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ちいさな大発見No.103(2020.9.25)リコリスの仲間?!

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  この時季,郊外を走ると,車窓から田の畝を真っ赤に染めたヒガンバナが目に入ってきます。植物園でも園内のいたるところで紅白のヒガンバナ(彼岸花)が咲き誇っています。  ヒガンバナは,球根(鱗茎)が有毒であり,その性質を生かして田の畝に植えられました。理由は2つあり,1つは大切な稲をネズミやモグラなどから守るため。もう1つは飢饉時の救荒植物として,しっかり水にさらして毒抜きを行い,貴重な食料とするためです。  また,鮮やかな黄色のヒガンバナも咲いています。ショウキズイセン(鍾馗水仙)です。  この赤いヒガンバナと黄色いショウキズイセンが交雑してできたのが,シロバナマンジュシャゲと言われています。しかし,日本のヒガンバンは種子ができません。一方,中国原産のシナヒガンバナは稔性種のため,種子ができるのです。  ところで,白花と言っても,実際はクリーム色をしており,それも,微妙に濃淡があります。これは,生育環境や太陽光の当たり具合が原因の1つだそうです。  花型にも大きく2つのタイプがあり、ヒガンバナのように花弁が反転するものと、ナツズイセンのようにユリに似たラッパ状のものがあります。  日本のヒガンバナは不稔性のため,球根で増えるしかなかったわけですが,今は園芸種も含め,交雑が進み,リコリスとして多様な園芸種が増えています。  ナツズイセンやキツネノカミソリなども含め,みんなリコリスの仲間です。  花型や花弁の色,蕊の長短など,その違いをじっくりと観察してみませんか。 【解説員K】

ちいさな大発見No.102(2020.9.21)ナスのお友だち?!

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 野草園でナス科ナス属のツルハナナス(別名ヤマホロシ)が咲いています。南アメリカ原産で常緑のつる性植物です。  雌しべが突出している  蕾の時期や開花してすぐは紫色をしていますが,やがて白くなって散っていきます。学名に jasminoidesとあり,これはジャスミンのようなという意味で,花には芳香があります。  同属で同名にヤマホロシがありますが,本種とはまったく別種です。  ところで,ナスはもちろん,ジャガイモやトマトも同じナス属です。写真がないのが残念ですが,花のつくりはみんなそっくりですよ。  そこで,今,園内で観察できるナス属の植物を紹介します。  植物園エントランス横のブッシュの中で,ヒヨドリジョウゴが咲いています。反り返った花びらが特徴ですが,やっぱり晩秋に色づく果実は光沢があり美味しそうです。しかし,この実には毒がありますから要注意です。 果実の写真は昨年12月26日撮影  情報館前のコスモスの脇で,1年草のイヌホオズキ(犬酸漿)が咲いています。別名をバカナスと言い,ジャガイモの芽にあるソラニンという毒を持っています。こちらは光沢のない黒い実ができます。 史前帰化植物と言われている  また,イヌホオズキに似ていて,外来種のワルナスビがあります。葉や茎に棘があり,地下茎でもどんどん増えるとてもやっかいな植物です。  次はもちろん食べられませんが,観賞用としてつくられた植物を紹介します。  情報館前のトイレ傍で咲いているアフリカ原産のヒラナスです。果実は白から黄、オレンジ、赤へと変化します。 ナスの台木として使用!  同じく情報館前の鉢の中でフユサンゴが咲いています。メキシコやブラジル原産で果実の変化はヒラナスと同じです。運がよければ4色の果実を見ることもできますよ。 赤い実は強毒です!  針葉樹園花壇ではツブシロナスが咲いています。花と果実の両方を見ることができます。   他にも生け花などで使用されるフォックスフェイスなどがあります。狐の顔に似ている黄色い果実です。  朝夕はめっきりと涼しくなってきました。是非,植物園にお出で下さい。 【解説員K】

ちいさな大発見No.101(2020.9.19)珍しい白花!?

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  ハーブ園で紅白の小さな花がたくさん咲いています。フウロソウ科のゲンノショウコ(現の証拠)です。 白花も咲いています!  以前,ちいさな大発見No.53(2019.10.12号)でゲンノショウコについて書いています。今号では,少し違う視点で掘り下げてみたいと思います。  1つめは花色と地域性についてです。  福岡でゲンノショウコと言うと,紅色です。実際,私は自然の状態で白花を見たことがありません。一般的に西日本では紅花,東日本では白花が主流です。そして,日本の真ん中に当たる中部地方(愛知県や岐阜県など)では,紅白ほぼ半々の割合で存在するそうです。  ところで,西は紅花,東は白花が多いのはなぜでしょう。ご存知のように,ゲンノショウコは「医者いらず」の別名があり,ドクダミやセンブリと並び,日本古来の3大民間薬として知られています。例えば,西日本では,どこでも見かける紅花より,レアな白花に高い薬効があると信じられ,白花が採取され減っていったのではないかと言われています。ちなみに紅白共に薬効は変わらないそうです。  2つ目は雄性先熟についてです。みなさんは雄性先熟と言う言葉をご存知ですか。雄しべが熟したときにはまだ雌しべは生長しておらず,おしべが老いて役目を終えた頃に雌しべが伸びて熟し,他の花からの花粉を受け入れることです。これは自家受粉を避けることが理由です。写真で確認してみましょう。  左は雄しべの葯がたくさん!   雄しべが脱落し,雌しべが充実!    ついでに,別名のミコシグサについてお話しします。  先ず,5枚の花弁が落ちると5枚の萼片の中央にある雌しべの柱頭が長く伸びて先が5つに分かれます。 先端に雌しべの名残りが  この長く伸びた鞘の中に種はできず,柱頭の根元に5つの種ができます。そして,種が熟すと鞘が下側から縦に5つに割れ、鞘がクルクルと勢いよく巻き上げるはずみで、種子を1つずつはじき飛ばすのです。  種を弾き飛ばした後の姿を御輿の屋根に見立てて,ミコシグサ(御輿草)の別名が付いたそうです。  ゲンノショウコの御神輿をじっくり探してみませんか。 【解説員K】

“うしろより追ひかけてくる暑さかな”俳句小屋の展示作品を入れ替えました(2020年9月11日)

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  先日,俳句小屋の展示作品を入れ替えました。8月もご投句ありがとうございました!今回も投句していただいた作品のほとんどを展示しています。その中から数点ご紹介します。 猛暑続きだった8月は,その暑さを詠んだ作品が目立ちました。 “うしろより追ひかけてくる暑さかな” 美知子 “打ち水を枯れた花にも掛けてやり” 脩 “夕涼みトラ・ライオンも右往左往”  よしき “暑い夏冷たいアイスかじりたい”  りつ 追いかけられ,追いつかれ,逃げ場のないような連日の暑さ。植物達もぐったりしていて,水やりはかかせません。 そしてもう一点。 “さみどりのトンネル蔵す鉄砲百合” (さみどりのトンネルぞうすてっぽうゆり) ※先生の添削により,写真の表記と違う箇所があります。 さみどり【早緑】とは,若葉のような明るい緑色のこと。蔵すとは所蔵すること,つまり内にしまっているという意味だそうです。さみどり色のトンネル,くぐってみたいですね!また,テッポウユリは,福岡市植物園では6月に見頃を迎えていました。 俳句の展示は,当園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃先生のご協力のもとに行っており,約1か月おきに入れ替えています。投句は野草園休憩所(俳句展示スペース)と緑の情報館1階のポストで受け付けています。初心者の方も大歓迎です。みなさんのご投句を,お待ちしています! ※今回展示している俳句の一覧です。 <俳句係M>

ちいさな大発見No.100(2020.9.1)ウコン!?

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 みなさんは「ウコン」と聞いて何を思い浮かべますか?  やっぱり某食品メーカーが出している二日酔いに効くと言われる「ウコンの力」でしょうか?私も若い頃,少しだけお世話になったことがあります。また,英名のターメリックより,カレー粉の原料を思い浮かべる人もいることでしょう。カレ-が黄色いのはウコンの黄色色素(クルクミン)によるものです。  ところで,ウコンの花や葉を見たことがありますか。ウコンはインド原産でショウガ科クルクマ属の多年草です。 葉はバナナやカンナによく似ています。 左が秋ウコン,右が春ウコン  今,ハーブ園では秋ウコンの花が咲いています。実はウコンには春ウコン,秋ウコン,紫ウコンなどがあります。やっぱりいちばん有名なのは秋ウコンで所謂,「鬱金」です。 ウコンの花  白い花弁に見えるのは葉が変化した苞葉で,中央下で黄色く見えているのが本当の花です。葉の中に頭を突っ込んで,香りを嗅ぐと,かすかにウコンの匂いがしました。  また,春ウコンは姜黄(キョウオウ)と言い,花は苞葉全体がうすいピンク色です。 6月9日撮影  最後にクルクマ属ということで,同じ仲間のクルクマを紹介します。Curcumaはアラビア語でウコンを意味するそうです。切り花で,とても長持ちするので,人気がある花です。クルクマ・シャロームなどが有名ですね。  写真は3週間前に購入したクルクマです。他の花は枯れてしまいましたが、こちらはまだ頑張っています。 【解説員K】