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ちいさな大発見!? No.59(2019.12.25)トトロもびっくり?

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 温室にあるランの小庭では、今、巨大な葉をもつ中国、台湾原産のカミヤツデに、たくさんの球状の花(写真①)を見ることができます。   写真① 綿毛のような花?  みなさんはヤツデをご存知でしょうか。  私が子どもの頃、竹で紙鉄砲を作り、湿らした紙の玉の代わりにヤツデの実を詰めて飛ばしていたのを覚えています。  それはさておき、カミヤツデはヤツデと同じウコギ科(属は別)の植物ですが、何といっても驚かされるのが葉(写真②)の大きさです。ヤツデの2倍以上はありそうです。   写真② 葉には深い切れ込みが!  植物園にあるカミヤツデは、木の高さは3m弱ですが、幹の先っぽの方には薄い茶色の放射状に伸びた星状毛(写真③)がびっしりと付いています。   写真③ 毛皮のコートを着ているよう!  そこから、1m近くありそうな葉柄が伸び、その先には大きいもので直径が約90cmもある葉が付いています。  さらに、葉柄の上部からクリーム色の毛に覆われた花軸が70~80cm伸び、さらに枝分かれした花軸にビッシリと球状の花(写真④)が付いています。   写真④ 触れると、花粉が!  球状の花といっても、よく見てみると、1つの球状の花には、花弁が4枚で、雄しべが4本、そして、雌しべは何と2本ある小花の集合体(写真⑤)です。 写真⑤ たくさんの雄しべが目立ちます!  少し下がって全体を見ると、枝がまったくなく、主木(幹)から葉柄も花軸も伸びています。  名前の由来ですが、かつては紙の原料として使われていたことによるそうです。しかし、現在では利用されることもなくなり、地下茎で子株を増やし、さらに鳥等によって種が運ばれるため、管理されていない山間部などでは増加傾向にあるそうです。  カミヤツデが群生すると、葉が大きいため地面に光が差し込まなくなり、林床に生えるような植物が光合成できずに枯れてしまう問題があるそうです。  場所は温室正面入り口から入り、ヴーゲンビリアが咲いている回廊温室の奥ですよ。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.58(2019.12.13)本当にサザンカ?

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 花が少なくなったこの時季,色とりどりのサザンカが周囲を華やかにしてくれています。  一口に,サザンカと言っても300種類以上の園芸品種があり,開花時期や花の形から大きく3つのグループに分けられます。  1つは,サザンカの自生種がベースになっているサザンカ群,もう1つは獅子頭がベースになっているカンツバキ群,そしてサザンカと主にヤブツバキとの交雑によって生まれたハルサザンカ群です。  本園ではサザンカ群は4種(金花山,根岸紅,花自慢,有希),カンツバキ群は7種(勘次郎,獅子頭,朝倉,富士の峰,皇玉,乙女サザンカ,新乙女),ハルサザンカ群は5種(笑顔,梅ヶ香,旭,宝塚,飛竜)を見ることができます。  さて,郷土樹木園を右手に見ながら歩いていると,ちょうど頭の上に八重咲の「サザンカ笑顔」が大輪の花を咲かせています。(写真①) (写真①)ピンクの花弁が愛らしい「サザンカ笑顔」  ふと足元に目をやると,すでにいくつかの花弁が落ちていました。(写真②)  みなさん,この写真を見て何か変だと思いませんか。 写真② ツバキのように花首からポトリと・・・?  普通,サザンカの花は写真③のように,花弁を1枚ずつ散らして落ちていきます。花首から落ちるのは,正にツバキそのままです。   写真③ 普通のサザンカの散り方  ではなぜ写真②のような散り方をするのでしょうか。  サザンカ笑顔はハルサザンカ群に属し,ヤブツバキに近い性質をもっているようです。ですから,本種も花弁とおしべが基部でゆるく繋がっており,写真②のような散り方をしていたのです。  それではハルサザンカ群のサザンカたちがみんなそのような散り方をするのでしょうか。 写真④ 1枚ずつ散っている「サザンカ梅ヶ香」  すると,写真④のようにハルサザンカ群を含めた15種のサザンカは,ほとんどが1枚ずつ花弁を散らせ,花首から散るのは「笑顔」だけでしたよ。  ハルサザンカ群の園芸種たちは,交雑を繰り返してきた歴史があるので,よりサザンカに近い種とツバキに近い種があり,同じ仲間とは言え,かなり幅があるようです。ですから「笑顔」は,よりツバキ系に近い性質を持っているのでしょう。  そして,花弁とおしべが散った跡には,ツバキと

宿存萼(しゅくぞんがく)の話(2019.12.11)

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 前回「ハーブ園の果実」ブログでゲットウの実を取り上げて、その特徴として「頭にチョ コンと 宿存萼 がついている」と説明したところ、「宿存萼」がわかりにくいとの質問をいた だきました。そこで【しゅくぞんがく:花が枯れ落ちたあとも残っている萼】という説明を 追加しましたが、あらためて「宿存萼」のことを取り上げてみたいと思います。  そもそも「萼(がく)」とはなにか?シンプルな説明では「花の最も外側にあって、つぼ みのときは花の内側を保護するもの」と書かれています。  最初の写真はゲットウの花が終わった直後の状態です。花は茶色になって枯れ落ちます が、あとに筒状の萼がしっかりと残っているのがわかります。実が成長しても萼がそのまま 残っている状態が次の写真です。  同じように実の頭に残った萼が目立つものとして、ハマナス(バラ科)とクチナシ(アカ ネ科)の例をご覧ください。  なお、果実が実ったあと果柄(果実を支える柄)側に残った萼は蔕(へた)と呼ばれます。 ロウヤガキのへた タマゴナスのへた  また、果実が熟す頃に果柄側に残った萼が色づいて、鳥などに果実の存在をアピールする 役割を果たすものもあります。  クサギ(クマツヅラ科) オクナ・セルラタ(オクナ科)  オクナ・セルラタは「ミッキーマウスの木」とも呼ばれて親しまれています。  最後に、残った萼が花期後に成長して果実を包み込むタイプのものを紹介します。  夏の風物詩として親しまれているホオズキ(ナス科)です。次の写真は以前観察会用に袋 をはずして撮影したものですが、萼が果実を包み込んでいる状態がわかります。  萼が果実を包み込むものとしては、実は前回ブログで紹介したローゼルも同様です。  あらためて調べてみると「宿存萼」にはいろいろな形や役割があることがわかりました が、他にもいろいろなタイプがあるようです。  植物にはまだまだ不思議がいっぱいです。                    (解説員)

秋のなごり~ハーブ園の果実(2019.12.4)

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暦のうえではまもなく「大雪」。本格的な冬の訪れが間近ですが、ハーブ園では秋のなごりの果実たちをまだ見ることができます。 オレンジ色の丸い実を鈴なりにつけているのはゲットウ【月桃】(ショウガ科)です。頭にチョコンとついているのは宿存萼(しゅくぞんがく:花が枯れ落ちたあとも残っている萼)です。黄色い唇弁に赤い縞模様が入った筒状の花を6月ごろ咲かせます。 葉には芳香性の精油成分がありアロマオイルなどに利用されますが、種子も乾燥させて主に健胃、整腸の薬として利用されます。 黒紫色の艶々とした液果をつけているのはマートル(フトモモ科)です。和名はギンバイカ【銀梅花】、6月ごろ梅の花に似た白い花を咲かせます。糸のように細い雄しべが特徴的な花です。 葉は揉むとユーカリに似た芳香があることから、原産の地中海地方では料理や酒などにハーブとして使われていますが、この黒い液果も果実酒に漬け込む材料として古くから利用されていました。 先がやや尖った艶のある暗赤色の実をつけているのはローゼル(アオイ科)です。実と紹介しましたが、目立っているのは花のあと萼片が果実を包み込んで厚く肥大したもの。熟した萼は多汁質でクエン酸などを多く含み、乾燥させたものがハイビスカスティーの原料になります。短日植物で、10月ごろ径10cmほどの淡いピンク色の花を咲かせます。 皿に萼が山盛りになった写真は、実はタイを訪れた時に街角の屋台で見かけたものです。 タイでは、この萼を煮て作ったジュースは体を冷やす効果があるとしてポピュラーな飲み物の一つで、ジュースを取ったあとも砂糖をまぶして子供のおやつにするそうです。 寒くなってきましたが、ハーブ園のちょっとユニークな果実たちをどうぞご覧ください。 (解説員)