~花緑の園~「日日のまなざし」

 はじめまして,この春から福岡市植物園に着任した新米の緑の解説員です。

これから,春夏秋冬,日々,植物園の植物達の声に耳を傾けながら,
ふとした瞬間に私の心に触れるものをご紹介していきたいと思いますので,
お読みいただけましたら,幸いです。よろしくお願いいたします。

さて,初夏となり,園内の緑も日々色濃くなって来ている今日この頃,
ひときわ白い花が目立つ木が展望休憩所にあります。
そう,それは,白い小さいブラシのように花をたくさんつけたティーツリーの木です。
最近,精油(アロマオイル)などで広く知られるようになりましたので,
この木の名前を耳にされたことがある方も多いかと思います。

和名:ティーツリー
学名:Melaleuca alternifolia
フトモモ科メラレウカ属


 実は,わたくし,このティーツリーに助けられたことがあるのです。
今から遡ること20年程前,オーストラリアのエアーズロックに登りに行った時のこと,
ケアンズからエアーズロックに行く道中,お恥ずかしいことに水虫になっていることが発覚!
どうも,パートナーのスリッパから感染した模様。
腫れて靴もはけず,このままではエアーズロックに登れないと嘆いていたところ,
ホテルのアボリジニ系のスタッフの方に,ティーツリーの精油の入った軟膏を渡され,
恐る恐る使ってみたところ,なんと見事に1日半で腫れも痒みも引いたのです。
当時,日本では,ティーツリーの名もさほど知られていなかったため,半信半疑でしたが,
日本に帰って調べてみると,抗菌作用,抗炎症作用,鎮痛作用などあり,
オーストラリア先住民の伝統的な薬として昔からの利用されてきた万能薬であることが判明。
それ以来,虫刺されなど,何かにつけてお世話になっております。


さて,そろそろ本題へ

ティーツリーですが,オーストラリアを原産とする常緑低木~小高木です。
その花は,羽毛状の白い花を5月~6月に咲かせます。

写真①

花は,枝の先端に穂状花序を出し、
小さく目立たない4~5のガク片と花弁,
白色の雄しべが目立つ花をつけます。

写真②(満開)

ふわふわと羽毛のように見えるのは雄しべで、1つの花に5本の長い
花糸があり,そこから短い花糸が無数に枝分かれして着生します。
   花弁は5つありますが,開花後すぐに落ちてしまいます。 
    

写真③(開花)
開花と共に、花弁に押し込まれていた雄しべが次々と飛び出しています。

 

写真④(蕾)


写真⑤(樹皮)

樹皮は紙のように薄く、
剥離しやすい形状(Paper bark)で,
くすんだ白色です。



写真⑥(葉)

写真⑦(葉)

葉は長さ1cm~3.5cm幅1mm~3mmの柔らかい針状で、
互生。細長く,茎を取り巻くようにらせん状につきます。
(写真⑥、⑦、⑧)


写真⑧(一葉)


     
写真⑨(油点)

葉には,油点があり、傷つけると芳香を放ちます。
写真⑨の丸く透けてみえるところが,油室です。
黄色味が強い油点は表皮に近いもの、
緑色味が濃い or ぼやけている油点は葉裏に近いものです。
光に透かして見ると,肉眼でも油点は見えます。
この油点が,香りの元となります。葉っぱを揉むと香りがするのは、
この油室から香りの成分が出てくるためです。

〇ティーツリー精油の主な成分:テルピネン-4-オール(48%)、
γ-テルピネン、1.8-シネオール、テルピノレンなど

*テルピネン-4-オールには,抗炎症、抗菌、抗ウィルス、
抗真菌作用があります


写真⑨ 枝に着生している果実

写真⑩ 果実(蒴果)

果実は節に着生し、
とても硬い木質のカップ状の蒴果。


残念ながら、もう福岡市植物園のティーツリーの花の見頃は過ぎてしまいましたが,
もう少しだけ花が残っていますので、ぜひ観察がてら、ご来園ください。


                                 【解説員Fu】

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