読めますか?「旱蓮木」(2021.7.25)

 

 「カンレンボク」と読みます。「旱」は「旱魃(かんばつ)」という言葉があるように「ひでり」のこと、「蓮」は「はす」のことですが、中国名の意味はよくわからないようです。中国、長江以南の各省、標高1000m以上のところに分布するニッサ科の落葉高木です。当園では芝生広場の池の縁で、現在ボール状の花序をつけている姿を見ることができます。

 中国に分布する樹木がなぜ当園にあるのかというと、平成元(1989)年5月に福岡市と中国広州市が友好都市になって十周年を迎えた記念樹として贈られたものだからです。植えられてから32年を経過して十数mの大木に成長しています。中国では別名「キジュ【喜樹】」とも呼ばれており、記念植樹の看板には「生命力、繁殖力の強い木で、それを健康長寿や子孫繁栄に結びつけて喜樹と呼ばれている」との説明があります。なお、近年の研究では根に含まれるアルカロイドには制癌作用が認められているそうです。

 ボール状になった花序をアップにしてみました。花序は頂生(ちょうせい・先端につく)と腋生(えきせい・脇につく)の2タイプがあります。まず先端の球花序ですが花柱の先が2~3裂しているので雌しべの集まりのようです。

 次に脇についた球花序ですが、びっしりと雄しべが出ています。



 と、ここまで調べたところで、参考のために過去に園内で撮影されたカンレンボクの写真をチェックしていたら気になる一枚が!
          
 平成25(2013)年7月19日に撮影された花の咲き始めの写真ですが、先端の花序に出ているのは雄しべのようです。
 次の、今年の脇の花序が開く直前、つまり開花後数日経過した写真と見比べてください。先端の花序は雌しべの花柱が目立っています。
 先端の花序に雄しべ、雌しべ両方が出てています。いろいろな資料を確認してみると、カンレンボクの花はまず初めに雄しべを出して(雄性期)、次に雄しべが脱落した後に雌しべが出てくる(雌性期)という「雌雄異熟(しゆういじゅく)」という咲き方をしているということです。つまり植物が自家受粉を防ぐために、雄しべと雌しべの成熟時期をずらす工夫をしているのです。
 また、先端と脇の花序の開花時期も微妙にずらしているようです。次のの写真は、苗圃で育っているカンレンボクです。日当たりが良いせいか芝生広場のものより開花時期が早く、雌花はピークを過ぎて花柱は既に変色しているものの雄花はまだ咲き続けている姿を確認しました。これも自家受粉を防ぐ工夫の一つでしょうか。
 このカンレンボクを観察していると、蜜を求めて次々に花を訪れる大型の昆虫たちが目につきます。夢中になって花の間を飛び回っているうちに体中花粉まみれになっています。
 この昆虫たちも利用して受粉すると、例年9月末頃にはおもしろい果実を実らせます。直径5cmぐらいの、まるでミニバナナのような翼果が球状になった集合果になります。
 芝生広場の池の縁には枝が垂れ下がっているので、今咲いている花やこれから大きくなっていく果実を間近に観察することができます。

 連日暑い日が続いていますが、植物園には木陰がいっぱい、涼しい風が吹き抜けています。夏休みの思い出づくりにどうぞお越しください。           (解説員)                       









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