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7月, 2019の投稿を表示しています

花から実に・・鮮やかな変身!(2019.7.28)

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  梅雨が明けて植物園に本格的な夏がやってきました。この時期、花を咲かせたあとに特徴的な実をつけて目立っている種類を園内で探してみました。  展望台エリアで一見ミニトマトのような色の実をつけているのはハマナス【浜梨】(バラ科)です。  今年は5月20日前後が花の見頃でした。この実は花床が肥大したもので本当の実ではないので偽果(ぎか)と呼ばれます。ビタミンCを多く含み健康食品として利用されるそうです。  同じく展望台エリアで3稜のある細長い実をつけているのはアガパンサス(ユリ科)です。  南アフリカを中心に分布している宿根草で、梅雨のジメジメした時期に見た目が爽やかな水色の花を咲かせます。9月頃細長い実が裂けて中から黒い種が現れます。  モデル庭園でうつむき気味にひっそりと4個の実をつけているのはシロヤマブキ【白山吹】(バラ科)です。この種はバラ科の植物にしては珍しく4数性で(バラ科の多くは5数性)、花弁が4枚、雌しべも4個、今年の花の見頃は4月10日頃でした。  この実は黒く熟した後なかなか落ちず翌春まで残ることもあります。ちなみによく見かける黄色のヤマブキは花弁は5枚(八重咲もあり)、葉は互生です(シロヤマブキは対生)。  野草園で緑色の丸い実をつけているのはハマユウ【浜木綿】(ヒガンバナ科)です。厚い葉が似ているのでハマオモト【浜万年青】とも呼ばれます。  花は花粉を媒介するガの仲間にアピールするように夕方から強く香ります。丸い実の中の種は厚いコルク質で覆われているので海水に浮き、海流により分布域を広げていったと考えられています。  花が終わったあともさまざまな表情を見せてくれる植物たちをどうぞご覧ください。  (解説員)

ちいさな大発見!? No.48(2019.7.26)みんな,リコリス!

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 梅雨が明け,真夏の空の下,温室に向かう香りの路入り口でピンクのユリのような花が咲いています。「ナツズイセン」です。  清楚なピンクが愛らしい「ナツズイセン」  名前に‘スイセン’が付いていますが,スイセンの仲間ではなくヒガンバナ科のリコリス属の仲間です。別名を「リコリス」,「ハダカユリ」と言います。ナツズイセンは春に葉を出して,初夏には葉が枯れ,それから花が咲きます。  次に今週の初めまで咲いていた「キツネノカミソリ」と「オオキツネノカミソリ」を紹介します。 キツネの体色をイメージする「キツネノカミソリ」 「オオキツネノカミソリ」  この2つの植物の違いは蕊(しべ)の長さです。キツネノカミソリは花びらと同じくらいですが,オオキツネノカミソリは写真のように倍くらいの長さがあり,長く突き出ています。こちらも,リコリスの仲間です。  他にも,9月以降に咲く「ヒガンバナ」や「ショウキズイセン」などがあります。 「曼殊沙華」の別名もある「ヒガンバナ」 クリーム色もある「シロバナマンジュシャゲ」 花弁の縁が波打つ「ショウキズイセン」  これらは,すべてヒガンバナ科のリコリス属(ヒガンバナ属)の仲間なのです。  ところで,今,野草園で「スパイダーリリー」が咲いています。こちらもヒガンバナ科の仲間ではありますが,リコリス属ではなくヒメノカリス属になります。北アメリカ原産で,クモの足のような花弁が特徴です。 「スパイダーリリー」と言っても花弁は6枚! 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.47(2019.7.18)ハイビスカスの仲間たち!

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 アオイ科フヨウ属の総称を「ハイビスカス」と言います。これらに共通しているのは,  ・1日花であること  ・5弁花であること  ・花の中心には多数の雄しべがくっついて筒状になり、その先っぽに雌しべが突き出ていることです。  それでは,アオイ科フヨウ属の花たちを紹介します。  先ず,温室に入ると,ハワイ諸島や熱帯・亜熱帯地方原産のハイビスカス(写真①)がところせましと咲いています。花色も赤やピンク,黄色,オレンジ,白,大きさも6~15cmくらいと多種多様です。    写真① 南国の花,ハイビスカス  同じく,東アフリカ原産のフウリンブッソウゲ(写真②)を紹介します。花が下向きに長い柄で垂れ下がる様子から'風鈴のようなハイビスカス'という名前が付けられています。こちらは1日花ではなく,数日咲きます。   写真② 深い切れ込みがあり、後ろに反り返るフウリンブッソウゲ  次は福岡市の花にも指定されているフヨウ(写真③)です。園入り口で迎えてくれます。また,フヨウの園芸品種で開花と共に白からピンクに変化する八重咲きのスイフヨウも(写真④)あります。写真は昨年の9月23日に撮ったものです。 写真③ 中国原産のフヨウ  写真④ 「酔った芙蓉」と書いてスイフヨウ  次はバラ園南で見ることができる「ムクゲ」です。写真⑤ 白花も咲いていますよ。 写真⑤ 中国原産で韓国の国花だそうです!  それでは,今,植物園で最も元気な植物を2つ紹介します。  1つめは日本原産で海岸近くに自生する塩生植物のハマボウ(写真⑥)です。 写真⑥ 花弁がスクリュー状に並ぶハマボウ  2つめが写真⑦のアメリカフヨウです。ハーブ園や温室入り口で20cm近い大輪の花を咲かせています。北アメリカ原産ですが,こちらは草本の宿根草になります。  写真⑦ 丸い1枚の花弁に見えますが,5弁花です!   さらに野草園では,同じく北アメリカ原産のモミジアオイ(写真⑧)が咲き始めました。アメリカフヨウに比べ,花弁がやや細くすきまがあります。こちらも草本です。 写真⑧ モミジの葉に似たモミジアオイ  また,アメリカフヨウとモミジアオイを交配してできたタイタンビカスの開花が待たれます。他にもハーブ園で9月中旬

ちいさな大発見!? No.46(2019.7.13)昆虫じゃない,4本脚の蝶?

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 温室のオオオニバスが広がる水生植物室に入ると,私の目の前を2頭の蝶が優雅に飛び回っていました。きっと,ランデブーしていたのでしょう。しばらくすると,今度はもう1頭の蝶が優雅に舞い降りるように、目の前のサクラランの葉に留まりました。写真①    写真① サクラランで羽を休めるオオゴマダラ  両翼の長さは11cmほど,白地に黒い模様が入っています。そうです,「オオゴマダラ」です。  オオゴマダラは日本に生息している蝶の中で最も大きいと言われ,綺麗に羽を広げると大きいものでは14~15cmほどになります。もちろん,福岡では見ることができず,沖縄県南にある喜界島、与論島以南の南西諸島に生息しています。    ところで,オオゴマダラと言うと,蛹が黄金色になることで有名です。そこで,スタッフの方にお願いして,バックヤードで管理している蛹(写真②③)を見せてもらいました。 写真② 左が脱皮した跡、黄金色じゃないぞ!   写真③ 黄金色に輝く蛹  この黄金色に見えるのはサナギの体液が黄色で、たくさんある膜の層に光が反応して金色に見えるのだそうです。ですから、脱皮した殻は写真②のようにシルバーですね。  オオゴマダラの成虫は一般的な蝶の成虫と比べて寿命が長く、条件がよいと、半年近く生きることがあるそうです。  さて、オオゴマダラは幼虫のときから毒素を含むホウライカガミ(写真④)など,限られたものしか食べません。そうすると、成虫になったあともこの毒が体内に残っているため、鳥などの外敵に襲われにくいそうです。  写真④ アルカロイド系の毒をもつホウライカガミ  そう言えば、オオゴマダラを観察しているとき、私のすぐ近くを飛んだり、花や葉に留まっているところをアップで撮ろうとカメラを近づけたりしても逃げないのは襲われないという自信があるからなのでしょう。    さて、本題はここからです。写真⑤を見てください。   写真⑤ 確かに脚は4本しか・・・  オオゴマダラの脚に注目して下さい。よくよく見ると、脚が手前に2本、奥に2本の4本しか見あたりません。蝶を含め、昆虫の脚は6本のはず。じゃ、オオゴマダラは昆虫じゃない?  実は前脚の2本は折りたたんで使われることなく、実質、機能が退化しているのです。これは、マダラ

ちいさな大発見!? No.45(2019.7.5)‘イヌ’がつく植物!

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 今回のテーマは「犬」です。   黒柴のアースくん、5歳!  植物園の正門からまっすぐ園内に入ると,たぶん,鳥が運んできたのでしょう。1株の「イヌホオズキ」が咲いています。ナス科ナス属の1年草です。漢字では「犬酸漿」と書き,白い5枚の花弁と黄色い雌しべの柱頭が目立ちます。(写真①) 写真① 花弁が反っている「イヌホオズキ」  花はとても可憐で,すでに緑色の実(写真②)もちらほらと見ることができます。別名を「バカナス」と言い,ホウズキやナスに似ているが,食べられず役に立たないという意味があるそうです。全草に毒があり,口にすると危険です。 写真② 緑色の実がぶら下がっている!  また,バラ園の南側の斜面に「イヌビワ」が実(写真③④)を付けています。漢字では「犬枇杷」と書き,ビワの仲間ではなく,クワ科のイチジクの仲間になります。その証拠に枝葉を傷つけると,イチジク特有の白い液体が出てきます。 写真③ 大きさは1~2cmくらい   写真③ 完熟目前,落果していた!  「イヌビワ」は雌雄異株で雌木にできた実は少し甘くて食べることができます。しかし,こちらもビワやイチジクほどは美味しくないようです。  植物界にはイヌがつく植物がたくさんあります。例えば,イヌエンジュ(犬槐)、イヌガシ(犬樫),イヌシデ(犬四手),イヌショウマ(犬升麻),イヌタデ(犬蓼),イヌツゲ(犬黄楊),イヌマキ(犬槙)、イヌムギ(犬麦)など,全部で100種類以上もあるそうです。  さて、このイヌですが,もとの種と比べて姿や質が劣るという否定的な意味あいで使われています。ですから,漢字で表すと,本当は「犬」ではなく,「否」(いぬ)なのです。 【解説員K】

葉の上に実がついた!(2019.7.4)

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 葉の上に実!?  4月25日のブログに「葉の上に花?」というタイトルで珍しい花として紹介されたハナイカダ【花筏】(ミズキ科)。その後、実が成長して黒く熟してきました。復習ですが、この形態は葉の上にいきなり花が咲いて実をつけるのではなく、花の軸が葉の主脈と合着しているため葉の上に花が咲いたり実をつけるように見えるのです。  熟した実を見ると、この姿を筏を操る船頭に例えて名前をつけた先人のネーミングのセンスにあらためて感心します。  この時期、葉の上に実をつける種類をもう一つ見ることができます。  葉の上に赤い実をつけているナギイカダ【梛筏】(ユリ科)です。針葉樹園の中で観察できます。   この植物も葉の上に実がついているように見えますが、葉のように見えるのは「葉状枝」と呼ばれる茎が平たく変形した偽葉です。ちなみに、偽物ですが葉の代わりにきちんと光合成を行うそうです。この花も、まるで葉の上にいきなり咲くように見えます。  花は3月ごろ咲きます。小さい花ですがよく見ると内花被と外花被がそれぞれ3枚ずつあってきちんとユリ科の咲き方になっています。  和名はこの偽葉がナギの葉に似ており、花や実はハナイカダのようにつくことから名付けられています。  なお、この偽葉の先端は針状になっています。よく見ようとしてうかつに触るとチクリと痛いのでご注意ください。                                          (解説員)

ちいさな大発見!? No.44(2019.7.2)野原で見られるランの花!

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 みなさんは胡蝶蘭やカトレアなどのランは好きでしょう。最近ではずいぶんと安く購入できるようになったようですが,まだまだ高価な花です。  ところで,野原や草地などで今の時期,普通に見ることができるランを紹介します。英名を「lady's tresses」`貴婦人の巻き毛’という意味で、「モジズリ」と言います。「ネジバナ(写真①)」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。何とラン科の多年草です。 写真① 立派なランの仲間ですよ!  高さ10~30cmほどの小型種です。ランの仲間というくらいですから,あの小さな花のつくりはどうなっているのでしょうか。ちょっと拡大顕微鏡で撮影してみました。 写真② 1つ1つはカトレアの花に似ています!  ところで「ネジバナ」というくらいですから,じっくり観察してみると,右巻きと左巻きの個体があり,その割合は,ほぼ1対1のようです。写真③④ 写真③ 両方とも右巻きですね。 写真④ 左は右巻き,右は左巻き!  さて,右巻きか左巻きかの定義ですが、株本(根っこ)から見た時と,上から見たときとでは当然,逆になります。ここでは,上から見て、時計と反対回りに巻き付いていく巻き方を右巻き,その逆を左巻きとします。 すると,写真④の左は右巻き,右は左巻きとなります。このようにらせん状になっているのには,花茎をまっすぐに立たせるためにバランスをとっていると言われています。  ちなみに,写真④は同じ個体から右巻き,左巻きが出現しています。  中にはらせん状になっておらず,ほぼ一列になっている個体(写真⑤)もあります。また,花色も濃いピンクに薄いピンク,白と存在するそうです 写真⑤ らせんがゆるやかで,色も薄いピンク!  一般に植物の蔓の巻き方は、種類によって決まっていて、アサガオやキウイフルーツは右巻き、フジやヘクソカズラは左巻きです。ネジバナのように両方が見られる植物は割と少ないようです。余談ですが,植物界全体を見渡したとき,右巻きが圧倒的に多いとのこと。  本園では水生植物園や花木園Bの梅園ゾーンで咲いています。みなさんもじっくりとネジバナを観察してみませんか。 【解説員K】