どっこい咲いてます、小さな花も(2021.3.7)
冬ごもりしていた地中の虫たちがはい出てくるという二十四節気の一つ「啓蟄(けいちつ)」が過ぎて、植物園内は日ごとに春色が濃くなっています。春の定番であるウメやサクラなど大形の華やかな花たちが虫たちにアピールしようと次々に咲いていますが、どっこい小さいサイズの花たちも負けてはいません。
この時期、園内各所で下垂した枝に径1cmほどの白花をびっしり付けているのはユキヤナギ【雪柳】(バラ科)です。その咲き方はまさに「咲きこぼれる」という表現がぴったりです。
長さ7mmほどの壺形の白花を下垂した枝に下向きに付けているのはアセビ【馬酔木】(ツツジ科)です。漢字では「馬が酔う」という名のとおり有毒です。2月中旬から4月ぐらいまで比較的長く花を咲かせるのは、虫たちの活動がまだ活発でないこの時期でも確実に受粉を行うためだそうです。
径3~5mmほどの鐘形あるいは壺形の白花を下向きにびっしりと付けているのはヒサカキ【柃】(ツバキ科)です。サカキと同様に、切り枝を神前に供える用途でご存知の方もおられると思います。この花、見た目は地味な花ですが独特の香り(というか臭気!)があるので開花するとすぐにわかります。この写真は園路をはさんで便所がある場所で撮ったものですが、すごく紛らわしい匂いがします。漏れた都市ガスにも例えられるこの匂いは、花粉を運んでもらうハエなどにその存在をアピールする手段といわれています。
ほんのりと赤みを帯びた径8mmほどの筒状で、先は5裂した花を付けるゴモジュ【胡麻樹、御門樹】(スイカズラ科)です。奄美大島~沖縄方面に分布する常緑低木です。和名の由来は、葉を揉むとゴマの匂いがするから(胡麻樹)、あるいは琉球王朝の宮殿で縁起木として門前に植えられた(御門樹)から、など諸説あるようです。
黄色の花弁4枚、径6mmほどの小花を枝先にまとめて付けているのはサンシュユ【山茱萸】(ミズキ科)です。朝鮮半島原産の小高木で、我が国には江戸時代中期に薬用植物として渡来、栽培されてきました。難しい漢字ですが、秋に赤く熟す果実がグミに似ているので、グミの漢名「茱萸」に因んで充てられています。
サクラ類の中で小さい花の代表、チョウジザクラ【丁子桜】(バラ科)です。紅色の太い萼筒が特徴で、ふつう白色ときに淡紅色で径15mmほどの花弁が平開します。本州の太平洋側(宮城~長野)に分布する野生種です。
最後に雰囲気を変えて特大サイズの花を見てみましょう。大きい花はやはり温室で目につきます。
廻廊温室に咲いている黄色の花はソランドラ・マキシマ(ナス科)です。メキシコ原産で花径は15~20cm、種小名(maxima)は「最大の」という意味です。
大温室2階で見ることができる白花はボーモンティア・グランディフローラ(キョウチクトウ科)です。インド原産で花径は8~10cm、長さ10~12cm、種小名(grandiflora)は「大きい花」という意味です。
小さい花、大きい花、長く咲く花、独特の匂いの花 などなど・・・それぞれ独自の形や生き方を身につけている花たちに興味は尽きません。
(解説員)
コメント
コメントを投稿