第27回福岡市植物園 植物画コンクールの入賞作品決定!
厳正な審査の結果、第27回福岡市植物園植物画コンクールの入賞作品が決定しました。
今年で27回目となり4半世紀以上に及ぶ歴史を重ねた当コンクールに、一般(26点)・中高(83点)併せて109点の作品をお寄せいただきました。ご応募いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
福岡市の「一人一花運動」の輪は確実に拡がっており、植物園はその拠点として様々な取組みにチャレンジしています。また、福岡市では「Fukuoka Art Next」も展開されており、当コンクールは、市全体で高めようとしている二つのプロジェクトの交わるところに位置づけられると言えるでしょう。一方では、一般の部応募作の半数以上が福岡市外からで、ネット等を通じて広く認知されていることも伺われました。
植物画は、植物の特徴の正確な描写と、芸術作品としての美しさとの両立を目指します。植物の姿を記録し、その美しさを表現するという点で、植物画と植物写真は目的を共有しています。しかし、目の前にある瞬間を切り取る写真に対して、植物画では、同時に見ることが出来ない時間を追った変化や、外部の形状と切断面、異なる視点からの像(例えば、全体図と拡大図、葉の表と裏)を一枚の中で表現することもできます。以上のような植物画の特性を生かした作品が、特に中高の部では例年と比べて多く見られました。植物画は、植物の健康な姿を描くのが基本とされており、虫に食われた部分や病気に冒された部分、欠けた部分を避けて描くことが推奨されることもあります。一方、病徴や食痕が種の特徴を示す場合もあって、今回の審査に当たって、迷った点・意見が分かれた点の一つです。
では、入賞作品を講評を添えてご紹介します。
【一般の部】
福岡市長賞
金野 博子 様 「ナツツバキ」
(福岡県小郡市)
群がりつく雄しべと細かく波打つ花弁の精密な描写が眼を惹きました。蕾から花後までの様々な段階を含めた点、花期の勢いがある葉と果期の衰え始めた葉との対比も見事です。開花初期の花では雄しべに埋もれている雌しべが、花後の図で描写されることで補われている点に作者の配慮を感じました。
西日本新聞社賞
叶屋 多嘉子 様「フユイチゴ」
(山口県美祢市)
葉の表裏の対比が面白く、葉裏・萼片・茎を覆う毛も巧みに表現されています。葉の虫食いや傷みが丁寧に描かれ、損傷部の周りを褐変させてダメージに耐える逞しさが伝わってきます。この植物は花や果実の形状も味わい深いので、拡大図があればと感じました。
(東京都杉並区)
花の中心で盛り上がるほどに折り重なる雄しべの葯が、咲いて間もない花の瑞々しさを引き立てています。左下に置かれた花後の図も極めて精密です。開花初期の花では雄しべに埋もれている雌しべが、花後の図で描写されることで補われている点に作者の配慮を感じました。
(兵庫県明石市)
地下部・地上部の全てを収めた作品で、葉鞘や苞、茎の切断面など疎かになりがちな部位も完璧に再現しています。花の拡大図やさび病で枯れた葉先がアクセントになっています。
【中学生・高校生の部】
福岡市長賞
入江 陽奈子 様「プリムラ」
(福岡市立席田中学校 2年)
花や葉の描写はもちろんですが、花柄や葉の基部が隠れない視角の設定、全体図に欠けている情報を補完する蕾と花の縦断面の選択も的確です。
西日本新聞社賞
岩松 香弥 様「トチノキ」
(福岡県立筑紫丘高等学校 2年)
樹木から花・果序・葉・果実とパーツを抜き出して大振りな掌状複葉を中央に配した構成に感心しました。葉裏を見せている点も行き届いており、葉脈や葉縁の描写も正確です。各パーツに倍率が添えてあれば、サイズ感も伝わったかと思います。
田中 瀬月 様「クリスマスローズ」
(福岡市立席田中学校 2年)
一般・中高とも、上位四点と優秀・佳作六点の差は小さく、惜しくも選外とした作品も少なくありません。部分図が拡大率・視点・精細さ等において全体図と差別化されていない(全体図に無い情報を補うという関係になっていない)といった、ちょっとした気配無で審査結果が分かれたケースもありました。
また、審査ポイントではありませんが、動植物園カレンダーの月毎のページに転載する作品を入選作品から選びますので、対象の植物を選ぶとき季節感を心に留めるのも一法かと思います。
次回も多数の作品のご応募をお待ちしております。
審査委員長 福原 達人
全入選作品は、(公財)福岡市緑のまちづくり協会ホームページにてご紹介します。
なお、第27回分は準備が出来次第公表となります。
また、youtubeでもスライドショーで、全入賞作品をご紹介しています。
第27回福岡市植物園植物画コンクール入賞作品スライドショー
(運営係 藤田)
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