俳句の展示を入れ替えました(2016.09.09)



野草園の休憩所内に展示している俳句を入れ替えました。
今回展示した句の中から、いくつかご紹介します。


    “藺の花の呟くやうに咲きにけり”    西美和子
    (いのはなのつぶやくようにさきにけり)



(写真はイの開花の様子/福岡教育大学教育学部福原達人先生のHPより)

“藺(イ)の花”とは「イグサ」の花のことです。
「イグサ」は、畳表の素材になるイグサ科イグサ属の多年草で、湿地などに自生します。
和名は、一文字で「イ」と呼び、あるいは「トウシンソウ(燈芯草)」とも言われます。


花は、写真のように、緑黄色の小花をたくさん集合して咲かせます。
スッと伸びた青い茎とは対照的に、その茎の途中に、まさにボソボソッと“つぶやく”かように花を着けます。


そして、この「イ」の花は、風で花粉を運んでもらう「風媒花」です。
“つぶやき”が風に乗って伝わるように、花粉も風に乗り他の花へと届けられます。
 「イ」の花の特徴を、“つぶやく”という一言で見事に表現された句です。




 


次の句です。


    “向日葵もこの日ざしではまぶしそう”    優菜
    (ひまわりもこのひざしではまぶしそう)

「ヒマワリ(向日葵)」は、キク科ヒマワリ属の一年草です。
向日性が強い植物で、開花するまでの生長期には太陽の一日の動きに合わせてつぼみが動きます。
(ただし、開花した後は茎の生長が止まるため、花の動きも止まってしまいます。)


この顕著な向日性から、日本では「日回り(ヒマワリ)」、英語でもSunflower(サンフラワー)と呼ばれるなど、世界各国で太陽に由来した名前が付けられています。
お日様とは切っても切れない仲のようです。
今年の夏はとにかく暑い夏でした。
雨の降らない日が連続し、植物たちにも厳しい夏でした。
句にもあるように、いつもは空を仰ぎ見て咲くヒマワリも、今年はお日様の威光があまりにも“まぶしすぎ”て、夕方頃にはややうつむき気味になる花も多かったようです。
 
(写真は俳句を展示している野草園休憩所)





 *この展示は、植物園で句会を開かれている「植物句会」松尾康乃主宰のご協力のもとに展示しており、約1か月おきに入れ替えを行っています。


*展示場所はこちらです。

野草園休憩所位置図


*今回展示した俳句の一覧です。
 



 
(園長 上田)

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