どっこい咲いてます、地味~な花(2021.2.24)

 

 二十四節気の一つ「雨水」が過ぎて、園内ではツバキ、ウメに続いて早咲きのサクラなど早春の華やかな花たちが次々に開花しています。そんな中、赤や黄色などの目立つ花を横目に見ながら、地味~な花を黙々と咲かす植物たちがいます。

 水生植物園で、木の枝から茶色のものが垂れ下がってゆらゆらと風に揺れています。ハンノキ【榛の木】(カバノキ科)の雄花の集まりです。(尾状花序[びじょうかじょ]といいます)雄花といっても花被はなく雄しべの葯(やく)があるだけで、その存在はまったく地味そのもの。

 「はんの木はそれでも花のつもりかな」 小林一茶の句だそうです。

 


 一般的に植物が赤や黄色などの花を咲かせるのは、花粉を運んでもらう昆虫たちに目立つようにするため。植物は色だけではなく匂いや蜜なども用意して、その存在を昆虫たちに知らせます。ところが、このハンノキは風に花粉を運んでもらう風媒花(ふうばいか)。昆虫たちにアピールする必要がないため、こんなに地味なんです。



 ちなみに花粉を受ける雌花は、垂れ下がった雄花序の付け根にちょこんと付いていますが、もちろん花被はなく雌しべの柱頭だけのシンプルさ。


 

 梅園に降りていく階段脇で見つけた地味~な花。カンスゲ【寒菅】(カヤツリグサ科)の花です。


 

 細長い紡錘形に花が集まっており、この形を小穂(しょうすい)といいます。花茎の先端に1個の雄小穂、その下側に数個の雌小穂がつきます。アップの写真は先端の雄小穂で白いひげ状のものは長い葯の雄しべです。カンスゲが属するカヤツリグサ科も風媒花で花被がありません。

 


 最後に、今回の地味~な花のNO.1で紹介するのはハラン【葉蘭】(ユリ科)の花です。「世界で最も変わった花」として過去のブログでも取り上げられていますが、本当に変わった地味~な花です。

 


 花は地面すれすれに開くので、根際に積み重なっている落葉の下になってなかなか見つけることができません。この写真は落葉を掻き出してやっと撮ったものです。位置的に目立たないことに加えて、花は暗紫色でまったくアピール度はありません。それもそのはずで、この花の花粉は、かつては地面を這いずり回るカタツムリやナメクジが媒介する「蝸牛媒花」と考えられていましたが、近年では甲殻類の陸生のヨコエビ類が媒介者である可能性が発表されています。


 本格的な春が訪れると赤や黄色などの華やかな花たちが目立ちますが、地味~な花を懸命に咲かせる植物たちにもどうぞご注目ください。

                                  (解説員)


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