チョット気になる路傍の花たちNo.28(2019.9.22)1000もの名を持つ花?

 車でちょっと郊外に出ると,畦道や野原の土手などで真っ赤に燃えるような花の群れに出合います。中国原産の植物で古い時代に日本に入ってきたヒガンバナ(彼岸花)です。
マンジュシャゲ(曼珠沙華)とも

 私が子どもの頃はお墓に咲く花として,あまり縁起の良い花ではないと聞かされていました。
 球根には猛毒があり,古代人はその特性を知っていたのでしょうか。墓地や田の畦道に植えることで,土葬された遺体や稲を野獣やネズミなどから守る意味合いがあったのでしょう。また,球根からは他の植物の生長を妨げるアレロパシー物質を出しています。ですから,ミミズもこの物質を嫌い,寄り付きません。結果,モグラが来ないわけです。
 ところで,ヒガンバナはたくさんの別名をもつ花として有名(?)です。実に1000以上の名前が存在するそうです。例えば,ソウシキバナ(葬式花),シビトバナ(死人花)、ユウレイバナ(幽霊花)、ヤクビョウバナ(疫病花)、シビレバナ(痺れ花),ジゴクバナ(地獄花),ステゴクサ(捨て子草),カミソリバナ(剃刀花)など,負のイメージを想起させる名前が多いですね。
 しかし、中にはキツネノロウソク(狐の蝋燭),キツネノハナビ(狐の花火),テンジョウノハナ(天井の花),ヒガンユリ(彼岸百合)、アカバナ(赤花)、オミコシバナ(御神輿花)、ハナビバナ(花火花)、カンザシバナ(簪花)などもあります。また,葉の時期には花がなく,花が咲く時期には葉がないところからハミズハナミズ(葉見ず花見ず)と言った名前もあります。
 それだけ,大昔から人々にとってヒガンバナは身近な存在だったということでしょう。

 ところで,ヒガンバナには白い花があるのをご存知ですか。シロバナマンジュシャゲです。
真っ白じゃないです!

 これは,ショウキズイセンとヒガンバナとの雑種だと言われています。でも,黄色いショウキズイセンと赤いヒガンバナとの交配で白ができるのは不思議ですね。どうも,白化変種という遺伝子異常によるものだそうです。
 ちなみに,日本のヒガンバナはタネができない不稔性なので、中国原産のコヒガンバナが親だと言われています。

 最後にショウキズイセン(鍾馗水仙)を紹介します。ヒガンバナ科の中では最も遅く開花します。ヒガンバナと同じ性質ですが,こちらは種ができますよ。
花弁の縁がやや波打っている!

 残暑もずいぶんと落ち着いてきました。是非,植物園においでください。
【解説員K】

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