第26回福岡市植物園 植物画コンクールの入賞作品決定!

 厳正な審査の結果、第26回福岡市植物園植物画コンクールの入賞作品が決定しました。

 当コンクールは、今年で26回目となり4半世紀以上に及ぶ歴史の重みがあるコンクールに成長しており、今回は一般(23点)・中高(57点)併せて80点の作品をお寄せいただきました。ご応募いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

 福岡市の重要プロジェクトである一人一花運動の輪は確実に拡がっており、植物園はその拠点として様々な取組みにチャレンジしております。また、来年度はFukuoka Art NEXTの展開など、市全体で植物×アートの機運も高めていくことから、当コンクールも注目されることが予想されます。

 講評に入る前に、植物画とは、植物の形や色が正確に描かれていて、美しく生き生きとした芸術性のある絵であり、特に、花や葉の大きさや形、つき方などを注意深く観察し、特徴を正確に表現したものであることが大切です。
 植物の姿を正確に表現し残すという点で写真は優れていますが、写真と植物画の違うところは、写真では目の前にある瞬間を切り取ることに対して、植物画では「花」や「蕾」、「果実」、「根」など、同時に見ることが出来ない季節ごとの変容を一枚の絵の中で表現したり、植物の内部や角度を変えて一部だけを切り取って表現できたりしますので、この植物画ならではの良さが出ている作品であるかが評価のポイントとなりました。また、植物画の基本として、植物に対して左側より光が当たっており、植物の色や輪郭、陰影などが美しく描写されているかも評価のポイントとなりました。

 では、入賞作品を講評を添えてご紹介します。

【一般の部】
 上位4点と優秀賞・佳作の6点との評価の差は小さく、難しい審査でした。


 福岡市長賞
  前田 収一 様 「マリアアザミ」 

 複雑に錯綜した葉の形状を行き届いた配置で描いた、大変見応えのある作品です。蕾から果実までの変化も過不足なく盛り込まれています。

 
 西日本新聞社賞
  野口 亜希子 様「ルピナス」

 花序と葉の見せ方が優れており、部分図・解剖図の選び方も「つぼ」を心得ていると感じました。  


(公財)福岡市緑のまちづくり協会賞
  矢口 里子 様「ハマダイコン」

 左下の「大根」(肥大した胚軸と根)が眼を惹きますが、花・葉・果実も極めて正確に描かれています。







 福岡市教育委員会賞
  松居 広子 様「ムクゲ」

 蕾・花・果実を方向を変えながら描くことで各部分を洩れなく描写し、葉や茎の「堅さ」の表現にも成功しています。







【中学生・高校生の部】
 上位4点は、構成や題材に優れた2点と描写力に秀でた2点という組合せになりました。

 福岡市長賞
  岩松 香弥 様「コーヒーノキ」
  (福岡県立筑紫丘高等学校 1年)

 果実をつけた枝の回りに葉・花・果実と果実断面・種子を配した「植物画らしい」作品です。葉の印象も上手く再現されており、葉裏もあればさらに完璧でした。




 西日本新聞社賞
  光安 弥耶 様「サルビア」
  (福岡市立席田中学校 2年)

 花期終わりの姿に着目した点がユニークで、花や花殻、残存花柄、傷んだ葉の描写の精密さは飛び抜けています。




(公財)福岡市緑のまちづくり協会賞
  岩下 怜 様「プリムラ・コーラス」
  (福岡市立席田中学校 2年)

 プリムラの鉢花を描いた数多の作品の中で、花冠・葉の色彩・質感の再現性が抜群です。







 福岡市教育委員会賞 
  升井 さくら 様「ラ・フランス」
  (筑紫女学園高等学校 1年)

 描写は簡素ですが、題材の面白さと果実の色合いを捉えた点が評価されました。





 

 選から漏れた作品の中には、芸術的に素晴らしい作品もありましたが、作画のタッチが題材とした植物本来の質感にあっていないと感じるものもあり、「本来の植物らしさ」を表現するには自分の画風にあった植物選びを行うことも大切です。また、入選作品の中から動植物園カレンダー(月毎)の転載もありますので、季節感のある植物から題材を選んでみるのもよいかもしれません。

 以上のポイントを参考に、次回もたくさんの素敵な作品のご応募をお待ちしております。

 全入選作品は、(公財)福岡市緑のまちづくり協会ホームページにてご紹介します。

また、youtubeでもスライドショーで、全入賞作品をご紹介しています。

 第26回福岡市植物園植物画コンクール入賞作品スライドショー

(運営係 藤田)

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