気になる落葉(2021.12.19)

 先日、緑の情報館相談コーナーに中央区在住の女性がお見えになり「熊本に出かけた時、気になるイチョウの葉があったので拾ってきました」とのこと。トップの写真がそれですが、葉の幅が大きいものは約15cmもあって切れ込みも深く、確かに気になる葉です。ちなみに、この葉は熊本市南区にある光徳寺というお寺さんで拾ってきたということです。そして気になる話をもう一つ「博多駅前の住吉通方面のイチョウの街路樹にもこのように変わった葉がある」との情報をいただきました。

 私は通勤でJR博多駅を利用しているので、早速帰りに調べに行きました。

 冬になって黄葉した葉はすっかり落ちていましたが、木枯らしに吹かれて植樹帯の中の吹き溜まりに重なっている葉をかき分けて探すと、ありました!
 いろいろな切れ込みの葉です。
 そして大形サイズの葉も発見。
 葉の幅は大きいものは15cm近くもありました。ちなみに上の写真は下側に標準的な葉(と考えられる)として当園内で採集した葉(幅約10cmほど)を比較のため並べています。なお博多駅前に落ちていた葉の多くは、扇形で切れ込みがないか、浅く2裂している標準的な形で幅も10cm未満のもので、このような変形・大形の葉は一部ではありますが、なぜこのような変わった葉が発生するのでしょうか?
 ヒントとして考えられるのが、このエリアの街路樹の樹形です。
 残念ながら、イチョウ本来の樹形にはほど遠いヒョロヒョロの姿をしています。
 このエリアのイチョウは、道路というさまざまな制約がある空間の中で維持管理していくために、樹形を小さくコントロールする剪定がかなり強く行われているようです。
 一般的に、強度の剪定をした後に伸びる枝につく葉は、葉が減って失われたエネルギーを補おうとして光合成量を増やす必要があり、通常より大形になります。
 この写真は、枝をぶつ切りにされた後に出てきたケヤキの葉の例です。
 ということで、強剪定の後に出てくる大きな葉というのは、樹木にとってはSOS信号になっているんです。
 ちなみに、最初にお持ちいただいた熊本のお寺さんのイチョウは、お聞ききすると過去に雷が落ちたことがあるとのこと。あの大形の葉は、雷で受けたダメージから回復するための姿だったということが考えられます。
 また深い切れ込みについては、大形化した葉は風の抵抗を受けやすくなり、風で葉がむしり取られるリスクが増えるため、風の力を逃がすために切れ込みを入れているということです。そういえば温室の観葉植物のモンステラにある葉の切れ込みも、熱帯雨林のスコールの強烈な雨風をかわす役目がありますね。
 現在、福岡市内には6千本以上のイチョウが街路樹として植栽されているとのこと。私たちの生活に身近な樹木の一つといえますが、条件が厳しい都市空間の中ではいろいろな生活形をとる必要があるんですね。
                                  (解説員)
















 

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