花緑の園「日日のまなざし」No.004 植物園に謎の白い物体現わる?(2022.9.23)#1【採取編】

 トンボが飛び交いはじめ、秋の気配を感じる今日この頃となりました。

さて、8月のとある日、あれは猛暑続きで中々雨らしい雨も降らず、植物も人間も干上がっていた頃、ようやくまとまった雨が降り、ホッと胸をなでおろしていたところ、突如として昨日までは何もなかったはずの植物園の一角に、白く、まん丸い、謎の物体がポコポコと現れました。

オニフスベ【鬼燻】
学名:Calvatia nipponica
ハラタケ科ノウタケ属(*1)
 
 実はこの物体、歴としたキノコの一種、名前は「オニフスベ」
パッとみると、誰かが、発泡スチロールで作った丸いオブジェを置いて行ったんじゃないの?と見間違う程。 どうも一夜にして急に発生するらしい。

オニフスベが突如として現れたこの日、植物園の緑の相談員の某O先生から、
「食べられるキノコだよ、美味しいかは知らないけれど、食べてみたら?」との悪魔の囁きが。
なんですと?食べれるですって?
食べれるキノコと聞いて、居ても立っても居られず、早速オニフスベについて調べてみました。

1.オニフスベについて
 ・幼菌は球形~扁球形で白色、次第に褐色に変わる
 ・径20cm~50cm

◎食用になるのは、肉が真っ白で弾力のある
 幼菌~未成熟菌のものに限り、成熟して
 悪臭を放つものは、対象外。
 多少かたく、剥がれやすい外皮をむき取って調理する。
 肉質ははんぺんに似ているので、フリッターや
 ピクルスによい。<味区分C>

図1:味区分
(出典:山渓カラー名鑑「日本のきのこ」 2019年山と渓谷社)


 巷のネット情報では「調理してみたけど美味しくない」、「味はいまいち」との意見が
大多数。ちょっと尻込みするも、そこは、カラスにも負けない食いしん坊な私。
食用で、マツタケと同じ「味区分C」なので、そこそこ食べれるものと判断し、
意を決して、すぐさま採取に向かう!

2.オニフスベを採取してみよう!
 参考文献1)の「食用になるのは、肉が真っ白で弾力のある幼菌~未成熟菌のもの」
という一文を頼りに、さて、どれが食べれそうなオニフスベなのかしら?と思って見渡すと、一番若そうで、ひときわピカピカ真珠のような白さを放っている1つを発見!
 「これだ!」と思って引き抜いてみると、ひょいと簡単に採取できちゃいました。

採取日時:8/23(火) 11:15頃
 大きさ:約径20cm/重さ:約80

採取したモノの大きさは、大体、直径20cmほど。クレーターのような凹はあるものの、
結構きれいなシロモノ。大きさの割にはとても軽くて、手触りはツルツル!
柔らかめの発砲スチロールを持ってる感じ。

しかし、土に埋まっていた部分にダンゴ虫の子供がたくさん住み着いていたようで、ダンゴムシの温床と化しており、そのダンゴ虫の量の多さにびっくり!
家で調理するにしても、ダンゴ虫も一緒にお持ち帰りするのは、さすがの私も避けたいところ。おかげで、ダンゴ虫の除去に悪戦苦闘しながら、一匹残らず除去いたしました。


3.オニフスベの観察
 せっかくなので、オニフスベの幼菌~成熟菌~老菌までの状態も約10日間経過観察してみました。観察初日の①8/26は真っ白だったオニフスベも、1週間くらい経った②9/2には、胞子の形成が始まったようで、表皮がはがれてきて、全体が少し茶色っぽくなり、クレーター部分は黒っぽくなっていました。更に5日経った③9/7には、全体的に茶色が濃くなっていて、所々亀裂が入り、皮が剥がれ、中から胞子が出始めているようでした。

実は、胞子には突起があるそうで、それを見たさに、本当は外皮がはがれて中の胞子塊があらわになった状態になるまで観察したかったのですが、残念ながら、台風で吹き飛ばされてしまったので、老菌までしか観察できませんでした。


 
見ての通り、明らかに幼菌と成熟菌、老菌は色も風貌も違いますよね。
また、状態によっての放つ匂いも違っています。
幼菌のときには、マッシュルームのような香りがして新鮮さを感じますが、成熟してくると、段々イやな匂いを放つようになり、悪臭がしてきます。

ということで、下記に食用になるオニフスベの採取ポイントをまとめてみました。

<食用になるオニフスベの採取のポイント>
 ・少しでも未成熟状態のものが良いため、直径20cm前後のもので、
  なるべく地上部に現れてすぐものを採取する。(午前中の採取がおすすめ)
 ◎見極めのポイント:幼菌~未成熟菌のものは、真っ白でピカピカ光っていて、
           肌つやがよく、触ると弾力があり、イヤな匂いがしない。


3.さあ、オニフスベを食べてみよう!
 参考文献1)の「肉質ははんぺんに似ているので、フリッターやピクルスによい」を参考に、キノコの独特の香り消しも兼ねて、ちょっと濃いめの味の料理をチョイス。
ほぼ私の主観で、以下の三品を作ることにしました。

①オニフスベのガーリックバター焼き
②オニフスベの味噌焼き
③オニフスベのマリネ

 でもちょっと、調理する前に、オニフスベの下処理を!

 ●オニフスベの下処理




オニフスベの下処理が終わったところで、さっそく調理開始!
と、いいたいところですが、この続きは【食す編】にて・・・ 
To Be Continued.


                                 【解説員Fu】


◆参考・引用文献
1)山渓カラー名鑑「日本のきのこ」 2019年山と渓谷社
2)ウィキペディア「オニフスベ」:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%B9%E7%9A%AE

 (*1):福岡市植物園では、学名表記を小学館の園芸植物大辞典に準拠して、
旧植物分類体系の新エングラー体系で表示してします。
APG体系でのズレがあるかと思います。ご容赦ください。

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