“春隣えだにみなぎる力かな” 俳句の展示入れ替えました。(2018.02.10)

野草園の休憩所内に展示している俳句作品を入れ替えました。


“春隣えだにみなぎる力かな” 久子
(はるどなりえだにみなぎるちからかな)


今の時期、園内を歩くと、落葉樹の枝先にはいろいろな膨らみが・・・
まん丸に膨らんだアオモジの花芽。
明るい色のピンクネコヤナギの花穂。
ピスタチオの実みたいなサンシュユの花芽、などなど。
このところ氷点下まで下がる寒い日が続いていましたが、春はすぐそこまで来ています。

紹介した句には“春隣(はるどなり)”という季語が使われています。
1月、2月頃の俳句によく使われ、文字どおり、”春がすぐそこまで来ている”ことを意味します。
この“春隣”の言葉に接する度に、なぜかしら、気持ちまでもあたたかくなってきます。
いい言葉です。




冬を代表する花、“蝋梅(ろうばい)”の句が多く寄せられました。
〈蝋梅: 芯が赤紫色なのが、ロウバイ〉

〈蝋梅: 芯が花びらと同色なのが、ソシンロウバイ〉
まずは、その花姿について・・・


“蝋梅や淡い光を凝縮す” 松岡絹子
(ろうばいやあわいひかりをぎょうしゅくす)


“蝋梅の色控へ目にけふの空” 池田ひさ絵
(ろうばいのいろひかへめにけふのそら)


“曇天やその蝋梅のつぶやきぬ” 吉田由美子
(どんてんやそのろうばいのつぶやきぬ)


“曇天を輝く色にする蝋梅” 大長清子
(どんてんをかかがくいろにするろうばい)


“蝋梅(ろうばい)”はロウバイ科で中国原産の落葉樹で、ロウバイとソシンロウバイがあります。
冬に、まるでロウ細工のような薄黄色の花を咲かせます。
光を透き通し、また反射するつややかな花びらです。
早春の植物園の楽しみの一つとして、園内に点在する“蝋梅”を見つけながらの散策もおすすめです。

〈今の時期、モデル庭園近くでは、ツバキとの競演も〉
”蝋梅(ろうばい)”の花の美しさの次は、「香り」です。


“臘梅の匂ひ拾ひてゆきし径” 西美知子
(ろうばいのにおひひろいてゆきしみち)


“臘梅の黄の見えてより香は風に” 西崎邦子
(ろうばいのきにみえてよりかはかぜに)


“詩詠みて臘梅の香に染まりゆく” 吉田由美子
(うたよみてろうばいのかにそまりゆく)


“臘梅のやさしき香り風に乗り” 越智政弘
(ろうばいのやさしきかおりかぜにのり)


“臘梅や一歩下がれば匂ひけり” 波田てつお
(ろうばいやいっぽさがればにおひけり)


“臘梅の臘といふ字と香に疲れ” 竹下美代子
(ろうばいのろうというじとかにつかれ)


“蝋梅”を語る時、「香り」ははずせません。
ソシンロウバイの方が、ロウバイよりも強く香ります。
ソシンロウバイとロウバイたちは、12月下旬から2月中旬頃までの長い間、園内各所で咲き続けます。
“蝋梅”は新春の香りであり、また春の訪れを知らせてくれる香りでもあります。

*この展示は、植物園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃主宰のご協力のもとに展示しており、約1か月おきに入れ替えを行っています。
*今回展示している俳句の一覧です。


(園長 上田)

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