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11月, 2019の投稿を表示しています

ちいさな大発見!? No.57(2019.11.27)見つけると幸せになる?

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 情報館前から水生植物園を左手に見ながら進んでいくと,通路脇で落葉した葉の陰に隠れながら小さな赤紫の花を見ることができます。 どれが花か、わかりますか?  キジカクシ科のキチジョウソウです。漢字では「吉祥草」と書きます。漢字に「吉」の字がついているように,この花を見つけると幸せが訪れるとか,花が咲くと縁起が良いなどと言われています。  開花したのは10月30日。およそ1か月ほど前ですが,今が見頃となっています。  この花の特徴ですが,およそ10cmくらいの花序を伸ばし,下の方から順々に花を咲かせます。 やっと半分が開花!  ちなみに,根元の方には6本の雄しべと1本の雌しべを持った両性の花をつけます。そして,花序の上の方には雌しべをもたない雄花をつけます。 紫がかった雌しべがある両性花!   雄しべだけの雄花!  どうやら雌しべは退化してなくなったようです。全部両性の花でもよいと思うのですが,どうしてわざわざ雌しべを退化させた雄花を咲かせるのか,不思議です。  私なりの見解ですが,  ①キチジョウソウは地下茎を伸ばしながら株を増やしていくので,そこまで実(種)ができなくてもよい。  ②雄しべの先端の葯が開くころには雌しべ全体が大きく伸びることから,自家受粉を嫌い,虫や風による他家受粉を望んでいる。  みなさんはどう思われますか。  今後,受粉した実は12月末から1月にかけて真っ赤なガラス玉のような実を付けます。しかし,こちらも葉に埋もれ,なかなか見つけることが難しいようです。  正に今が旬ですよ。植物園にお出での際は是非,キチジョウソウの花を見つけてください。 反り返った花弁と立派な雄しべ 【解説員K】

花と実が同居?この木も!(2019.11.25)

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 「花と実が同居?」まだ続きます。この写真、右側に赤い実、左側に黄褐色の小さな花が固まってついています。クスノキ科のシロダモ【白だも】です。  葉はクスノキ科によく見られる三行脈(主脈が3方向に出ている)が目立ち、裏側は灰白色で名前の由来になっています。 葉 表 葉 裏 雌雄異株で、当園では展望台レストラン上の通路から樹林地を見下ろすと雄木とちょっと小ぶりで赤い実をつけている雌木が並んでいるのを見ることができます。花は、黄褐色の小花が散形花序に固まってつきます。花を近くで観察すると雄しべ6本が突き出る雄花と白い柱頭の雌しべが目立つ雌花の違いがわかります。 雄花 雌花 ブログに連続して秋に花と実を同時に見ることができる植物を紹介してきました。開花後およそ1年後に実をつけるという、いわば親子2世代が同居する形ですが、このシロダモの花の上側には来年春に葉を出す先の尖った冬芽もついているので、なんと3世代が同居する形を見ることができます。     シロダモは園内樹林地だけではなく、「小笹団地正門前」バス停から植物園に向かう階段を登り切った左側にも花をびっしり咲かせている姿を見ることができます。                                                       (解説員)

花と実が同居?ドングリも!(2019.11.17)

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前回ブログ「花と実が同居?」の続編です。この写真、右側にドングリ、左側に花(厳密にいうと花が終わった後の花序)が同居しているのがわかりますか?  ドングリ(ブナ科の樹木がつくる果実)の仲間で唯一、秋に花を咲かせるシリブカガシ【尻深樫】です。雌雄同株で開花は例年9月ごろですが、花序が集まった中心に長めの雌花序、その周囲にちょっと低めの雄花序が残っているのが確認できます。逆光で見えにくいのですが、ドングリのつき方は次の写真のとおりで、シリブカガシは花を咲かせた翌年秋にに大きく成長します。  この、変わった時期に花を咲かせるシリブカガシは動物園のマレーグマ舎近くの園路沿いで見ることができます。目印は、名前のとおり尻のところが深くへこんでいるのですぐわかります。探してみてください。 秋も深まってきましたが、お客様から「まだドングリは拾えますか?」とのご質問がよくあります。  現在おすすめしているのは、「香りの道」温室に向かって左側のマテバシイ【馬刀葉椎】です。 マテバシイは比較的虫がつきにくいので、足元をたんねんに探すと虫の穴がない大きな実をいっぱい拾えます。 ちょっと小粒ですが、シラカシ【白樫】やアラカシ【粗樫】も園内あちこちで見つけることができます。 シラカシ アラカシ 植物園では秋の楽しみの一つ、ドングリ拾いがまだまだ楽しめます。どうぞお越しください。                                                     (解説員)

ちいさな大発見!? No.56(2019.11.15)花と実が同居?

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 野草園を廻っていると,葉の陰から真っ赤なヤマモモのような実(写真①)が目に留まりました。すぐ隣にはまだ熟していない黄色い実も一緒です。 写真① まさにヤマモモでしょう?  この時季にヤマモモの実があるわけもなく,よく見るとイチゴノキの実でした。イチゴノキは,イチゴ(バラ科)の名前がついていますが草本ではなく,ヨーロッパ原産の常緑樹でツツジ科の植物です。  ちなみに,野草園東で見ることができるのは,イチゴノキの矮性種でやや小ぶりなヒメイチゴノキです。  ところが,実の側にはアセビのような壺型の小さな白い花(写真②③)が,およそ1つの花茎から15~20輪ほどの花を咲かせています。ですから1本の木に花と実が一緒(写真④)についているのです。 写真② アセビかスズランのよう・・・ 写真③ 中には雄しべと雌しべが! 写真④ 花と実が同居しています!  花後に実を付けるのですが、どうやら1年かけて生長するようです。どんぐりで言うところの2年成ということです。  つまり,写真①や④にあるような赤や黄色の実は昨年の秋に実を結び,少しずつ大きくなりながらそのまま年を越し、緑色から黄、オレンジ色、赤へと変化し成熟してきたものです。  ちなみに,おいしそうに見えますが,味はまったくしないそうです。  近づくとかすかな芳香が漂っていましたよ。是非,植物園にお出で下さい。 【解説員K】