~花緑の園~「日日のまなざし」No.003 樹木だって脱皮する(2022.8.16)【後編】

 さて、『~花緑の園~「日日のまなざし」No.003 樹木だって脱皮する』【前編】では、
樹木の脱皮と木肌の色の謎を探るべく植物園内を巡る旅に出て、
そこで出会った、脱皮っぷりがステキな樹木たちをご紹介いたしました。

何とも、自然が生み出す色や造形美の美しさには、心を揺さぶられますね。

では、

「なぜ、脱皮後の木肌はこんなにもキレイな色をしているのでしょう?」

の謎解きの答えですが・・・

一言でいうと、幹も枝も光合成をしているからなんです。

 光合成=葉だと思いがちですが、どうも樹木は葉っぱだけでなく、幹や枝でも光合成をしているらしく、葉でみられる色素成分が樹皮にも含まれていて、樹皮が剥がれると栄養の供給が途絶え、色素の分解が始まるのだそう。そう紅葉の仕組みと同じ。
もちろん葉っぱのほうが光合成の量は多いし、効率も良いらしいのですが、幹や枝の光合成にも意味があって、春に芽吹くエネルギーを生み出すのに大きな影響を与えてるとのこと。
幹や枝の光合成が春の芽吹きに一役買ってるってことですね。
ちなみに、樹皮が分厚い松などは、残念なことに枝や幹では光合成を行えないのだそうです。

ところで、世界には、七色の樹と呼ばれる、レインボー・ユーカリという樹があります。

レインボー・ユーカリ
(出典:Fodors Travel(https://www.fodors.com/)


何ともカラフルで、新進気鋭の画家が絵具で描いたみたいでしょう?

でもこれ、自然の樹木の色なんです。
この木も樹皮が剥離して剥がれる樹木の一つ。
剥けたばかりの樹皮は緑色、時間経過と各色素の優劣により
「緑」→「紫」→「赤」→「茶色」の順に変化するとのこと。
なぜこのようなカラフルな幹かというと、部分部分で樹皮がはがれる時期が違うから、
らしいのです。何とも神秘的ですよね。


 実は、今回樹皮の探索をするまではサルスベリの脱皮後の樹皮は薄肌色だとばかり思っていました。
しかし、下記サルスベリBの写真にある通り、脱皮した後の木肌は「赤茶色」。



では、なぜこんなに色彩が違うのか。

樹木の樹齢や育つ環境、時間の経過によって、剥がれた後の木肌の色は変化するようで、
このサルスベリ木は、若木ではなく、樹齢を重ねた樹木であったこと、
また、すでにサルスベリの脱皮は5月頃から始まっており、表皮が剥がれてから時間の経過とともに色素分解がされ、このような「赤茶色」へと変化したのではないかと思われます。



 最後に、春から夏にかけての時期は、植物が肥大生長する時期なので、どの樹木も脱皮っぷりがいいようで、日頃は、紙のように薄い表皮を少しずつぺりぺりと剥がす程度だった
ティーツリーの木も、この夏の時期は、大胆に脱皮しているところが見られます。


 さて、今回は、樹木の脱皮と樹皮の色に着目して観察してみました。
夏は花も少ないし、植物観察するものがないなあとお嘆きのあなた!
これを機に、夏の樹木の樹皮にも、熱い視線を注いでみませんか?

謎解きの旅が長かったせいか、すっかり長文となってしまいました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


【解説員Fu】


◆おまけ◆
 ●カゴノキの剥がれ落ちたパーツを拾って、ジグソーパズルをしてみました。どうにか、元あった場所が見つかり、パーツがちゃんとハマりましたよ。



 ●白いカマキリを温室の金シャチの上で発見!
  と思いきや、脱皮した抜け殻。でもおかげで、カマキリも脱皮することを知りました。





◆参考・引用文献◆
・ウィキペディア「樹皮」:https://ja.wikipedia.org/wiki
・「樹木に咲く花」離弁花①、②、合弁花等(2000,2001山と渓谷社)
・林将之著「樹木の葉」(2006山と渓谷社)
・堀大才講師ほか(2021)東京農大オープンカレッジ「樹木の形を読みとく」講座
・一般社団法人 日本植物生理学会「樹皮の剥がれる仕組み」
 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2394
・林将之著「樹皮ハンドブック」(2006文一総合出版)
・OpenStax生物学 第2版 — 第8章 光合成 
 https://medium.com/@BetterLateThanNever
・中川ちひろ編集「へんてこりんな植物」(2015(株)バイインターナショナル) 
・木村正典著:MEDCAL HERB LIBRARY「ユーカリの植物額と栽培、人との関わり」
・京都九条山自然観察日記「2013ジグソーパズルのような木肌」https://net1010.net/
・樹の散歩道「2012樹皮の豊かな表情」https://kinomemocho.com/sanpo_bark3.html
・株式会社はぐぐみ幸房(2017)樹皮 外樹皮と内樹皮
 https://blog.goo.ne.jp/yamaikora/m/201702
・春夏秋冬 花mikio(2018シマサルスベリ 茶色の樹皮)
 https://blog.goo.ne.jp/mikiosabo/e/bec57f5293257e4dae03d1aa3decb515
・樹げむ舎(アキニレ、サンシュユ、モミジバスズカケノキ、ナギ)
 https://www.jugemusha.com/
・庭木図鑑植木ペディア(サンシュユ、アカガシ、イチイガシ)
 https://www.uekipedia.jp/
・松江の花図鑑(アカガシ、アカメガシワ、アキニレ、カゴノキ)
 https://matsue-hana.com/
・森と水の郷あきた「樹木シリーズ49サルスベリ」
 http://www.forest-akita.jp/data/2017-jumoku/49-saru/saru.html
・ナゾロジー編集者(2020):https://nazology.net/archives/52859#


(*1):福岡市植物園では、学名表記を小学館の園芸植物大辞典に準拠し、旧植物分類体系の新エングラー体系で表示してします。APG体系でのズレがあるかと思います。ご容赦ください。



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