早くも来年の準備~キリの花のつぼみ(2021.8.25)

  バラ園デッキ付近のキリ【桐】(ゴマノハグサ科)の枝先に、薄茶色の丸いものが円錐状についているのを発見。これは一体なんだ?

 一見果実のようにも見えますが、果実は5月の開花後すぐに大きくなって、既に枝先に垂れ下がっているので果実ではありません。

 実は、この薄茶色のふくらみは来年5月初め頃に咲く予定の花のつぼみなんです。それにしても、なぜ約9か月も前からつぼみをふくらまして開花の準備をしているのでしょうか?
 確かに、春に花を咲かせる樹木のうち、多くの種類が前の年の6~7月頃には翌年の花芽を分化させることが知られています。最もわかりやすいのはサクラ類の花芽だと思いますが、冬の間は小さい状態のまま芽鱗(がりん)と呼ばれる堅い葉で花芽を覆って寒さをしのぎます。
ソメイヨシノの花芽
 こんなに早くからつぼみをふくらませたら、キリのつぼみは冬の寒さにやられてしまうのではないかと心配してしまいます。

 ところで、今回キリの花のことをいろいろと調べていたら、年間の気候の変化を五日おきにまとめた「七十二候」のうち、「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」という表現に出会いました。二十四節気の一つ「大暑(たいしょ)」の初候ですので、毎年7月23日前後にキリが花のつぼみをつけ始めることが表されていますが、昔の人の自然観察の細やかさに驚かされます。
 また、我が国の伝統的なカードゲームである花札には、一年間の月別に植物が描かれていますが、桐札は十二月の札だそうです。ご存知でしたか?
 この札をあらためて見てみると、枝先についているのは花や実ではなくて、十二月のつぼみの状態を表した絵柄だったんですね。

 冬の寒さに負けずに、来年、薄紫色の花を咲かせてくれるのを楽しみにしています。
                                 (解説員)





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