サボテンのようでサボテンでない・・(2022.2.25)


 2月初め温室のサボテン・多肉植物室に育つ柱状の植物に黄色い花が咲きました。2月観察会は温室植物中心なので、早速観察対象に取り上げることになり、予習のために図鑑類を調べていくと、あれあれ・・・サボテン科のところには載っていません。

 このように柱状に立ち上がるのは、てっきりサボテン科の仲間かと思って調べたのですが、サボテンのようでサボテンでない・・それはなにかと尋ねたら、なんとこの植物はランガク【巒岳】という和名のトウダイグサ科ユーフォルビア属の多肉植物でした。

 ユーフォルビア属といえば、代表的なトウダイグサ【燈台草】をはじめ、花弁がなく杯状(カップ形)の変わった花序(杯状花序といいます)をつけるのが特徴ですよね。

 それでは、このランガクはどのような花をつけているのか、アップ写真を撮ってみました。
 間違いなく、花弁(花びら)はなくカップ形(総苞[そうほう]が合着したもの)の中に雄花と雌花があるというユーフォルビア属の特徴を備えています。
 ちなみに和名に使われている「巒」という難しい字は「山並み」という意味だそうですが、波状に湾曲している稜線を山の連なりに例えたのではないでしょうか。
 あらためてサボテン・多肉植物室内をチェックしてみると、他にもサボテンに似たユーフォルビア属の多肉植物があります。この大きなトゲをつけているのはキリンカン【麒麟冠】です。
花のアップ 杯状花序です
 ところで、このキリンカンはトゲまであって、一見サボテン科と同じようにみえますが、違い(特徴)はどうなっているのでしょうか。
 サボテン科の葉が変化したとされるトゲの根元には、刺座と呼ばれる、ふつう毛が密生した座布団のようなものがあり、ユーフォルビア属にはないのがわかりやすい違いです。
サボテン科キンシャチ【金鯱】
キンシャチの刺座のアップ写真

 逆にユーフォルビア属の特徴としては、前述のとおり杯状花序をつけることと、葉や幹を傷つけるとネバネバした乳液を出すことがあげられます。ちなみにこの乳液は有毒物質を含んでおり、皮膚につくとかぶれることがあります。
 なお、サボテン・多肉植物室にはこのようなユーフォルビア属の仲間も育っています。
テッカキリンカク【綴化麒麟閣】
ユーフォルビア・ホリダ
 そういえばラン室で見られるポインセチアもユーフォルビア属ですね。
 ユーフォルビア属は、世界の熱帯~温帯の砂漠から湿地など様々な環境に生育する、約2千種類の多様なグループです。そのうち、特に砂漠に生育するものはランガクやキリンカンなどのように、葉が退化し茎が多肉化してサボテンに似た形態になっているので、収斂進化(しゅうれんしんか:違う系統の生物が環境により似た姿に進化すること)のわかりやすい例とされています。

 まだまだ寒い日が続きますが、そんな日は暖かい温室で過ごされてはいかがですか?
なお、4月には九州サボテンクラブの主催により「サボテン・多肉植物展」が開催されます。(4月12日[火]~17日[日]、温室ギャラリー)どうぞお楽しみに!
(解説員)


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