希少種タシロラン発見!(2021.7.1)

 先週、来園された方から「桜坂方面から南公園樹林地を歩いてきたら珍しい植物がありました」と情報があり、撮られた写真を見せていただくとタシロラン【田代蘭】(ラン科)のようです。早速カメラを持って調査に行ってきました。

 見つけました! 樹林地の中、枯木を伐採して集積している場所にひっそりと数本の花茎が立ち上がっていました。環境省レッドデータブックで準絶滅危惧(NT)にランクされている希少種です。和名は、この種が明治39年に田代善太郎氏によって長崎県諫早で初めて採集されたことにちなみ、牧野富太郎博士により命名されています。
 緑の葉を持たず光合成を行わないランとして知られた種で、葉緑素を持たないため全体に白黄色を帯びています。樹林地内の落ち葉などの養分をもらって根に菌類を共生させ、その菌類を介して養分を得ているので「腐生(ふせい)植物」と呼ばれています。
   昨年5月に、このブログで取り上げたギンリョウソウ【銀竜草】(イチヤクソウ科)も同じく腐生植物です。
 なお「腐生植物」は、かつては周囲の腐葉土から栄養を得ていると考えられていましたが、菌類を食べて生きているともいえるので、最近では「菌食植物」とか「菌寄生植物」などと言い換えられているそうです。
 腐生植物は葉を持たないせいで、花時しか目につかない、とても見つけにくい植物で、
今回は残念ながらピークを過ぎて花被がうなだれていましたが、よく観察するとラン科に特有の唇弁に紅紫色の斑点があるのが確認できました。花被に連なる白黄色のふくらみは子房です。
 近年は、各地で雑木林が放置されて常緑樹林地化が進み、年間を通して暗く湿ったタシロランが好む環境が増大しており、地球温暖化の影響と相まって、希少種にもかかわらず分布域が広がっているとの情報もあるようです。
   南公園の中でも今後の繁殖状況を注目していきたいと思います。     (解説員)







 

コメント

  1. 見つかって良かったですね!まだまだきれいに咲いていますね。

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