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1月, 2019の投稿を表示しています

ちいさな大発見!? No.22(2019.1.31)ツバキの蕊の弁化?

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 明日からイヨイヨ2月に入ります。  本園では花木園Bを中心にいろいろな種類のツバキが咲き始めています。  そこで,いくつかのツバキには本来あるべきものが少ない,または全くない種類があることに気が付きました。一般にツバキの花はめしべ1本,おしべ多数というのが普通ではないでしょうか。写真① 写真①「ツバキ曙(一重・椀咲き)」  ところが,写真②「ツバキ熊谷」を見てください。こちらは一重の平開咲きです。多くの雄しべに混ざって,数本の雄しべが花弁化しています。写真で白く見えているものがそうです。これを旗弁(きべん)と言います。  写真②「ツバキ熊谷」  写真③は正常な雄しべと旗弁を拡大したものです。ちなみに,同じ木の中でも旗弁がまったく見られない花もありました。 写真③「ツバキ熊谷」の正常な雄しべと,旗弁  それでは,次の写真④「ツバキ紅唐子(べにからこ)」を見てください。 写真④「ツバキ紅唐子(唐子咲き)」  こちらは,中央に1本の雌しべが見えていますが,雄しべは完全に旗弁化しています。別名を卜伴(ぼくはん)とか,日光(じっこう)と言います。また,雄しべが白弁状になるのが,「日光」に対し「月光」と言います。  最後に写真⑤「乙女椿」を見てください。 写真④「乙女椿」  「乙女椿」は,八重咲きどころか,千重(せんえ)咲きという咲き方です。1枚づつ花弁を剥がしてみましたが,雄しべや雌しべは全く見られませんでした。  一般にツバキは八重化しやすく、雄しべも花弁に変化しやすい形質があるそうです。ですから,これのようなツバキの種類では,雄しべや雌しべが正常に作られないので、結実することは難しく,種子はほとんどできません。    今、植物園ではカンザキハナナや園芸種のウメ、大輪から極小輪までの多くのツバキ、そして、開花したばかりのカワズザクラやフクジュソウなど、見ごろの植物がみなさまのご来場をお待ちしています。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.21(2019.1.24)カワヅザクラ

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 秋咲きのジュウガツザクラとコブクザクラがポツポツと咲き続けている中、春を告げる桜として1月23日、ついに「カワヅザクラ」が開花しました。昨年よりは1ヶ月ほど早いようです。 開花第1号の「カワヅザクラ」  本園には3本のカワヅザクラがありますが、そのうちの1本です。他の2本はまだ蕾があおく、開花にはもうしばらくかかりそうでです。  カワヅザクラは、「オオシマザクラ」写真②と「カンヒザクラ」写真③が自然交配してできた桜だと言われています。 写真②「オオシマザクラ」  写真③「カンヒザクラ」  今から60年以上前に、静岡県の河津町に住む飯田氏が河津川沿いの雑草の中で偶然、1mほどの原木を発見し、自宅に持ち帰ったことが由来です。その後、新しい園芸品種であることがわかり、昭和43年に河津桜と命名されました。  特徴としては、1月下旬から咲き始める早咲きであること、花の色がソメイヨシノなどより濃いこと、花期が1ヶ月程と比較的長いことなどが挙げられます。  是非、植物園においでください。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.20(2019.1.24)

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 問題です。下の写真①は何という花か,わかりますか? 写真①  実際の花の大きさは直径7~8mm程度、基本5弁花です。密集(写真②)して咲いています。 写真②  そうです。「ワスレナグサ」ですね。針葉樹園花壇に1株だけ咲いているのを見つけました。写真③ 写真③「針葉樹園花壇のワスレナグサ」  ムラサキ科ワスレナグサ属でヨーロッパが原産です。向こうでは常緑多年草ですが,高温多湿な夏が苦手なため日本では一年草扱いにされています。 ちなみに,「ワスレナグサ」は和名であり,一般には,「シンワスレナグサ」を指すことが多く,他にも「ノハラワスレナグサ」や「ノハラムラサキ」,日本に自生する「エゾムラサキ」,その種間雑種も多いそうです。  英名ではフォーゲット・ミー・ノット(forget me not)と呼ばれ、ある悲しい伝説があるそうです。  それは,中世ドイツの話です。騎士ルドルフとベルタがドナウ川のほとりを歩いていると,川岸にかわいい花を見つけました。それに気づいたルドルフは,その花を採ろうとして足を滑らせ川に落ちてしまいました。急流に流されるルドルフは花をベルタに投げ、彼女に「僕を忘れないで」と叫んで水中に沈んでいったそうです。  その花がワスレナグサだったのです。可憐なワスレナグサですが,こんな悲しい秘話があったのですね。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.19(2019.1.17)「サザンカ笑顔」

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 郷土樹木園では,すでに満開の時期は過ぎましたが,「サザンカ笑顔」が可憐なピンクの花をたくさん咲かせています。写真① 写真①「まだまだ見頃のサザンカ笑顔」  ところが,足元を見ると,多くの散った花弁に混じって,花弁とおしべをつけたまま,まるでツバキの花の特徴そのままに花ごとすっぽりと落ちているのを見つけました。それもいくつもです。写真②  写真② 「サザンカは花弁が1まいずつ散るはずなのに,なぜだろう。もしかしたら,カラスのいたずらかな?」と, ふと思いました。  みなさんご存知のように,サザンカは300種類程の園芸品種があり,開花時期や花の形から大きく3つのグループに分けられます。  1つは,サザンカの自生種がベースになっているサザンカ群,もう1つは獅子頭(寒椿)がベースになっているカンツバキ群,そしてサザンカと主にヤブツバキとの交雑によって生まれたハルサザンカ群です。  サザンカ笑顔はハルサザンカ群に属し,ヤブツバキに近い性質をもっているようです。ですから,本種も花弁とおしべが基部でかるくつながっており,写真②のような散り方をしていたのです。  そして,花弁とおしべが散った跡には,複数枚のガクと子房から伸びた1本のめしべだけが残り,その先っぽは写真③のように3つに分かれていました。 (写真③)  ちなみに,同じ仲間で「サザンカ梅ケ香」が野草園西で咲いていますが,同じハルサザンカであるにも関わらず,そちらは他のサザンカ同様,1枚ずつ花弁を散らしていました。(写真④) (写真④)  ハルサザンカ群の園芸種の中でも,交雑を繰り返してきている長い歴史があるので,よりサザンカに近い種とツバキに近い種があり,同じ仲間とは言え,かなり幅が広そうです。 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.18(2019.1.14)

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 野草園を廻っていると,地面から出てきている何やら気になるものを見つけました。  それは,まるでウミガメの頭のような形をしており,大きいもので高さが10mm,直径が12mm程です。 それが,固そうな土の中からいくつも顔を出していました。(写真①) 写真①(1月10日撮影)  通路側に回ってみると手前に銘板があり,それには次のように書かれていました。(写真②) 写真②  「アッ,福寿草かぁ!」と思わず叫んでしましました。  「フクジュソウ」は、春を呼ぶ縁起物の植物です。旧暦のお正月の頃に咲いていたので,別名を「ガンジツソウ 元日草」と言います。今年の旧正月は2月5日ですので,その頃に咲くのではないでしょうか。  ちなみに,一昨年の記録では2月15日に次のような状態でした。(写真③)  今年はもう少し,開花が早いかなぁと思っています。 写真③「フクジュソウ」 【解説員K】

ちいさな大発見!? No.17(2019.1.5)ヒヨドリジョウゴ

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 植物園入り口脇にヘデラがスロープに沿って繁茂しています。  その中にひときわ目を魅く真っ赤なサクランボのような実がぶら下がっていました。(写真①) 写真①  早速調べてみると,ナス科のヒヨドリジョウゴです。漢字では「鵯上戸」と書きます。「鵯」は野鳥のヒヨドリを,「上戸」はお酒の好きな人。また、酒飲みを意味しています。  つまり,熟した果実にヒヨドリが群がって食べる様子が、酒に酔った人たちが騒ぐ様子に似ているというのが名前の由来だそうです。どうやら,この実は,ヒヨドリの大好物ということらしいのですが,実際にはヒヨドリがこの実を食べている様子は、ほとんど観察されていないとのことです。  じっくりと辺りを見ていると,まだ熟していない青い実も見つけました。(写真②) 写真②  ところが,  写真③④を見てください。これは植物園入り口脇にあるトイレの屋根の様子です。こんな場所でヒヨドリジョウゴがびっしりと実っていました。 写真③ 写真④  トイレの屋根に落ち葉が積り,そこにヒヨドリなどの野鳥の排泄物から芽吹いたものだと思います。ヒヨドリが食べたと限定はできませんが,少なくとも鳥はこの実を食べることが証明されたのではないでしょうか。しかも,枯れた蔓がたくさん見られますので,毎年,この場所で花が咲き,実ができていると思われます。 【解説員K】

“水仙の立ち去るときに匂ひけり” 俳句の展示入れ替えました。(2019.1.3)

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 野草園の休憩所内に展示している俳句の作品を入れ替えました。  その中からいくつかの作品をご紹介します。  冬になり,植物園では落葉樹の葉がほとんど落ちてしまいました。  園内の紅葉樹園もそうです。  一方で,林床はニホンズイセンでびっしりと覆われて,見ごろを迎えています。    “水仙の立ち去るときに匂ひけり” 松尾康乃   (すいせんのたちさるときににおいけり)    ヒガンバナ科のスイセン属は,地中海沿岸から北アフリカ原産で約30種あると言われています。 このうち日本で自生しているのはフサザキスイセンやニホンズイセンで, 古くペルシアからシルクロードを通って中国にもたらされ, それが海流か人の手で日本へ渡ってきた,とされています。  個人的には日本的な印象があるスイセンですが,紅葉が終わった紅葉樹園で, スイセンが咲き誇る地中海を想像してみるのもいいかも。  冬になり,落葉樹の葉が落ちてしまうと,天気の良い日には青い空から 太陽の光がさんさんと園内の隅々に差し込んできます。  そんな中,静かな園内をのんびり散策するのも,春や秋と一味違って, 気持ちのいいもんです。   “病ひとつたずさえ歩く枯木立” まめ   (やまいひとつたずさえあるくかれこだち)  冬になり,落葉樹の葉が落ちてしまうと, これまで事務所から見えなかった園内の芝生広場の様子が分かるようになりました。  写真の右奥に人が集まっているのが分かりますか?  なんと「たき火」をしてるんです!  植物園では,12月から2月までの日曜日と祝祭日に,イベントとして 「焚火の時間」を実施しています。 火事にならないよう,落ち葉をきれいに掃いて耐火レンガを敷き,バケツに水を準備し, 職員の管理のもとで,安全にやっています。もちろん消防局にも届けを出しています。  園内の剪定枝を有効活用して,お客様に暖を取ってもらったり,  福岡市都市緑化基金に寄付いただくと,  焼き芋体験(1個100円から)や焼きマシュマロ体験(1個10円から)ができます。 冬の植物園にも,ぜひお越しください! *今回展示している俳句の一覧です。 (園長 井

亥年にちなんだ植物(2019.1.2)

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2019年の干支は亥(猪)。近年は農林業に深刻な被害を与えたり市街地に出没するなど、なにかとニュースになる場面が多い動物ですが、例年どおり干支にちなんだ植物を紹介します。(トップの写真は福岡市動物園のニホンイノシシ ブーちゃんです。)  ヒユ科のイノコヅチ【猪子槌】です。本州、四国、九州の山野、路傍で普通に見られます。とげが衣服や動物に付着するいわゆる「ひっつき虫」の一種です。  和名は、茎の節が膨らんで、猪子の膝のように見え、これを槌に見立ててこの名がついたそうです。  その他、イノシシにちなんだ植物名としてはシシウド【猪独活】(セリ科)があります。  冬場にイノシシが掘り返して食べることから名付けられたそうです。  ところで干支は中国の神話時代からの習俗が起源で、元々十二支の「亥」は豚を表していたのですが、我が国に伝来した時にはまだ豚はいなかったので野生の猪を当てたということです。そのため、中国、台湾や韓国などでは2019年は「豚年」だそうです。  ということで、おまけに「豚」にちなんだ植物を探してみました。     「豚」といえば身近なものではブタナ【豚菜】やブタクサ【豚草】(どちらもキク科)などが思い浮かびますが、意外なのがシクラメンで和名はブタノマンジュウ【豚の饅頭】。 イタリアのシシリー島ではイノシシがシクラメンの球根を好んで食べるので「豚のパン」(英語でsow bread)と呼ばれていたことにちなんでつけられているそうです。  新年1月2日からは、緑の情報館1階で干支にちなんだ植物や新春にふさわしい「千両」や「金の成る木」など縁起の良い植物を紹介する「新春植物展」を開催しています。  2019年亥年新春にどうぞご覧ください。                           (解説員)