「ナンバン(南蛮)」が付く植物(2020.7.2)



 野草園にナンバンカンゾウ【南蛮萱草】(ユリ科)の明るい黄橙色の花が咲いています。古名は中国の故事に因んだワスレグサ【忘れ草】で、別名トウカンゾウ【唐萱草】とも呼ばれます。九州、沖縄に分布し、海岸の近くに生える花ですが、我が国では長い間、中国からの渡来植物と推測されてきたという来歴の中で、色々な和名で呼ばれてきたのでしょう。
 和名の一つに付けられた「ナンバン(南蛮)」という言葉ですが、元々ベトナム・タイなどの東南アジア方面の意味だったのが、東南アジアに進出してきたポルトガル・スペインなどを指すようになり、植物には「外国から渡来したもの・異国風なもの」という意味で使われていったようです。
 その他、当園内で見られる「ナンバン」が付く植物を紹介します。

 3月後半頃、展望台で見ることができるナンバンキブシ【南蛮木五倍子】(キブシ科)です。 関東以西~奄美、小笠原の分布で渡来植物ではないのですが、八丈島など伊豆七島に多いので別名ハチジョウキブシとも呼ばれており、「ナンバン」は「南の方の〇〇」という意味で付けられたのでしょうか?


 次に紹介するのはナンバンギセル【南蛮煙管】(ハマウツボ科)です。ススキなどの根に付いて栄養を得る寄生植物です。園内では8月後半頃、芝生広場の一画で見ることができます。日本全土に生える在来種で、この植物も渡来植物ではありません。和名は、うつむき加減に咲く花の形が南蛮人が口にくわえるパイプに似ているので付けられています。
 
 植物の和名には、「ナンバン」の他「セイヨウ(西洋)」、「オウシュウ(欧州)」、「ヨウシュ(洋種)」など異国から渡来してきたことがうかがえるものがあります。

 現在、花木園で涼しげな淡紫色の花を咲かせているセイヨウニンジンボク【西洋人参木】(クマツヅラ科)の原産地は南ヨーロッパ~西アジアで、地中海沿岸地方に多い落葉低木です。


 和名の由来を調べることによって、その生まれ故郷やたどってきた来歴を知ることも植物の楽しみ方の一つではないでしょうか。                               (解説員)

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