身近なところに~マムシグサなど(2020.5.6)
ありました!
スギ林の中で、まるで蛇が鎌首を持ちあげたような姿のマムシグサ【蝮草】(サトイモ科)です。植物園では鉢物に仕立てて展示をしていますが、薄暗い樹林地の中で見るとやはり不気味です。
北海道から九州まで広く分布する多年草で、鎌首のように見えるのはサトイモ科に特有な仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる苞葉で、丸くまるまった下部には花軸の表面に花柄なしの花がびっしりとついた肉穂花序(にくすいかじょ)があります。雌雄異株(しゆういしゅ)です。筒形の独特な構造は、虫たちをまず雄花序に誘い込んで花粉まみれにして、雌花序ではその虫たちをしっかりと閉じ込めて受粉作業をさせるという巧妙な作戦のためのようです。
また近くには、サトイモ科で同じように仏炎苞を持つムサシアブミ【武蔵鐙】も見つかりました。この仏炎苞は先端が巻き込まれていますが、この形が馬具の鐙(あぶみ:馬に乗るとき爪先を乗せる道具)に似ており、また昔武蔵の国で作られた鐙が良質だったことからこの和名が付けられています。
マムシグサは鎌首を持ち上げていますが、ムサシアブミは花柄が葉柄より短いので仏炎苞は大きく広がった三出複葉の下にひっそりとついています。
それから日が差さず薄暗いこのスギ林の中で、青々と茂った葉をびっしりと広げて群生している植物も目につきました。
調べてみると、なんとあの不思議な花をつけるホルトソウなどと同じトウダイグサ科に属しているヤマアイ【山藍】という植物でした。現在も行われている藍染めが渡来するまでは、日本における最古の染色に用いられた植物といわれ、本州から九州、南西諸島まで広く分布していますが、古代の帰化植物ではないかと考えられています。
花の付き方は、トウダイグサ科なのでやはりユニークです。雄花は茎頂から直立した花序につき、花弁はなく雄しべの下の緑色は萼です。
雌花は、対生した葉の付け根から立ち上がった花序につきます。雌雄異株ですが、図鑑によっては「雌雄異株ときに同株」などと記述されており、一つの花序に雄花と雌花が混じることもあるようです。
我が家の近くのありふれた樹林地ですが、久しぶりに足を踏み入れてみると意外と興味ある植物が多いことに気づかされました。 (解説員)
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