00の間,30名の方にご参加いただきました。 パパのお膝で。 ママと一緒に。  丸太の年輪とにらめっこ。 大人も夢中! 個性が光ります。 丸太も人も作品も。みんな違ってみんないい! それぞれ2つのサンタを描いていただき,1本は植物園に飾って1本はお持ち帰り。 丸太のサンタ,思いがけず海外にも旅立ちます! 皆さんの作品は温室ギャラリー室に,12月24日(月・祝)まで展示しています。 個性あふれる丸太のサンタたちにぜひ会いに来てください。 丸太は見かけ通りに重かったり,見かけによらず軽かったり。 樹種によって重さが違うことに驚かれる方もいらっしゃいました。 いろいろな体験が気づきとなって,植物への興味につながっていきますように。 福岡市植物園では,「楽しみながら学ぶ」をコンセプトに,様々な講座やイベントを行っています。 イベント情報は随時更新していきますので,皆さんのご参加をおまちしています イベント情報 はここをクリック!                                 〈植物展示係 佐藤〉

ちいさな大発見!? No.9(2018.12.8)「ハンカチノキ」の実

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 バラ園手前の花木園では多くの落葉樹が葉を落とし,ちょっとさみしい時季を迎えました。  ところで,そのような枝木の中でピンポン玉くらいの実(写真①)がいくつも風に揺られながらぶら下がっていました。 写真①  よく見ると,「ハンカチノキ」の実でした。竜巻注意報が発令された4日でも,しっかりとぶら下がったままでした。  毎日,確認していますが,ここ10日ほどの間に4つの実(写真②)を拾いました。表面はザラザラして,クルミのように固いです。 写真②  1つの実の中に複数の種が入っています。ちょっと,蒔いてみようかなとも思いましたが,翌年発芽することもあれば5年かかって発芽することもあるらしく,発芽率が低く大変難しい種子のようです。  ちなみに果肉を落として,中から種を取り出したのが写真③です。これを蒔けばよいようです。 写真③  ところで,ハンカチノキを簡単に紹介します。  ハンカチノキは「植物界のパンダ」と称され,他に近縁種が存在せず,1科1属1種と言われてきました。パンダ同様,中国の西南部にのみ分布していたからです。  ちなみに白く見える部分は花弁ではなく,葉が変化した2枚の苞(総苞片)です。もともとハンカチノキには,花弁と萼はありません。中心に黒く見えているのが花で,1つの雌花と多くの雄花で形成されています。  来春もハンカチノキに多くのきれいな花(写真④)が咲いてくれることを願っています。 写真④  【解説員K】