ヤツデの葉は本当に8裂?(2020.12.19)


 私たちの暮らしの中でありふれた植物の一つであるヤツデ【八手】(ウコギ科)。身近すぎて普段気にしない植物ですが、よく見てみると興味深いポイントがいっぱい。一つ目のポイントは、艶があって手のひらを広げたような葉の裂け方。その姿から「八手」の和名がついていますが、本当に八つに裂けているのか?園内でその裂け方を調べてみました。数えると7裂とか9裂(奇数)になっていて8裂(偶数)の葉は見当たりません。

 7裂の葉

 代表的な参考資料で葉の裂け方についての記述を確認してみました。  

 (1)掌状に7~9裂する(小学館園芸植物大事典、山渓日本の樹木)

 (2)裂片の数は5~9であり、奇数のことが多い(http://had0.big.ous.ac.jp)  

 (3)通常7~9、多くて11くらいに裂けます(ヤサシイエンゲイHP)

 (4)7または9(奇数)に裂けており、8つに裂けることはない(http://ja.wikipedia.org

若い5裂の葉 

 和名については、分裂葉が数多いことを「八」で表現した(八百屋などの用例)、あるいは「八」の 字が末広がりで縁起が良いことからあえて名付けた、といった説がその由来のようで、決して8裂 だからという訳ではないようです。  

               

 ちなみに、この季節になると黄葉がきれいな同じウコギ科のハリギリ【針桐】の落葉を水生植物 園で見てみましたが、5裂あるいは7裂(奇数)で偶数のものは見当たりませんでした。  

 次のポイントはその葉の広げ方。  

               

 下になるほど葉柄を長くして葉を広げて光を受ける面積を大きくしています。ヤツデは秋から 冬、他の花が少ない時期に開花する独特の生活サイクルを持っていますが、この時期の貴重な 日照を効果的に受け止める形なのでしょう。  

注目ポイント、最後は大きな葉の支え方。

               

 大きく広げた葉面と光を受けるために長く伸ばした葉 柄、それらを支えるため茎と葉柄は大きなV字形でつながっています。

                 

 これが葉の落ちた後のアップ。葉痕(ようこん)と呼ばれます。V字の中に見える粒々は維管束 (いかんそく;水分や養分の通る管の集まり)の痕跡です。

 こんな寒い時季に花を咲かせるカミヤツデを前回ブログで紹介しましたが、同じように花を咲か
せるヤツデもなかなか見どころが多い植物です。
                                                     (解説員)

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