ドングリの枝を切り落としたのはだれだ?(2021.9.2)

  コナラ【小楢】のドングリの今の様子です。春に受粉して秋には熟す一年成のドングリで、夏の暑さの中で順調に大きくなっています。

 本数が多いので園内の随所で見られる種類ですが、この時期、木の周辺にはドングリと葉をつけたままの枝先がポトポト落ちているのが目立ちます。落ちている切り口を見てみると、まるで刃物をあてたようにスパッと「切られて」います。
 せっかく大きく育っているドングリを、落としてしまうのは一体だれのしわざでしょうか?資料をいろいろと調べてみると、犯人はゾウムシの仲間のハイイロチョッキリという昆虫のようです。
 ハイイロチョッキリは長い口吻(こうふん)と呼ばれるもので穴をあけて卵を産みつけて、その後枝先をチョッキリと切って落とします。鱗状になっている殻斗(かくと・お皿のこと)のところに黒っぽく見えるのが産卵の穴です。穴のところをカッターで切断してみました。
 卵は見えませんが、殻斗を抜けてドングリの中までしっかりと口吻を差し込んだ様子がうかがえました。
 秋にドングリ拾いをしてしばらく置いておくと中から「ドングリムシ」が出てくることがありますが、あの正体はハイイロチョッキリをはじめとするゾウムシの仲間の幼虫なんですね。卵からかえった幼虫は、ドングリの中身を栄養として食べてしまったら、土の中にもぐって越冬します。
 ハイイロチョッキリは卵を産みつけたあと、なぜ枝先をチョッキリと切り落とすのでしょうか?
 資料を調べてみると、いろいろな理由があげられています。
 ・地上に落としておくと、幼虫が土の中にもぐり込みやすいから
 ・同じドングリに、仲間や他の虫が重複して産卵しないように
 ・卵に適した温度・湿度などの環境を地表で保つため
 ・食害された(産卵穴をあけられた)ドングリが、防衛のための物質を出さないように
  ...などなど 
 まさに「諸説あり」ですが、いずれにしても大事な子孫を守るためにハイイロチョッキリが身につけた巧みな「生き残り戦略」のようですね。

 その他のドングリの現在の様子です。
 芝生広場のカシワ【柏】、一年成でモシャモシャの殻斗が特徴的なドングリです。ここ数年結実が見られなかったので、秋に熟すのが楽しみです。
 秋に開花するシリブカガシ【尻深樫】、動物園南園、オランウータンの近くの斜面で咲いています。
 二年成のアベマキ【棈】、本格的な秋を前に早くも熟して地面に落ちています。

 秋には園が再開されて、子どもたちに人気のあるドングリを楽しんでもらいたと思います。                                (解説員)







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