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ちいさな大発見No.117(2021.2.25)ネコヤナギの秘密?

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 今、水生植物園では、ネコヤナギの園芸品種であるピンクネコヤナギが満開を迎えています。  ネコヤナギの花穂は銀白色ですが、こちらはピンク色でとても愛らしいです。ネコヤナギは雌雄異株ですから、2株ある本種は雌雄のどちらか調べてみました。  まず3枚の写真をご覧ください。 写真① 花弁は退化しています!   写真② シベが生長し葯が目立つ。 写真③ 葯から黄色い花粉が出ている!  写真①は帽子(芽鱗)をぬいで間もない様子。まだ、シベが生長していません。  写真②では雄しべが目立つようになり、合着した2本の花糸の先っぽにある赤い葯はまだ熟していません。  写真③では、葯が熟し黄色い花粉が出ています。役目を終えると、黒っぽくなるようです。  そこで、デジタル顕微鏡でマクロ撮影をしてみました。写真④をご覧ください。 写真④ 雄しべの先の花粉が熟しています!  まちがいなく雄花のようですので、2株のピンクネコヤナギは雄株だと思います。  その隣にはヒメネコヤナギがありますが、まだ開花したばかりで雌雄はわかりませんでした。 写真⑤ 一回り小さい  さらにその隣にはイヌコリヤナギが咲いていましたので、こちらも雌雄を調べてみました。 写真⑥ イヌコリヤナギの花序 写真⑦ 雄しべがいっぱい!  写真⑥⑦よりイヌコリヤナギも雄株です。雌雄一緒に植えないと、種子ができないのに・・・とつい思ってしましました。  実は、雌花は雄花よりも一回り小さくあまり目立ちません。ですから、雄木が重宝されるのです。  もう一つ、ヤナギ科の植物は挿し木で簡単に増やすことができます。その証拠に、中村哲先生はアフガンの用水路建設の際、挿し木等で増やした柳、約60万本を植栽し、護岸の保護に使ったそうです。  もしかしたら、挿し木で簡単に増やせるということから、雌木は流通していないのかもしれません。 【解説員K】

どっこい咲いてます、地味~な花(2021.2.24)

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   二十四節気の一つ「雨水」が過ぎて、園内ではツバキ、ウメに続いて早咲きのサクラなど早春の華やかな花たちが次々に開花しています。そんな中、赤や黄色などの目立つ花を横目に見ながら、地味~な花を黙々と咲かす植物たちがいます。  水生植物園で、木の枝から茶色のものが垂れ下がってゆらゆらと風に揺れています。ハンノキ【榛の木】(カバノキ科)の雄花の集まりです。(尾状花序[びじょうかじょ]といいます)雄花といっても花被はなく雄しべの葯(やく)があるだけで、その存在はまったく地味そのもの。  「はんの木はそれでも花のつもりかな」 小林一茶の句だそうです。    一般的に植物が赤や黄色などの花を咲かせるのは、花粉を運んでもらう昆虫たちに目立つようにするため。植物は色だけではなく匂いや蜜なども用意して、その存在を昆虫たちに知らせます。ところが、このハンノキは風に花粉を運んでもらう風媒花(ふうばいか)。昆虫たちにアピールする必要がないため、こんなに地味なんです。  ちなみに花粉を受ける雌花は、垂れ下がった雄花序の付け根にちょこんと付いていますが、もちろん花被はなく雌しべの柱頭だけのシンプルさ。    梅園に降りていく階段脇で見つけた地味~な花。カンスゲ【寒菅】(カヤツリグサ科)の花です。    細長い紡錘形に花が集まっており、この形を小穂(しょうすい)といいます。花茎の先端に1個の雄小穂、その下側に数個の雌小穂がつきます。アップの写真は先端の雄小穂で白いひげ状のものは長い葯の雄しべです。カンスゲが属するカヤツリグサ科も風媒花で花被がありません。    最後に、今回の地味~な花のNO.1で紹介するのはハラン【葉蘭】(ユリ科)の花です。「世界で最も変わった花」として過去のブログでも取り上げられていますが、本当に変わった地味~な花です。    花は地面すれすれに開くので、根際に積み重なっている落葉の下になってなかなか見つけることができません。この写真は落葉を掻き出してやっと撮ったものです。位置的に目立たないことに加えて、花は暗紫色でまったくアピール度はありません。それもそのはずで、この花の花粉は、かつては地面を這いずり回るカタツムリやナメクジが媒介する「蝸牛媒花」と考えられていましたが、近年では甲殻類の陸生のヨコエビ類が媒介者である可能性が発表されています。  本格的な春が訪れると赤や黄色

ちいさな大発見No.116(2021.2.22)あらあら、不思議です?!

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 今、梅園では多くの梅の園芸種が見ごろを迎えています。    ところで、原種に近いとされる野梅性の「見驚(ケンキョウ)」をじっくりと見ていると、全体が白梅の中に、2カ所で一部の枝に濃いピンクの花が咲いている枝を見つけました。    他にもモデル庭園裏の斜面で2本のウメに同じような状態で咲いているウメを見つけました。 源平咲きとも言います!    これらは‘枝替わり’と言って、遺伝子の突然変異によって起きる現象です。ツバキやツツジなどでもよく起きるようです。    さて、冒頭で紹介した八重咲きの「見驚」ですが、本来は大輪の淡いピンク一色です。それが、どうしたわけか、白ベースで咲いているのです。不思議です。  そして、「見驚」の隣には、一本の枝に紅梅と白梅が一緒に咲いたり、一輪の花びらが紅白になったり、絞りが入ったりする野梅性の「輪違い(思いのまま)」があります。 一昨年の「輪違い」 近所の「輪違い」    ところが、今年の梅園の「輪違い(思いのまま)」は、昨年から咲き分けをすることなく全体が淡いピンク一色で咲いています。いったいどうしたのでしょうか。 なかなか、私たちの おもいのまま にはならないようです。   みなさんも時間をかけてじっくりと観察してみると、新たな発見が見つかるかもしれません。  【解説員K】

“金縷梅の神の悪戯めく捩れ” 俳句小屋の展示作品を入れ替えました(2021.2.14)

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(シナマンサク 令和3年2月4日) 先日、俳句小屋の展示作品を入れ替えました。1月もご投句ありがとうございました。展示させていただいた作品の中から、数点ご紹介します。  “金縷梅の神の悪戯めく捩れ” 英世 (まんさくのかみのいたずらめくねじれ) 複雑にねじれたような花弁をつけるマンサク。おもしろい花ですよね。語源は早春に「まず咲く」からとか、満開に咲くからなどの説があるようです。福岡市植物園ではマンサクをはじめ、シナマンサクやアカバナマンサクが1月の下旬頃から、たくさんの花を咲かせています。 雪を詠んだ作品も多くみられました。     “大寒に雪の花咲く植物園” ポンタ “澄みわたるはるかな峰の光る雪” 花守 “初雪に威厳増したり鬼瓦” 貞昭 普段見慣れている光景でも、真っ白な雪をかぶると、別世界に変わりますね。1月には寒波の影響で、福岡市植物園にも雪が積もりました。寒かったですね~。園内では芝生広場やバラ園などに、たくさんの雪だるまがあらわれました。    最後はこちら。 素敵な牛さんのイラストですね!俳句小屋がにぎやかになるので、色紙に貼って飾らせていただいています。 俳句の展示は、当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており、約1か月おきに入れ替えています。投句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と、緑の情報館1階のポストで受けつけています。初心者の方も大歓迎です。みなさんのご投句を、お待ちしています! ※今回展示している俳句の一覧です。 <俳句係 M>

ちいさな大発見No.115(2021.2.11)ついに開花!

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 毎年、この時季になると気になるのがカワヅザクラの開花です。  一昨年は2月27日、昨年は2月1日に開花しています。  今年も1月末くらいから、もうそろそろかなと毎日見に行きますが、開花の兆しはありません。そして、・・・   2月9日撮影  ピンク色の花弁がのぞき、蕾もパンパンに膨らんでいます。  2月11日撮影  そして、ついに今日、開花しましたよ。  カワヅザクラは今から60年ほど前、静岡県の河津町の河原で偶然発見されたもので、オオシマザクラとカンヒザクラの自然交配種と言われています。日本でも有数の早咲き種です。  本園には3本、植栽されていますが、今日現在、そのうちの2本に1~2輪の花が開きました。今後、一気に開花が進むものと思われます。  もう一つ、気になる植物が野草園のフクジュソウです。キンポウゲ科の多年草で春を告げる草花の代表格です。キンポウゲ科の植物は毒草が多いのですが、こちらも強い毒性があります。  さて、フクジュソウは蜜腺がないため、虫の少ないこの時期にどうやって虫たちをおびき寄せるのでしょうか。実は、盃というかパラボラアンテナ状の花構造に秘密があります。太陽の光で温まった花の中と外とでは、最大10度近くの温度差がでることもあるそうです。虫たちはその温度差を敏感に感じ取り、陽だまりとなった花の中で体を休めるのです。  2月3日撮影 半開?   2月6日撮影 開花!   2月10日撮影 ぞくぞく開花!!  フクジュソウの開閉は日光ではなく、気温であることが分かっています。開花に必要な最低気温は8度から10度の間にあるそうです。ですから、来週の17,18日は最高気温が5度の予報が出ていますが、こんな日はお天気でも花が開くことはありません。  もう一つ、ジャカランダのある斜面ではツクシ(土筆)が顔をだしていました。  2月6日撮影  春を探しに植物園においでください。 【解説員K】

野草たちの冬の過ごし方~ロゼット(2021.2.3)

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  今日は立春、暦の上では春を迎えましたがまだまだ寒い日が続きます。この時期園内を歩くと、地面に張り付いて葉を広げている野草をよく見かけます。その様子は、放射状に伸びた葉の形をバラの花(rose)に例えてロゼット(rosette)と呼ばれます。  トップの写真は、梅園で見つけたカンサイタンポポ(キク科)のロゼットです。このような葉を根出葉(こんしゅつよう;短い茎の基部から出る葉で、あたかも根から直接出ているように見える葉)とも呼びます。  ロゼット状に葉をつけることで、野草は冬の少ない陽光を効率よく利用することができます。しかし、草丈の高い植物の陰になると地面に張り付いたロゼットには光が当たらず不利になります。  そのため、ロゼットは人為的な踏み付けが強いところや、定期的に草刈りが行われる場所など競争相手が生育しにくい環境によく見られることになります。  この写真は、例年3月末に梅園で開催している「春の茶会」の様子ですが、黄色い花が咲いているのがわかりますか?カンサイタンポポは開花時期には競争相手がいないことをちゃんとわかって花を咲かせているのでしょうか。ちなみに、梅園に夏草が茂って除草作業が行われる頃にはカンサイタンポポのような在来種タンポポは夏季休眠します。 【無駄な競争はしない!】  その他同じ場所で見つけた冬越しの野草たちの様子です。 ヨモギ(キク科) スイバ(タデ科) アメリカフウロ(フウロソウ科) 庭木園で見つけたロゼット。 ノアザミ(キク科) キュウリグサ(ムラサキ科)           園の外周で見つけたロゼット。 オオアレチノギク(キク科) セイタカアワダチソウ(キク科)  この野草たちは、競争相手が少ない冬季はエネルギーが節約できるロゼットで過ごし、春になって競争相手が増えてくると茎を伸ばして高さ競争に参加するという変幻自在な生き方をします。 【やる時はきっぱりと競争する!】  芝生広場で見つけたオオバコ(オオバコ科)は一年中ロゼットのままです。 【他の野草が踏まれて育たない場所でも元気に育つ!】  隙間で根性のある育ち方をしているロゼットも見つけました。    アキノノゲシ(キク科)  ロゼットの姿を見ると、野草たちそれぞれののたくましい生き残り戦略がうかがえます。