”白き手を振るがごとくに芒かな”俳句の展示を入れ替えました(2016.10.11)





野草園の休憩所内に展示している俳句作品を入れ替えました。
今回展示した句の中から、いくつかご紹介します。

”白き手を振るがごとくに芒かな” 新藤和子
(しろきてをふるがごとくにすすきかな)


”芒(ススキ)”は秋の七草の一つです。
秋の七草は、万葉の歌人、山上憶良が選定したもので、その歌中では「尾花(おばな)」という名前で登場しています。
ススキは、この「尾花(おばな)」の名前の他に、「袖振り草(そでふりぐさ)」の別名も持っています。
「袖振る」という言葉は、昔は、別れを惜しんで袖を振ること、つまり手を振るしぐさを表したそうです。



作者が詠まれた句は、まさに「袖振り草」そのものです。
高原に遊びに行った帰り、風にゆれるたくさんのススキたちが別れを惜しむかのように手を振る、そんな情景が浮かんできます。私も、この秋、阿蘇か九重に遊びに行きたくなりました。







”コスモスや風かたまつて動かざる” 有田真理子
(コスモスやかぜかたまってうごかざる)


コスモスはキク科の一年草で、北米メキシコの高原地帯が原産地です。
日本ではこの時期になると各地の広大なコスモス畑が話題となり、秋の行楽シーズンの到来を知らせてくれます。



句に詠まれたコスモスたちは、一定の力で吹き付ける風を受けて、少し傾きながらも皆でじっと耐えているのでしょうか。
実体のないはずの”風”が”かたまる(固まる)”という表現が秀逸です。


コスモスが見頃となる10月は、肌寒さを感じ始める頃です。
句を読んでいると、まもなくやってくる冬の気配を感じます。


俳句を展示している野草園では、フジバカマとタイワンホトトギスとアサギマダラの競演を見ることができます。


*この展示は、植物園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃主宰のご協力のもとに展示しており、約1か月おきに入れ替えを行っています。

*展示場所はこちらです。
*展示している俳句の一覧です。

(園長 上田)
















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