サクラをはじめ花が次々に咲いてまさに春爛漫の園内ですが、庭木園の一角ではモミジが紅葉しています。普通紅葉といえば秋なのでちょっと不思議な光景です。 実は、このモミジはイロハモミジの一つ「静崖(せいがい)」という品種で、鮮やかな紅色の若葉が特徴です。この若葉は、生長につれて徐々に緑色に変わっていきます。そして、秋になったら他のモミジ類と同じように紅葉するので、1年で2回紅葉が楽しめます。 庭木園には他にも鮮やかな若葉が楽しめるイロハモミジがあり、こちらはやや紅色が濃い「出猩々(でしょうじょう)」という品種です。古来より、モミジの中でも特に若葉の紅色が美しい種類を「春もみじ」と呼んでいます。 ところで、秋の紅葉はアントシアニンという赤い色の色素が葉の中に蓄積されることによって色が変化します。「春もみじ」も秋と同じくアントシアニンによって紅葉しますが、この時期のアントシアニンの役割としては、若くてまだ柔らかい組織を強い紫外線から防いでいるという説があります。葉が生長するにつれて紫外線を防ぐアントシアニンが不要になって、緑色に変わっていきます。 「春もみじ」と同じように、若葉が紅色で後に緑色に変わるものとしてチャンチン【香椿】(センダン科)もあります。福岡市内では街路樹にも使われているのでご存知の方もおられると思いますが、当園では「香りの道」で見ることができます。 また皆さんの身近なところでは、住宅の生け垣に植えられているベニカナメモチ(園芸品種名レッドロビン)(バラ科)の紅色が、この時期よく目につくと思います。 このような春の紅葉ですが、葉が生長していくにつれて刻々と普通の緑色に変わっていきます。春先の限られた間に見られる、木々たちの若葉を守るための工夫をどうぞお見逃しなく! (解説員)
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