身近なところに~ギンリョウソウ(2020.5.28)

自宅近くの身近な場所で見つけた植物、今回はちょっと変わり種のギンリョウソウ【銀竜草】です。見つけたのはクヌギ林とスギ林の境目のところ、クヌギの落葉がかなり厚く積み重なっている場所でした。近頃手入れ不足で茂ってきた笹を取り除く作業中、薄暗い中でふと足元を見ると、なにやらそこだけ浮き上がったように白っぽいものが・・・。薄暗い中に白い着物のほっそりとした人がうつむき気味に立っているように見えることからユウレイタケ【幽霊茸】の別名もあります。
ギンリョウソウ、資料を調べると日本各地及び南千島、サハリン、台湾から東アジア、ヒマラヤまで分布して、山地の林中の落葉の中に生える腐生(ふせい)植物です。この植物の特徴は、「ガラス細工」に例えられるように全体が透き通った白色です。普通の植物は、葉や茎に葉緑素を持って緑色をしており、光合成によって栄養を作って成長をしますが、ギンリョウソウは葉緑素を持たないので白い色をしており光合成をしません。周りの落葉をめくって立っている姿を見ると、葉は退化して鱗状についています。
では、この植物はなにを栄養にして生きているのか?
 かつては、周囲の腐葉土から栄養を得ていると考えられていましたが、実は周囲の落葉を分解している菌類に依存して栄養を吸収しています。そのため最近では「菌寄生植物」とも言い換えられているそうで、また依存している菌類はその栄養を森から摂取しているので「森を食べる植物」とも呼ばれています。
花のアップ写真です。光合成をしないので地上に出る必要がなく、開花の時だけひょっこり姿をあらわします。ややうつむき加減の筒状の花をのぞき込むと、円形でやや平たく青みを帯びている雌しべの柱頭が目立ちます。
寄生植物のうつむき加減の花ということで連想されるのはナンバンギセル【南蛮煙管】です。ススキなどの根に直接寄生して栄養を得ており、ギンリョウソウ同様葉緑素を持たず葉が退化しています。
 ちなみに、この不思議植物の分類の話です。現在当植物園で準拠している「新エングラー体系」ではイチヤクソウ科に分類されていますが、最新の「APG体系」では、なんとツツジ科に分類されています。                                             (解説員)

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