ちょっと気になる路傍の花たちNo.33(2020.5.29)生き抜く術?

 この時季,散歩をしていると,道路脇や空き地に青い星形の花が目に留まります。「キキョウ」の花に似ているところから,そのまま「キキョウソウ」の名が付いています。 
別名:「ダンダンギキョウ」

 北アメリカ原産で,蕾は「キキョウ」の花ほど丸くなりません。花は上の方で咲き,ふつう3~4日くらい咲き続けます。葉に特徴があり,茎を包み込むように付く抱き葉です。
 そして,もう一つ,大きな特徴があります。それは,花を咲かせない閉鎖花をもつということです。閉鎖花というのは開花することなく,蕾の中で自家受粉します。そして,おしべが先に熟す雄性先熟という性質を持っています。
受粉を終えた閉鎖花

 また,花を咲かせる開放花は雌しべが熟し,他の株の花粉を受け入れるのです。
ですから,先ず閉鎖花で自家受粉し確実に種を作ります。そして,開放花で他家受粉を行うという二段構えのしたたかさです。

 もう一つ,同属の「ヒナキキョウソウ」があります。一見すると,両者の違いがはっきりしませんが,こちらの方が開花時期がやや遅く,抱き葉ではないので,違いが明らかです。
 また,花弁は「キキョウソウ」に比べ,やや細く,蕾もたくさんつけますが,開花するのはいちばん先っぽの1つだけです。ですから,他はすべて閉鎖花ということになります。

 このような閉鎖花を咲かせる植物には,「フタリシズカ」や「ホトケノザ」,「タツナミソウ」,「スミレ」など,日本では19種が牧野博士よりリストアップされてます。
もう種ができている!

 この写真はセンリョウ科の「フタリシズカ」です。「センリョウ」の仲間ですから,もちろん花弁やガクはありません。
 ところで,次の写真を見てください。 
閉鎖花をつけた「フタリシズカ」の花序

 大きな葉をめくってみると,葉腋に1~2cmほどの閉鎖花を見つけました。

 次は2月に咲いていたシソ科の「ホトケノザ」です。気温が低く,ほとんど昆虫がいない冬の時季でも,どんどん閉鎖花を咲かせ,自家受粉によって種子をつくっていきます。 
中央やや下に閉鎖花がみえる「ホトケノザ」

 最後はシソ科の「タツナミソウ」です。既に「タツナミソウ」の花は終わりましたが,これから,閉鎖花が咲き始めます。
 植物が生き抜くための知恵ですが,すごい戦略ですね。
これから閉鎖花をつける「タツナミソウ」
      【解説員K】

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